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都会の暮らし 

黄色く色づき始めた空の下、川べりの街を眺めていた。

車の音や、工事の音が遠く聞こえる。

私は、都会が一休みしているような午後の時間が割と好きだ。

通勤通学でごった返す時間や、お昼休みの人の賑わい、ネオンの煌めく夜。

それらの賑わいと違って午後のある一定の時間、この都会はわりと静かになる。

そんな時に眺めると、都会の眺めもなかなかいい。

育ったのは自然豊かな田舎だった。

自然も美しいし、のどかだった、

しかし、子供の頃から虫や蛇やカエルが苦手だった。

見るのも触るのも嫌だった。

それに夜は怖い。

家の周りは水田が広がり、家の横を走る国道の車の光と音が時折聞こえるが、夏のカエルの合唱以外、静かだった。

闇の広がる夜は子供の目から見て、幻想的でもなくただ怖かった。

出歩く気になんかならない。

都会はいい。

虫や蛇やカエルは少ないし、暗闇はあまりない。夜は逆にいろいろな明かりが煌めく幻想的な景色になる。

寂しさを感じても、田舎の寂しさとは全く違う。

ここから見えるあの新しいビルはどんな会社が入っているんだろう。

あそこを歩いていくスーツの男性は疲れてそうだな。何の仕事だろう。

あの明るいネオンのお店は何のお店かな。

眺めていると時間を忘れる。

一人が好きな私にとって、都会は住みやすい。

こんな柔らかな光の中の景色を見ていると、慎ましい都会の生活が愛おしくなる。

華やかさや刺激はそれほどなくても、いい。

ホッとして、街を眺める。

そんな私の都会暮らし。

コーヒーが飲みたいな。



絵 マシュー・カサイ「都会の暮らし」水彩


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