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SixTONESが提案する新たなアイドル像とは|「人人人」から読み解く最新アルバム「声」レビュー

2023年1月4日、SixTONESが最新アルバムを投下した。

この人たちはいつも突然だ。

遡ること2022年11月12日、SixTONES公式SNSから「視聴音源の不具合のお知らせ」がファンの元に届き、過去発表されたシングル曲の音声が一部メンバーの声が抜かれた状態や音源のみの状態でしか聞けなくなった。

SixTONESにより戦略的に計画されたその不具合は数時間ごとに変化していき、ファンを楽しませた。

数日間SixTONESの手のひらの上で弄ばれた末、音源復旧のお知らせと共に届いたのはアルバムとツアーの発表。

彼らはいつも、突然。


2022年は、ジャニーズ初のTHE FIRST TAKE出演から始まり、Youtube限定で「PARTY PEOPLE」の発表、メンバー出演ドラマの主題歌シングル発売など、音楽活動でも進化を魅せた。

その進化は、出来上がったレールの上を歩くのではなく、まだ無き道を開拓していくパイオニアのようだった。

今回は、SixTONESの最新アルバムを通して見えてくる新たなアイドル像について考えてみた。

SixTONESが提案する「新しいアイドル像」とは

アイドルはいつでも、ファンから求められている偶像と、自分たちが目指す理想像の狭間にいる。

どこまで行っても結局はファンが楽しめるものあることが大前提であり、これまでも最終的にはそこが判断の基準となってきた。

だがSixTONESは、そこが新しい。

SixTONESは、自分たちの評価も判断基準の一つにあるのだ。

ファンが納得するかどうかに加えて、自分たちが納得するかどうかも非常に重要視している。アイドルとしてのプライドは保ちつつ、彼らは彼らの音楽を第一に楽しんでいる。

それがSixTONESを見ていて安心するところなのだ。

彼らは自分たちの楽曲に誇りを持っている。
今回のアルバムもそれが存分に伝わる1枚だった。


1.Overture-VOICE-

始まった瞬間の衝撃。流したCDを間違えたかと思うほどの衝撃。
アイドルグループの主流として、歌割りを1人ずつにする傾向があるのにも関わらず、この時代にここまでのユニゾンを最初に提示してくる彼らの心意気。

俺らは、俺らの音楽をやる。と時代に宣戦布告。

2.Boom-Pow-Wow!

本アルバムのリード曲となった楽曲。

2022年、SixTONESはSNSを通して「アガる音楽」「圧倒的なライブ感」などイメージが少しずつ固まってきたところ。そんな今の彼らにとって名刺とも取れる楽曲。

冒頭、ジェシーのフェイクでSixTONESの開幕宣言!
彼がこのグループにいることの貴重さを何度実感しただろう。
ここからどんどんSixTONESに巻き込まれていく予感しかしない。

3.Good Luck!

SixTONESは毎アルバムがコンセプチュアルだからこそ、シングル曲とアルバム曲の雰囲気に乖離を感じることも少なくない。

「このシングル浮くけどどうするんだ…」
なんて心配をいつもしてしまうが、いつも綺麗に裏切られる。シングルも含めて1枚のアルバムになるように徹底的に仕上げている。

特に本アルバムにおける「Good Luck!」は前作「CITY」の「マスカラ」くらい馴染んでいる一曲だった。

「Boom-Pow-Wow!」の開幕宣言からの自然な流れに聞こえてきた。

4.Outrageous

最初の一音目でもう何かが起こることを示唆される。
何が来る…と体がこわばる。

SixTONES、今年はJ-popかと思っていた。
それでも、ちゃんと彼らの一丁目一番地になりつつあるライブ映えする楽曲も入れ込んできたのが信頼度抜群。

髙地優吾の少しこもった歌声と、加工された音が入り込むEDMの相性は抜群なのは、1stアルバム「1ST」の「Dance All Night」でも証明されている。

「Outrageous」でもAメロから髙地の歌割が採用され、曲の完成度に一役買っている。

野生化してオスみを帯びた髙地優吾に触れたら、
もしライブでそんなんが見れたら、ぶっ壊れる。

5.ふたり

SixTONESあるある言っていいですか。
オラオラのクラブミュージックでこっちをぶち上げたくせに、直後にバラード持ってきて帳尻合せようとするやつ。毎回振り回されてます。(最高です)

6.共鳴

シングル表題曲としてアニメ「半妖の夜叉姫」オープニングテーマでありながら、2021年後半から2022年前半にかけてのSixTONESの集大成のような曲となった。

うやむや(1stアルバム「1ST」通常版収録)
→フィギュア(5thシングル「マスカラ」初回盤B収録)
→Rosy(2ndアルバム「CITY」収録)
と、アルバムやカップリングを通してスピーディーでジャンルレスな楽曲に挑戦してきた彼らがいよいよシングルでも勝負。

昨年度のライブツアー「Feel da CITY」の初日にサプライズ披露されたことでも話題を呼んだ。やっぱり彼らはいつも突然。

7.人人人

元日の夜、SixTONESのYouTube限定パフォーマンス企画「PLAYLIST」で突然配信された本楽曲のパフォーマンス映像。

細かな技術の話は一旦置いておいて、楽しかった。

これこそ、新しいアイドルの提案だった。

自らが音楽を純粋に楽しみ、それをファンと共有する。

このシンプルな構造がこれまでのアイドルにはやりたくてもできなかったことだったのだ。それをSixTONESは楽しそうにやってのける。

Youtube限定配信の映像で6人のグルーヴを楽しむのもよし、
CDでレコーディングならではの緻密に計算された声の変化を楽しむのもよし。

本楽曲にはラップが多用され、いつもは担当外のメンバーのラップ姿を堪能することもできるのだが、一方で中盤ではラップ担当の田中樹のスキルの高さも堪能できる。

田中は普段SixTONESの中でもラップを担当しており、シングル・アルバム問わずSixTONESらしさを創り出すのに貢献しているが、本楽曲においては純粋なラッパーとしての田中樹も垣間見れて嬉しい。

8.Risky

彼らは一体いつになったら私たちを休憩させてくれるのだろうか。

「人人人」で最高潮まで高揚して息をつけると思ったら、次は出口のわからない迷路に迷い込んだ。

曲を聴いていて、今はサビにいるのかBメロにいるのか…
曲中今どのあたりにいるのかわからなくなってくる。
警戒しながら周りを見渡していると、気づいたら終わっている。

発売前、本作「声」のことを1stアルバム「1ST」の進化系と表現していたメンバーがいたが、ジャンルレスでありながら違和感なく楽曲が繋がっている全体の流れがまさに「1ST」にも似た雰囲気を感じる。

9.Chilln' with you

アイドルとはファンの期待と自分たちの目指す理想像の狭間にいる、と冒頭で明記した。本楽曲「Chilln' with you」は前者のファンが求める大人びたSixTONESを感じられる一曲。

チルを歌わせたらジャニーズ一の深みを帯びてき彼ら。
これまでにも「loveu…」「Coffee&Cream」「Gum Tape」「TakesTwo」などと数々の名曲を残してきたからこそ、さらにステップアップした一曲となった。

(参考)SixTONES – Gum Tape [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.5]

10.SUBWAY DREAM

2022年のSixTONESはJ-popを中心に攻めていたように思う。

デビューから1-2年目は、海外のトレンドを積極的に取り入れたり、全編英詞の楽曲にも挑戦していたが、2022年は日本語の楽曲を積極的に取り入れ「オンガク」(7thシングル「わたし」収録)「Sing alone」(8thシングル「Good Luck!/ふたり」収録)などが目立った。

本楽曲「SUBWAY DREAM」もその延長線上にあるような気がする。

日常のやるせなさとそれでも前に進む緩やかな応援ソング。

デビュー直後の緊張感が抜けて、今のSixTONESの余裕や包容力だからこそ説得力がある一曲となった。

(参考)SixTONES – オンガク [Visualizer] / Ongaku [Visualizer]

11.PARTY PEOPLE

この夏、記憶にも記録にも残った一曲。
SixTONESにしか歌えない曲、SixTONESにしかできないアイドルをここでも提示されていた。

■過去の執筆記事 ー SixTONESにしかできないを次々と更新する「PARTY PEOPLE」|楽曲レビュー&考察

12.わたし

あんなにシングルで聞いていた「わたし」もここまで翻弄されるアルバムを通して再視聴すると「あぁこんなバラードも歌えるんだ」なんて新鮮に驚いてしまう。

13.Always

ピアノで始まり、ドラムが入り、バイオリンが入り…
ジェシーで始まり、松村が入り、京本が入り、6人となり…

サビに向けてどんどん開けていく心地よい楽曲。


SixTONESは従来のアイドルらしくない。

キラキラソングは歌わないし、キラキラ衣装は着ない。天然キャラにツッコむおきまりのパターンもなければ、下ネタ上等。

そんな彼らの姿勢がこのアルバムにも存分に表れていた。


アイドルだって一人の人間だ、という現実味を帯びたメッセージを歌った「人人人」
一方で、彼らの生みの親・ジャ二―喜多川が願った平和を歌う「Always」

この2曲を同じアルバムにいれるという姿勢そのものが彼らの意思表示。

「守るために変えない部分」と「時代に合わせて変えていく部分」
「ファンの期待」と「自らの理想」
「仕事」と「自分の人生」
これまで相反していた二つを緩やかに統合していく。自らの手でコントロールしていく。

これこそ、SixTONESが提案する新たなアイドル像だ。


前作「CITY」をはじめて聞いた時SixTONESは文化を作ると思った。
大げさかもしれないが、新しい文化を創っていく人たちだと音楽を通して思った。

今作「声」でそれが確信に変わった。これまでを守りながら壊せる人たち。

ファンだけでなく、「アイドル」そのものすら、手のひらで弄んで欲しい。


アルバム発売を記念して、SixTONES特集を開催!
下記スケジュールで投稿予定です。

【SixTONES特集スケジュール】
1月5日「森本慎太郎の溢れる多幸感の裏にある覚悟」
1月6日「SixTONESの要・髙地優吾の最強アイドル力」
1月7日「田中樹に学ぶ組織を自然とまとめるリーダー力」
1月8日「着実に結果を残す松村北斗の努力の裏側」
1月9日「これまでのイメージを払拭していく先にある京本大我という存在の尊さ」
1月10日「SixTONESの幅を広げるジェシーの本物力」

※タイトルは仮題です
※投稿スケジュールはあくまで予定です

最後までご覧いただきありがとうございました。
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海瑠‐uru‐ | フリーランスライター・インタビュアー
日本のドラマ・映画を中心としたエンタメ記事を執筆。
ヒトやモノのこだわりを見つけ出す・聞き出す記事を書いています。


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