見出し画像

10代最後の夏。

ぼくにとって10代はやはり特質すべき時代だった。amazon musicでよく聞いているのは70年代の音楽だ。映画も10代後半にみたものを繰り返し見ている。ぼくのエロティシズムが確立したのは、身分を偽って友人と観にいったエマニエル夫人。これも高校三年生の時。


こんなことをしていたので、大学入試は全滅した。けれども、運よく駿台予備校に入れて、当時から有名な講師の講義を聞けた。講師陣は、もちろん受験のプロだが、人生のプロでもあった。人生哲学を披露し、文学とは何かとか、英語学は何物だとか、講義の時に挟んでくれたことを学んだ。


この時期、何かを知ることがどれほど楽しいかを発見した。だから勉強もした。週に一度は河原町に出かけ、映画を見た。写真も撮った。遊びも学びも充実した一年だった。結果かろうじて大学に受かった。

受かった年の夏、母を亡くした。


母が病気を家族に隠していたので、体調が悪そうだとは思っていたが、結局癌だった。好きなことをしていた自分を責めた。浪人生だから隠していて手遅れになったのだと責めた。
でも、亡くなってしまったことを後悔しても、事実を曲げることはできない。その時父は言った。「先に生まれたものが先に死を迎えるのは事の道理なんだよ」と。
父は辛かったんだと思う。母の母である祖母も悲しかったんだと思う。妹も誰もが苦しかったのだ。その重圧を感じながらも、これからは家族を含め縁ある人を助けなきゃと決めた。母を供養しなければと決めた。

これがぼくの「道」なんだと決めた。

10代最後の夏だった。

#エッセイ #人生

読んでいただいてありがとうございます。 サポートいただけるとほんとうに嬉しいです。 記事作りの役に立てたいと思います。