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ダイビングインストラクターと生理の話

今回は女性インストラクターなら避けては通れないお話。


そう、「生理問題」です。


インストラクターとしての目線、お客様側の目線、一人の女性としての目線からそれぞれ書いていこうかなと思います。

多少生々しい話となってきますので、苦手な方はご遠慮ください。


1.インストラクターの生理事情

まず、私はかなり出血量が多い方です。

これから書いていくことには当然個人差があるので、私は私の悩みがあってやり方があって、人によって違うことを踏まえたうえで読んでください。


生理中の女性たちが使うのは「ナプキン」が大多数で、こまめに替えれない時や海やプールに入る時などに「タンポン」を使うことになります(月経カップなどもありますが、代表的な物での話をしていきます)。

毎日のように海に入る私たちダイビングインストラクターが生理になった時、当然使うのはタンポンがメイン。まだ新米でたまに失敗してた頃を思うと、何の苦労もなくサッと使えるようになりました。


ここで、最初に書いた出血量が多いという点に触れていきます。

タンポンにもいろいろ種類があって、普通の日用、多い日用、特に多い日用などという風に分けられています。

私が通常使うのは、夜や特に量が多い日のための1番大きいタイプ(給水量が多い)のもの。例えるとしたら、手の小指と親指くらいの差があります。

パッケージに記載されている使用の目安は4~8時間。ダイビングでの4時間というと、朝、船の出航前に使ってから午前中2本ダイビングして、お昼に替えればちょうどいいかなというくらいです。

・・・そう、量が普通の人にとっては。


1番出血量が多い2~3日目は、4時間ももちません。1~2時間で吸い切っちゃうこともあります。

そんなときお客様であれば、よほど何かがない限り1本潜ることにトイレへ行って替えることが出来ます。私も、普通の日は当然そうしています。

でも、勤めていた頃、次から次へ体験ダイビングのお客様を潜らせ、回転させてなんぼだった時、海から船に上がることすら出来ない日もありました。そういう日、どうするか、どうなるか。

今日は絶対替える暇がないと朝から分かっている場合は、タンポンとナプキンをセットで使います。正直、超気持ち悪いです。水分含んでぐちょぐちょぶよぶよになったナプキンを付けていなければいけないので。それでも、漏れるよりマシだ、と自分に言い聞かせながら・・

ナプキンをしなかったり、うっかり普通の日用のタンポンしかなかった時、どうなるか。事件です。流血事件です。

海から上がってシャワーの水をウエットスーツの中に入れると、足元から血が流れてきたことが何度あるか(歴10年経った今はそんな失敗もなくなりましたが)。仕方なくトイレに向かい、新しいタンポンに替えようとした時、吸い切れず流れ落ちてくる経血で何度手を真っ赤に汚したことか。お気に入りの可愛い水着を何度汚したことか。


そんな憂鬱な月のこと。

たくさん人の乗る船で、あからさまな生理用ポーチを持ってトイレに行くのも気分をさらに憂鬱にさせるし、男性のお客様と私だけで違う所で潜る時は、生理ということを気づかれないように必死でした(スピード勝負でこっそりスーツの中にタンポン1つ忍ばせて行く)。

港のトイレが汚かったり、ゴミ箱がなかったり、トイレのない船で休憩しないといけない日は絶望です。

冬だったら少しマシですが、夏は痒いし蒸れるし臭うし何もいいことありません。


出血量に加えてかなり生理痛もひどいので、この時ばかりはダイビングインストラクターという職業を恨みます。

どんなに辛くても、接客業という仕事である以上は笑顔でお客様と接しなければいけない。私が生理でコンディション最悪だとしても、お客様には関係ない。安全を管理しながら潜る以上、潜ると決めた以上、しっかりやらなければいけない。

そこまで我慢しなくても・・と思うかもしれません。

でも、夏のハイシーズンのタイミングで、1人欠けたら回らなくなる。もし休めたとしても、他のスタッフの負担も増える。そう考えると、私が我慢すればいいだけで。「頑張れ頑張れ」って自分に言い聞かせてやるしかなくて。



毎月基本1回の生理が1年で12回、この仕事をして約9年半だから114回。

痛みはもちろん、毎回毎回いろんなハプニングや、気持ちの浮き沈みをよく乗り越えてきたな・・と改めて思います。ただ、歳を重ねるたびにひどくなったり、予期せぬことは今も起こるので、強くなったと感じることはあまりないです。対応能力が上がったくらいでしょうか。

本当に、女性インストラクターあるあるなので、あとから笑って話せることもあるけれど、実際その瞬間は必死です。

もしそわそわこそこそしていても、1人になって辛そうな姿を万が一見かけても、そっとしておいてあげてください。


今はいろいろあって薬で生理が来ないようにしているので、毎月の憂鬱がなくなり快適です(それも予期せぬことだから嬉しくはないので、それについてはまた今度書きます)。


2.女性のお客様と生理

電話で男性スタッフが出た時、「女性の方いますか。代わってもらえますか」と言われることがあります。メールでも、女性の方の担当でお願いできますか、と問い合わせをいただくこともあります。当日、こそっと私の所に来る方もいます。

みなさま、生理の事を気にしての理由からです(こういう時のために、ダイビングショップって1人は女性がいるといいんですよね)。


よく聞かれるのは

「生理になりそうなのですが海に入って大丈夫ですか」

「タンポン使ったことがなく不安です」

「血でサメは襲ってこないですか」

といったところでしょうか。

Cカードを持っているダイバーさんより、初めて潜る体験ダイビングの方からこのような質問をいただくことのほうが多いかなと思います。


そんな代表的な質問に対して、私が返答するのはこんな感じです。

まず、海に入ってもいいかという質問に対しては、タンポンが使えれば問題なし。でも、生理痛がかなりひどかったり、痛み止めを規定量以上に服用している場合はやめた方がいいと伝えます。そこまでひどい人の場合は、私もそうでしたが、薬を飲んでいてもなかなか痛みは引かないし、水中でも下腹部痛を感じることもあってかなり辛いんです。

そうでなくても身体を冷やすのが特にいけない生理の時に海に入るのだから、水中世界に癒されて痛みが和らぐなんてことはあるはずがなくって(あったらどんなにいいことか)。

あなたはやめましょうと言うことはないけれど、動くことや思考することに支障がきたすくらいの時は自分の判断でやめてほしい、というのが正直なところです。


タンポン問題に対しては、使えなくてもなんとかなることはなる。量が少ない日であれば私のようにナプキンを使用出来なくもないし(不快感はあるが)、生理終わりかけの時は水中にいる間はほとんど出血していないはずなので。

ただ、それを初めての人にさせるにはかなり酷だし、量が多い日などはタンポンを入れるしかないので、時間かけてもいいので頑張りましょうと言うしかありません。私たちには当たり前になっていますが、意外と多くの女性がタンポンを使ったことがなく、旅行でのダイビングで初使用だったりします。大抵は成人以上なので、「頑張ってみます」「大丈夫でした!」と言ってくれるのですが、中には「3回目でようやく成功しました・・」なんてこともありました。

旅行に生理が被るかもという場合は(特に初めてダイビングをする方は)、ピルでそもそも生理が重ならないようにする、それが出来なければ前もってタンポンを使う練習をオススメします。しっかり入れられれば問題なく潜れるので。不安な時は遠慮なくインストラクターに聞いてもらっていいですし、女性がいないお店の場合はビーチやボートで出会う他のお店のスタッフに聞いてもらっても大丈夫です。


そして、生理とサメ問題。これ不思議なことに本当によく聞かれるんですよね。聞かれるたびに、そうだよねー不安だよねーとくすっと笑っちゃいます。

つい最近もYahoo!ニュースでそんな記事ありました。

私に言えるのは、「生理でダイビング中の時、サメは絶対大丈夫(場所による)」ということです。研究に基づくものではありません。経験に基づいて、ただ、そう言えるだけです。だって、そうじゃなければすでに私たちインストラクターは襲われている可能性があります。

もちろん、危ない系のサメがいるところだったらどうなるかは分かりません。でも、生理の経血でダイバーが襲われた、なんてニュース聞いたことありますか?

少なくとも沖縄で、一般的にダイビングポイントとして楽しめる場所で、生理中に潜って襲われることはないので安心してください。


3.1人の女性としてのお話

前述の通り、出血量も生理痛もひどい私。

繁忙期で潜るしかない時は、自分を奮い立たせて現場に出ていましたが、独立するまでに私が勤めていた2つのショップでは、本当にひどい時やオフシーズンは内勤業務に回してくれたりしていました。

もちろん最初からそういうわけではなかったので、一通り大騒ぎいたしました(笑)お客様の前では必死に我慢していましたが、スタッフの前では「辛い、痛い、休みたい」を吐き出していました。

今思うとただのわがままっ子で、社会人として給料も貰っているのに迷惑な話です。妻や彼女がそこまでひどくなかったり、生理に知識のない男性陣にとっては当然戸惑いもあったと思います。だけど、生理のたびにソファの上で動けずお腹抱えてうなっている姿に、さすがに同情してもらえるようになりました。


労働基準法では生理休暇が取得できます。

でも取得できている、一度でも取得したことがある人はどれくらいいるのでしょうか。取得歓迎ムードの会社はどれくらいあるのでしょう。

私が我慢しながらも頑張れていたように、休む休まないはそれぞれの状況次第だとは思います。もちろん、1ヵ月に1回休んでもいいなら最高です。

でも、それよりも女性が恥ずかしさや申し訳なさを感じず、本当に辛い時にきちんと辛いと伝えられて、それを嫌な顔せず受け入れてあげられる世の中であればいいなと思います(休める休めないよりも、分かってほしい、ということが私には大きかったです)。


私の場合は、他みんな男性スタッフだった中で助けてもらえていたり、「辛ければ休んでいいよ、先に帰ってもいいよ」と言ってもらえていたのは、本当に本当に有難かったです。

実際に休まなくとも、その言葉に救われていました。


ただ、正直なところ。

自分の身体が商売道具な職業上、経歴や能力関係なく男性に適わないと感じる面はあって、さらに生理で自分が女性だと余計に思い知らされ、辛くて動けなくて「辛い」と口にするたびに劣等感は強くなるので、どんなに助けられても、内心はすごく悔しかったです。

出来るのに・・やりたいのに・・身体が思うようにいかないことがもどかしくてたまりませんでした。



書きながら思います。わがままですね。

辛い、休ませてほしい、分かってほしい。でも、それが悔しい、なんて。


海が好き、ダイビングインストラクターという仕事が好き。

そう思う以上、ぐちゃぐちゃどろどろした気持ちと、これからも向き合っていくしかないのだろうなあ。

頑張れ私。頑張れ女性インストラクター。


4.最後に

冒頭でも書いたように、非常に個人差があることです。

1人1人抱えているものは違うし、私が正解だとも思いません。


何か伝えたくて書いたというより、ずっと吐き出してみたくて仕方なかった「生理」という事柄を、この場を借りて言葉にしてみました。

なるほどなあ、くらいに読んでもらえたら嬉しいです。

海で働く女性たちに、私だけじゃないんだ・・と知ってもらえたり、私もこうだったなとあるある話として少し笑ってもらえたら嬉しいです。


また今度、さらに生々しく、妊娠事情についても触れてみます。



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