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究極の手抜きごはん 〜コロッケそばでいい、という選択〜

午前中ドタバタしていてあまりお昼ごはんを準備する時間が取れない、ということは誰にでもあると思うけど、うちはそういう場合高確率で麺をチョイスする。特にこれからの季節は冷たいうどんかそばをめんつゆでズズーッと啜るのが定番。これもよくある話だと思う。

「一丁そばでもたぐるかあ」なんて江戸っ子っぽくふざけてみたりして。

でもさすがに麺だけでは栄養的にも味覚的にも物足りないというところがあって、できるなら何か一品添えたい。そんなところに最近ときどき登場するのがスーパーの惣菜コーナーで買ってきたコロッケ。

うつくしい。1コロッケ、2コロッケという通貨として流通させたい。すぐ傷んだりかじられたりしちゃうんだろうけど。

お惣菜や冷凍食品は全くと言っていいほど買わない我々夫婦だけど、「お肉屋さんのコロッケ」的なお惣菜コロッケだけは特別。一個50円を切っていたら買う。だってこの味、家庭じゃマネできひんもん。

今までも時間に余裕があるときはありあわせの食材でかき揚げを揚げたりして冷たいそば・うどんに添えてきた。チェーンや本場香川のセルフうどん店の例を挙げるまでもなく、揚げ物のボリューム感とこってり感がそば・うどんの淡白さを補ってくれるのは言わずもがな。そこでコロッケの出番なのだ。

ところが長らく大阪で育ってきた妻に言わせると、コロッケそばはまあまあ抵抗のある食べ合わせで、結婚して一緒に暮らすようになってから克服し、好きになったというもの。

そう、関西人はあまりコロッケそばを食べない。

コロッケそばの歴史、その東西。

軽く調べると、コロッケそばの歴史は関東と関西で大きく異なる。

東京は1885(明治18)年創業の『そば所 銀座 よし田』で、明治時代にビフテキや豚カツと並びハイカラな洋食の代表だったコロッケをそばの具にすることを考案したのが発祥だとか。意外にも100年以上昔の話なのだ。

ただしこのお店のコロッケはいわゆるふつうのジャガイモを主としたポテトコロッケではなく、鶏ミンチを山芋と一緒に練って揚げたものだそう。現在の感覚でいうとハテ? と思うけど、おそらくポテトコロッケよりも簡単でコストが抑えられたからではないか、とのこと。それが嚆矢となって、現在では駅前なんかの立ち食いそば店でもふつうのポテトコロッケをでーんと乗せたコロッケそばが老若男女に熱く支持されていると聞く。

一方、大阪では大きく時代が下って1969(昭和44)年。アポロ11号が人類初の有人月面着陸を果たした年、梅田の「おっちゃんのテーマパーク」新梅田食堂街に創業した「麺処 潮屋」で初めてコロッケそばが登場したようだ。

その差80年以上。コロッケそばは東京中心の文化と考えざるをえない。というのも……。

そばつゆの濃さがコロッケと合うかどうか。

ご存じのとおり関東(東京)のおそばのつゆは我々関西人からみれば暗黒のように濃い。この濃さ、しょっぱさがコロッケを浸して食べるのにちょうどいいらしい。大阪の、芯はしっかりしているけどあっさりして透き通ったつゆではコロッケに味つけするにはいささか物足りないのだ。そんなんソースの方がええわ、となってしまうのである。個人的にもすごく共感できる。

大阪は薄味のおだしを好みつつ、ソース味の料理も隆盛を誇るという、清濁併せ吞む食文化が培われている。他所の人からしたら「結局どっちやねん」と思われがち。そんなとき大阪人はこう反駁する。うまかったらどっちでもええねん。

わりと生粋の大阪人に近い食の嗜好を持つ妻はそれゆえ、そばに天ぷらは許せてもコロッケはない、と長年固辞し続けてきた。しかしその牙城が崩れるときがやってきたのである。その理由とは……。

おだし(かけつゆ)より濃い、つけつゆなら好相性!

そう、冷たいおそばのつけつゆはぬくいおそばのおだし(かけつゆ)よりキリッと濃い。ぬくいそばに載せるから間が抜けちゃうのであって、冷たいつけつゆにコロッケを浸して食べればまことに具合がよいのである。

大発見。

熱々の揚げたてのサクサク衣にサッとつゆをしみ込ませて素早く口に運ぶもよし、買ってきてしばらく経ってしんなりしたものをやわらかく芯まで湿らせるもよし。

このことを発見してから、俄然コロッケそばは我々の夏の食卓の準レギュラーに躍り出た。安くておいしく手っ取り早い。言うことなしである。

ただし問題もあって、ほぼ炭水化物・塩分・脂質という、デンジャラスな栄養バランスだということ。血糖値がにわかに上がるせいか、食べ終わった後はだいたいすごく眠くなります。

まあ夫婦でそば3玉ぺろっと食べちゃうのもいけないんだろうな。


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