個展「他力」ステイトメント
「瑪瑙のようですね」と言われて嬉しかった。
石を眺めるのが好きだ。
石そのものはなんでもいい、そこら辺に転がっている石でもいいが、田舎に帰り時間を持て余していると、近所の海まで出掛けて流れ着いた石を眺めている。
石は永遠の時間を想像させる。
相反して若者たちを中心に生活の中でどれだけ短い時間でどれだけの効果を得ることができ、且つ満足度を得られるか、というタイパ(タイムパフォーマンス)があらゆるものに求められるようになった。
作品の一つ一つは数十秒、数分で制作する。
これらはショート動画が見られるほどの短い時間である。
そこで現れるものは永遠の時間を想像させるようなものではなく、今、この瞬間だ。
「今」を思考しようとすると、それを思考した時点で「今」は過去になっていく。
そうして今はどんどん過去として通り過ぎていく。
作品に描かれる最小限の一本の面を通じて「今」そして「時間」を表現している。
138億年前のビッグバンによって宇宙が誕生してから今でも、宇宙は時間と共に膨張していると考えられている。
私たちが石ころを眺めながら想像できる永遠の時間なんてものはたかだか数千年くらいのものだろう。
気の遠くなるような時間の中では今この瞬間も数千年も大した差はないのかもしれない。
他力とは例えばそこにある石ころが石ころであるようなこと。
自分のような非力な存在は自力では何かを成し遂げることなどはできないと認め、
そこに現れるべくして現れるたメージを受け入れていく。
私とは”私以外の全てのものではないもの”として私が定義づけられて存在する。
それ故に”私と私以外の全てのもの”は=(イコール)でありお互いが影響し合い存在している。
こうした考え方が仏教の世界に存在する。
石は一見全て同じようにも見えるし、よく見れば同じものなど二つとしてないこともわかる。
私の作品もそんなように見てほしい。
大阪で絵画制作や美術活動をしつつ、ARTspace&BARアトリエ三月を運営しています。サポート頂いた分は活動費やスペース運営費として使用させて頂きます。全ての人がより良く生きていける為に 美術や表現活動を発信し続けます。