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やっぱり、人です。

 神楽坂にこぢんまりしたイタリアンがある。自粛で半年以上行けていないが、風の便りでは繁盛しているとのこと。そこにフロアーを仕切る女性店員さんがいて、何しろテキパキと気持ち良い動きをされる。こちらの外国人カップルを笑わせて、さりげなくあちらのテーブルにはお勧めのワインを紹介し、踊るように各テーブルを周り、所作も綺麗で爽やかな風が吹くような接客。料理ももちろんうまいのだが何しろこの人のファンになってしまう。料理がうまい店はけっこうあるが、接客が素晴らしいと記憶にまで残る店はあまりない。他が悪いというわけではないのだ。けれど特に印象に残ってしまう。知り合いのお店だったり何度か行っていて親切にしていただけるお店も沢山あってそれはそれで大変お世話になっているのだが、ここはそういうところでもない。店の常連と言うわけではなくもちろん友人でもない。友人数名と数回しか行ったことしかないのに忘れられない。

 そしたら昨日会社の側、本郷の中華料理屋で新たな素晴らしい接客に遭遇。ここは昔よく通っていたが顔見知りの店員さんは本国に帰ってしまい、コロナもあってしばらく立ち寄っていなかった。通りがかり久しぶりに家で食べようとテイクアウトで4品ほど料理を頼んだ。料理の出来る間ビールでも飲みながら待つことに、するとさりげなくつまみが一品。サービスとのこと、お礼を言って食べながら待っていると、他のお客への接客が目に入る。非常に細やかな気の利いた接客で見ていて気持ちがいい。何かと声をかけるのだが押し付けがましくもなく、店の雰囲気を明るくしてくれている。つまみが残っているがビールがなくなったので、もういっぱい頼もうとすると、料理2品が先に上がったので、つまめるように少し取り分けましょうかと聞かれた。お願いしてビールをもう一杯注文。サービスのつまみもまだ残っているので本当に少しだけ取り分けてくれて美味しい料理と気持ちの良い接客をつまみにビールを飲むことが出来た。今度はみんなを連れてまた来ようと決めた。 

 気配りも嬉しいが所作が大事ということなのだ。ぎこちない動きのバーテンダーに作ってもらう酒より、熟練のバーテンダーにステアしてもらう酒の方がうまいのは当たり前だ。ただ、たまにいるがポサを出しすぎてこれでもかオーラを出されるとそれはそれで酒を楽しめない。さりげなさも大事。スピーディーでかつ動きに無駄がなく繊細な動き。二人とも料理やグラスをテーブルにドンと音をたててサーブしたりしない。かと言ってそっーと運んで来るわけではない。ダンサーに近いのかもしれない。適度な距離感も大事なのだ。フレンドリーに接してくれる人も多いが、ガサツにヅカヅカ来られるとやはり少し引いてしまう。海外で食事をするとチップという制度があるので積極的にサービスをしてくれる。ただアピールしないとならないのかそれがそこでは普通なのだろうけど、やはり相対的に押し出しが強いと思ってしまう日本人の私ではある、、。ただ、そのおかげで収入が上がるのは良いことだ。いい仕事をしている人が沢山稼ぐそれが正しい。最近は全部のチップをまとめて全スタッフで割るという店も多いらしいが、それでは本末転倒だろう。日本にもチップの精度があればいいのだろうか。でも現状そんなことは関係なくこの人たちはいい仕事をしている。仕事なので当然対価があってやっているのだろうけども、楽しんでいるように見える。それを見ているこちらも楽しい。そう、楽そうなのだ仕事が。シンプルだけどなかなか難しい事だと思う。昔友人に連れていてもらったお姉さんがいる新宿の巨大なお店。金髪入場禁止で店がわかる人もいるだろう。接客と話はずれるが、なにしろこの店の女の子は楽そうに働いていた。その店で働いていることが楽しくてしょうがないといった雰囲気。もちろん全員がそうではないのだろうがそう言う娘が何人かいるもしくは店長なのかオーナーなのか優秀でそういった空気を作り出しているのか、夜の店に若干暗いイメージを持っていたのをひっくりかえさえたことを思い出す。

 グルメというわけでもないので、そこまで味にこだわりがない方で、並んでまで食べようと思わないし、もはやそんなに量も食べられない身からすると雰囲気を楽しむということは、食事をしたり酒を飲むのにはすごく重要な要素だから余計に気になってしまうのかもしれない。結局は人なんだと、気持ちのいい店員さんがいる店は素晴らしい。踊るようにテーブルの間をすり抜け、客との間に明確な境界線をひいて、無理やり入ってこないけれど状態は把握してくれている。そういう店員さんがもっと増えたら外食する機会も増えていくのではないかと思う今日この頃。

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