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焼かずに蒸す、おちびちゃんは「うまいし」。

暑くて長時間キッチンに立つのはイヤだ、と前回書いたばかりなのに、せっせと焼売を蒸してしまった。そして瞬く間に優勝した。

きっかけは妻からの提案だった。昼下がり、銀行に行って商店街に寄っている妻から在宅ワーク中の私のところに極めて単刀直入な内容のLINEが来た。

「焼売とかどう?」

それで全てが動き出した。私は急いで冷凍庫の豚ミンチストックを確認し、冷蔵庫のパーシャル室的な抽斗に移した。

焼かずに蒸すのになぜ「焼売」?

さて、皆様におかれましても上記のような疑問を持たれた方は少なくないのではなかろうか。

これに関してはよく言われている説がひとつふたつあって、ひとつめは中国語の「焼」がそのまんま日本語の「焼く」と同じ調理方法ではない、という説。これはたしかにそうなのだが、蒸すという調理方法は中国語でも「蒸」なのであって「焼」ではない。ちょっとちゃうかなーという気がする。

ちなみにもともと焼いていたから、というのも違うようだ。冷めたのをもっかい焼いたりはしてきたかもしれないけど、伝統的にまずは蒸して食べていた。れっきとした蒸し料理だったのだ。

有力な説は「焼売」と発音が近いが別の字だった、というもの。下記にまとめたのでお時間のある方はどうぞ。

「稍麦」説。
「稍麦」を直訳すると「ちょっぴりの麦」という意味になる。たぶん「たっぷりお肉とちょっぴり小麦粉」というニュアンスでつけられたのだろう。日本語で置き換えると、薄皮まんじゅう、みたいなことだ。そのうちまんじゅうが脱落して薄皮だけになる。薄皮おいしいよね、薄皮食べたいな、で通じるようになる。もっと時間が経つとなぜか漢字が置き換わって牛川とかなって、何が牛? 何が川? みたいになるはず。薄皮まんじゅうはそこまで行ってないけど。内モンゴルには今もこの字で、羊肉とネギのあんの焼売に似た料理が残っている。おそらく焼売のルーツだろう。

「稍売」説。
ちょっとだけ売っている、という意味。明朝末期から清朝初期の頃、呼和浩特(フフホト)で、小遣い稼ぎにと包子の皮の余りを使って口の開いたちっちゃな肉詰めをついでに蒸して商っていた家があり、おいしいと評判に。ちょっとだけおまけ程度に売っていたのが主力商品に上り詰めたそう。

「稍美」説。
ちょっとキレイやん、という意味。横のヒダヒダが花のようでかわいらしく、ちょっとキレイというところから名前がついた、というもの。ちょい皮ならぬちょいカワ、ということか。

いずれにせよ「焼く」ではなく「ちょっぴり」とか「おちびちゃん」的な意味合いでつけられたっぽいことがわかる。いいじゃないですか、おちびちゃん。

ちなみに中国語では餃子を作るときに「包餃子」、つまり餃子を包む、という動詞を使うのが普通だけど、こと焼売に至ってはそこまで詳細な動作にフォーカスしていないのか「做」=作る、という一般動詞が用いられているよう。

まずはあんから。実は餃子よりかなり楽ちん。

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解凍した豚ミンチは200gないぐらいかなあ。塩小さじ3分の2ぐらい、オイスターソースを1どば、粉末スープの素を1ぱら、砂糖小さじ1弱を加えて粘り気が出るまで練る。

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ここに加えるのが、50ml程度の水で戻した干し椎茸(小2枚)。

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細かく刻んで、戻し汁とともに豚肉に加え、再び練る。

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ここでポイント。

玉ねぎ(2分の1個程度)、冷凍庫に余っていたタケノコ水煮(玉ねぎと同量程度)を細かく刻み、片栗粉(大さじ1〜2程度)をまんべんなくまぶす。こうすることで蒸したときに野菜の水分で水っぽくならず、フワシャキに仕上がります。またミンチとのくっつきもよくなります。

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あとは豚肉と混ぜ合わせ、焼売の皮にねじ込んでいくだけ。

あの動作をなんと形容したらいいんでしょうね。ジャッキー・チェンの酔拳みたいに親指と人差し指で杯の型を作り、そこに皮を乗せてあんを詰めてゆく作業。

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焼売って、餃子と違って皮を閉じなくてもいいのでスピーディだし、キャベツやニラを調達しなくてもいいからお手軽度は数段上、もっと家庭料理として人気になっていいはずなのに餃子ほどは市民権を得ていないのが、いささか不遇よねえ。

蒸し時間は10分。

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不揃いだけどかわいらしいおちびちゃんたちを皿に並べ、蒸し器で蒸すことおよそ10分。

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できたー。

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さっそく熱々をハフハフしながら口に運ぶ。うまいし! しうまい、うまいし! お肉はぷりっぷり、ジューシーで玉ねぎの甘みや食感がいいアクセントに。残念ながらタケノコは冷凍期間が長すぎたせいかすっかり腑抜けになっておりその影は薄い。しかしそれでも楽々優勝の出来栄えである。

からし醤油をつけると旨みが急加速。ビールが止まらん。箸も止まらん。夫婦ふたりでお皿2枚分食べちゃった。

しかし餃子と違ってまだ慣れていないせいであんと皮の配分がつかめておらず、かなり皮が余っちゃった。イヤねえ。次回への反省点としなければ。


今日から9月。今年もようやく3分の2が終わった。いろいろありすぎて2020年はとても長く感じるなあ。毎日の食卓や、仕事や、ひとつ一つを大事にしてあと4ヶ月ふんばって、あるいは逃げきっていきましょうー。



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