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Keep on rollin'! ツナコロッケ・ン・ロール

幼い頃、母が自嘲気味に私たち兄弟にこう言ったのを憶えている。

「コロッケってさ。家で作るとあんなに面倒くさいのにお肉屋さんで50円ぐらいで安く買えてさ、作りがいがないと思わない?」

50円というのは当時の価格で、もしかしたらもっと安かったかも知れない。今ではせいぜい安くて70円前後だけど、それでも手間を考えるとやはり破格に安いお惣菜と言わざるを得ない。おそらく家庭のキッチンを預かる人は皆若き日の母と同じように思っているんじゃないだろうか。

たしかにお肉屋さんのコロッケは称賛に値する。学生時代、部活の帰りに揚げたてをほおばるのが至福のひとときだった。快感に味蕾がふるえ、脳髄に電気が走った。

けれど、である。おうちで作るコロッケはまたお肉屋さんのそれとは別物だ。あのサックリホクホクの舌触りは全てを許す聖母のような慈しみと包容力に満ちている。凶悪犯を懐柔して白状させるならむしろカツ丼より手作りコロッケじゃないのかと思うぐらいにあたたかく包み込んでくれるのである。

だから私たちはきょうもコロッケを揚げる。たとえその道のりがどんなに遠く険しかろうとも。

お肉屋さんで買えない味、ツナコロッケ。

うちではときどきツナコロッケを揚げる。というのも、妻の実家ではコロッケといえばミートではなくツナコロッケだったそうで、せっかく家で作るならばそのほうが馴染みがあっていいという。思うに、挽肉を炒める手間が省けるだけでも、調理する側(ワーキング・シングルマザーだった義母)にとっては助かるアレンジだったのだろう。そしてもちろん節約にもなる。

そんなツナコロッケを雰囲気だけで継承したつもりで作るんだけど、お肉屋さんの味と差別化する意味でも、こちらのほうがテンションが上がるというところもある。

<材料 4個分>
ジャガイモ・・・3〜4個
玉ねぎ・・・4分の1〜半分
シーチキンマイルド(水煮)・・・70g(一缶)
塩コショウ・・・ひとつまみ(後述)

小麦粉・パン粉・・・適宜
卵・・・一個

まずはジャガイモを茹でるんだけど、今回は細かく切らずに、皮ごとそのまま茹でます。

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こないだハンバーグを作ったとき新じゃがを皮ごと茹でて食べたら予想以上においしかったので、もしかしたら皮の近くに香りや風味が豊富にあるのかも知れないという推測に基づく。あと時間がたっぷりあったし。

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水から茹でて30分、というのがだいたいの目安です。もうここで塩を振って食べてしまいたくなるけどグッとこらえてつぶす。

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うちにあったのがメークインなのでよけいに固めなのもあるけど、あまりマッシュしすぎずゴロゴロ感を残すのが好みです(こんな細かく手順を追う必要あるかなあ。すみませんねまどろっこしくて)。

ツナコロ07

で、ここに、別に炒めた玉ねぎとシーチキンをイン。シーチキンは水煮缶のほうが軽い仕上がりになってオススメ(開けた後ちょっとだけ汁気を切ったほうがべちゃべちゃにならず成形しやすいです)。

混ぜながら塩コショウして味見。そうなんです! コロッケのいいところは、衣の中身にすでに火が通っていること。だからこの時点でいくらでも味見できて、自分好みの味つけに調整できます。ミンチカツではそうはいかない。まあミンチカツでも一口ぐらいなら生で味見してるけど。

妻曰く「ここで好きなだけつまみ食いできるのが作る人の特権やねん」だそうです。

俵型にして「転がし続けろ!」 

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タイトル画像にもあったとおり、うちのツナコロッケは俵型。これにはいくつかのメリットがあります。まず、衣がつけやすい

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バットの中でコロコロ、コロコロ転がせば、小麦粉もパン粉もまんべんなくついてくれます。そのへんは小判型より楽な気がするなあ。

揚げるときは常温から。

ツナコロ10

先ほども書いたように、コロッケのタネはすでに火が通っているので、衣さえカリッと揚がればよし。でも、うちでは油が冷たい時点で入れちゃいます。そのほうが、いったん冷めたタネの芯まで熱がよく伝わる気がします。最初から高温の油で揚げるお肉屋さんのコロッケが小判型なのは、そのへん(熱の伝わる時間)も関係しているのかも。

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ただし気をつけなければいけないのは、鍋底と接している部分だけ先に熱くなって焦げてきます。それを避けるためにKeep on rollin'! 転がし続けろ! 俵型のメリットがここでも活きます。コロコロ転がすことで、全部が油に浸かっていなくても色よく揚がります。

サクサクホクホク、揚げたてを召し上がれ!

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さてさて、今回もうまく揚がりました。節約にもなり、お肉屋さんでは決して売っていないツナコロッケ。仕上がりは非の打ちどころなし。衣はサクッと、タネはホクホク。シーチキンの香りと旨味はミンチとは一味違うけど、決して引けをとりません。

ツナコロ12

ジャガイモのゴロゴロ感もほどよく残っていて、口の中でほぐれる感じが気持ちいい。丸ごと茹でた効果は、うーんあるようなないような。

「食べ比べんとわからへんね」「そやねえ」と首を傾げるふたりでした。

ちなみに某レシピ検索ナンバーワンサイトなんかで検索すると(もちろん有料会員です)マヨネーズを下味に使うレシピなんかもあるので、いっそツナを混ぜたポテサラを大量に作っておいて、翌日残った分を固めてコロッケ、という作戦はかなりメジャーな気がします。肉じゃがコロッケの要領でね。

俵型だからこそのボリュームは、じゅうぶん食卓の主役になりえる存在感。

人生とコロッケは転がり続けた者の勝利なのです。ロケンロー。

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