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色のない世界で目を覚まし

久しぶりに会社に行った。
どんな表情で会社に入ろうと前日、いや、出社する電車の中でも悩んでいた。ところが、ただでさえ「ちょっとギリかなぁ」という出発時間だったのに電車が2,3分止まるというトラブル。
「あかん、間に合わん」と、会社最寄り駅から猛ダッシュし、とにかく間に合うのに必死で息を切らしながら「おはよう(ゼェ)ございます(ハァ)」とオフィスに入った。「どんな表情で~」と悩んでた時間はなんだったんだろう。
ただ、復帰できたのは本当にありがたい。二度と戻れないかもしれないと思っていたのに。今日は、以前は復帰できなかったお話。

新卒で入った会社で挫折

最初に入ったのはIT系の営業。まったくうまくいかなかった。
ある時、社内編成で大手取引先は先輩にすべて取られ、本当にやることがなくなってしまった。会社に行っては迷惑メールを削除するだけの日々。私にとあるプロジェクトを任せると会社は言っていたけどまったく話が進まず。そんなある日帰り道、突然頭の中で「パンっ!!!!」と大きな音が鳴った。その瞬間「あ、もうだめだ」となり、うつ病を発症。すぐに会社を休職した。暑い夏の日だった。

うつ病と診断されて


当時通ったクリニックでは、とにかく薬だけを処方された。いくつもの薬を飲む中で「本当にこのままで大丈夫なのかな、薬どんどん増えるけどいいのかな。あたし、いつ治るんだろう」という恐怖で、突然薬を飲むのをやめた。勝手に。
それは、のちに看護師の友人に「よく生きてたね」と言われるほど、やってはいけないことだった。精神状態を保つための薬を突然やめると「離脱症状」を発症してしまうらしい。(これは病状がかなり落ち着いたときに母から聞いた話。はよ教えて。)
薬をやめて数日後、体がしびれて痛くなった。翌日には起き上がれなくなった。3日間ほど寝たきりになった。それから1週間ほどは起き上がれはするものの、痛みがひかない。
その頃には「もう会社には行けない」と判断し、新卒で入った会社を半年も経たず辞めてしまっていた。

味わったことがないほどの絶望のなかで

痛い。きっと明日は治ってる。翌日また痛い。いや、明日こそ。翌日。痛い。あぁ、もう明日もまた痛いんだ。翌日、やっぱり痛い。
いつまで続くかわからない痛み。仕事も辞めて収入もない。社会復帰ができるかどかもわからない。このままでは生きていても親に迷惑をかけるだけだ。
「あぁもう、死んでしまおう」
途中で飲むのをやめた薬がまだ残ってることを思い出し、飲めもしない日本酒を持ち出し、一気に飲んだ。これで痛みからも解放されるし、親に迷惑かけることもない。そうしてソファに横になって目をつぶった。
幸い、目が覚めた。ただ、何の色もなかった。もう夕方だったからか、精神状態が良くなかったからか、どちらかはわからないけど。横には当時飼っていた犬が寝ていた。犬を撫でながら涙が止まらなかった。
なんて親不孝なことをしたのだろう。友達を悲しませることにもなるだろう。色々な感情が入り混じった涙を流したまま、晩ご飯の準備をした。

社会復帰までの葛藤

その後2,3年ほどニートのようなフリーターのような生活をしていたが、その間はずっと「いつ社会復帰ができるんだろう」「復帰してもうつ病が再発したらどうしよう」という恐怖に常に苛まれていた。
とにかく就職するのが怖かった。でも就職をして経済的自立は必要だ。親だってずっといるわけではない。でも怖い。でも、でも、でも。
踏ん切りがつかない日々が続いたが、一大決心をして就職。恐怖心はあったものの、うつ病を発症することもなく、仕事を続けることができ、ようやく社会復帰が叶った。
その後、就職した会社が倒産したり、さらにそのあとに就職した会社がtheブラック企業だったりと踏んだり蹴ったりな会社人生を歩んで今の会社に至る。

よみがえる夏の日

しばらくは落ち着いて仕事をしていたが、ついに躁うつ病を発症。あの時のような体の痛みを感じ、あの時のような気分の落ち込み。
「どうしようどうしよう、またあの日のようになってしまう。どうしよう。」
もしかしたらもう2度と会社に行くことはできないかもしれないという思いもありつつ、今はこれ以上働くことは無理だと思い休職を決意した。
休んでいる間は気分も落ち着いていたが、働くことを考えると落ち込みを感じる。会社のことはなるべく考えないようにしていたが、復職が決まった頃から中途覚醒をするようにもなった。
また、このまま辞めることになったらどうしよう。あの時と同じことになってニートになったらどうしよう。そんな恐怖心もあった。

迎えた出社日

そして約1か月半ぶりの出社。冒頭に書いた通り遅刻ギリギリで息も切れ切れオフィスに入る。
「おはようございます」
一瞬「しんっ―」とオフィスが静まったあと「おはようございます」と同僚たちの返事。仲の良い他部署の人もわざわざ「おはよう」と声をかけに来てくれた。やけにほっとした。
面談時「休んだことを申し訳ないと思うより、しっかり治してまた復帰することに集中したほうがいいよ」と上司も言ってくれた。「ありがたいなぁ」と手を合わせるような思いだった。
明日も出社。やっぱりまだ精神的にしんどいのか、今日は昼過ぎから体に痛みを感じた。それでも働けているだけありがたい。

もう二度と味わいたくないと思っていたあの夏の日々がよみがえり、とても焦ったが、今回は大丈夫そうだ。
さぁ、明日は走って出社することがないよう、今日は早めに休もう。


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