神々しい朝日
数年前、仕事で南海の久米島に数日滞在した。
その時の思い出。
もう季節は秋でオフシーズン、ホテルも閑散としていた。
仕事やその他のストレスで不眠も続き、体調はあまり良くなかった。
ある日、小鳥の元気な鳴き声で目が覚めた。
外はようやく明るくなり始めている。
海岸へ行ってみよう。
歩いてすぐのところにきれいな海岸があったはずだ。
ロビーを通らず、中庭から海岸に向かった。
南の島らしいむっとするような植物の匂いに包まれ、砂地の小道を歩いた。
ヤシのような木々を抜けると、目の前に広大な海が現れた。
ちょうど日の出の瞬間で、水平線の空が赤く燃え始めていた。
ほんの数分で、たちまち空は赤く染まり、南国の雲は美しく空を彩った。
圧倒的な光。
息をのんだ。
こんな朝日、見たことない。
目の前の空全体が赤やオレンジに眩しく輝き、雲は力強く伸びあがり、形を変えた。
磯の香りの風に吹かれながら、感動して誰かに教えたくなった。
こんなすごい日の出、ひとりで見るのはもったいない。
しかし、仕事の仲間はこの時間まだ熟睡してる。
浜辺には他に誰もいない。
申し訳ないような気がしたが、贅沢に独り占めだ。
目の前の景色に、以前見たシスティーナ礼拝堂のミケランジェロ、最後の審判を思い浮かべた。
これは神々の世界だ。
波の音だけが聞こえている。
目の前の劇的な風景が私の脳に、記憶に、深く焼き付いていくのを感じた。
この島に来て良かった。
何よりうれしいお土産をいただいた気がした。
きっと今日は朝ごはんが美味しいぞ。
絵 マシュー・カサイ「神々しい朝日」 和紙 四六版 水彩
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