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仕事も子育ても一生懸命やってきて、今やっと子育てのあとの風景が見えてきた

#子育て #昇格 #キャリア #ライフデザイン #インタビュー #働く女性  

「これからどうしよう?」と迷ったとき何かのヒントを見つけてもらえればという思いで【L100】自分たちラボが紹介してきた「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソード。

今回は、現在、企業で人事部長を務めている陽風さん(仮名)のエピソードです。順調に階段を上ってきたように見られるけれど、実は流れに乗ってみただけとのこと。どんな道のりだったのか、そして子育てを卒業して遅ればせながら考えたというご自身の今後とは?

陽風さん(50代前半)*インタビュー当時
経歴: 新卒入社した会社で30年以上勤務継続。コーポレートの仕事を歴任し、現在は部長として活躍中。ママさん社員の先駆けとして頑張って来て、娘さんの就職と共に子育てが一段落したところ。家族は夫と娘の3人暮らし。

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
私は人生曲線のラインが平均的に高めなんじゃないかと思いました。最初は高いところで一定だったのですが、そんなことないなと思って書き直してみました。

陽風さんが描いた人生曲線

昇格推薦を断る

20~30代:仕事と子育てで必死。毎年毎年辞めようと思っていた

―――総務、人事、広報といったお仕事をされてきたんですね。
元々はエンタテインメントの仕事がしたくてこの会社に入ったのですが、最初の配属先が総務で、それからコーポレートの仕事をずっとしてきています。20代の異動で視野が広がって、エンタメを作っている人だけではなく、それを支える人が必要だということを学べたことで、今も続いているのかなと思います。

―――30代の時に人生曲線が上下していますね?
30代後半に上司の評価面談で、「部長になる覚悟があるなら昇格推薦できる評価にするが、そういう覚悟はあるか?」と聞かれたんです。当時、子供が小学生で、生活と仕事をなんとか回していて必死な時期でした。覚悟がないと昇格できないのか?今、私が一生懸命やっていることだけを見て昇格にはならないんだと腹がたって、「そんな覚悟は今持てません。それで昇格できないなら、このままでも構いません」と断ってしまったんです。上司はまさか断ることはないだろうと思っていたと思うのですが。
元々育児休暇に入るとき、休暇取得後に会社を辞めようと思っていたんです。書類も全部処分して送別会のような見送りもしてもらって。その後、私以外のメンバーが辞めたこともあり、当時の上司が「戻ってくるつもりなら席は取ってあるから」と電話をくれたんです。友人に相談したら「そう言ってくれるなら絶対戻った方がいい」「辞めるのはいつでも辞められるよ」と言われて、「そうか」と戻ることにしました。でも、そこから毎年、毎年、春前になると、今年は辞めると言おう、と思っていたというのが30代でした。

―――毎年辞めようって思いながら、でも辞めなかったんですよね?
自分が辞めたいと思うことを子供のせいにしたくなかった。でも、私がこんなに大変な思いをしているということは、子供にも大変なことを強いているのではないか?お金のことを考えるなら、他のことをしてもよいし、ここにこだわっている必要があるか?と毎年思っていました。
社内にママ仲間もいなかったので、特殊な人という見られ方もしましたし。「アシスタントより早く帰るくせに」と言われたこともありました。そういう時代でしたから。ほんと、あと1年、あと1年と思いながらきました。

だるま落としのように部長になる

40代:リスタート。自然体で流れに乗ってみる

―――40歳のところで、一番人生曲線が下がっていますね?
病気で、会社を2か月休んだんです。体力面で自信をなくしたし、会社の業績が一時期すごく悪くなった中で自分が抜けてしまう罪悪感もあって、一番落ちていましたね。社会に戻れる自信がなかったです。突然、自分が思うように体が動かないということがあるのだなと思って、働き方や周りとの接し方を考え直しました。

―――その後、結果としては部長になったのですね?
病後に職場に戻った時、会社の経営陣も、私の上司も代わったので、関係性を作り直す「リスタート」の時でした。そういう中で、私の上司にあたる人事部長が、8年くらいの間に3人代わったんです。私の方は、体力的なことや子供の受験などで、「今年1年で辞めよう」という思いに拍車がかかっていたのですが、自分より前に部長が辞めるので、じゃあしばらく辞められない、ということが続いて、最終的に3人目の部長が辞めたときに、私が部長に、ということになったんです。この時、選択肢はなくて、私がやらないと一緒にやっていたメンバーが路頭に迷う状態だったので、「やります」と言いました。そこから人事の勉強をし直して、社外にも出て教えていただいて、そうやって覚悟ができていきました
若い後輩から見ると、私は着実に階段を上がってきた人のように見えているようで、「私、1回昇格を断ったし、玉突きがあってだるま落としで部長になったんだよ」「毎年辞めようと思っていたし」と話すと、すごくびっくりされるんです。

―――実際になってみていかがですか?
なって良かったと思っています。そこに迷いを持っている人がいたら、「管理職になった方が絶対楽になる」と言ってあげたい。私の場合は、部下に仕事をふれるので物理的に楽というのもありますが、気持ちが楽になりました。責任は増えるけれど、裁量も増える。自分でチームが作れるというのが大きいですね。その人たちと一緒に、これをやった方が絶対にいいと確信を持てる方向に進めることができる。いろいろな人を説得したりネゴしたり応援してもらったりが必要ですが、それも、部長になってからの方が圧倒的に得やすくなりました。
今、女性活躍推進の施策と言うと、女性が管理職になりたいと思わないのはなぜかとか、意欲的になれる環境づくりを、という話が多いけれど、「なりたいと思ったわけでないけれどなってみたらよかった」という人もたくさんいると思うんです。最初からそこを目指すという姿勢でなくてもいい。自然体で、流れがやってきたらその流れに乗るのもいいんじゃない?と思います。

子育て終了後に見える風景を問われて、はたと気づいた!

50代:100%自分の人生

―――50代で人生曲線が上がっていますが、何かきっかけがあったのですか?
後輩に「子育てが終わったあとにはどんな風景が見えるんですか?」と聞かれたんです。それは私にとってすごく大きな言葉でした。
子供が学生ではなくなったママ社員は私が初めてで、「わーい、娘の就職が決まった、子育て完全におしまい」と言っていたら、子育て真っ最中の後輩からすると、今の大変な日々が終わると考えたことがなかったようで、純粋に「こんな日々はいつか終わるのか。終わったあとはどうなるの?」と聞いてくれたんです。その時、私も終わりがあると思っていなかったことに、はたと気づいたんです。「そうか、これからは100%自分の時間で100%自分のお金で100%自分の人生なんだ、これから先どうするかをちゃんと考えよう」と思いました。
それまで、「来年の春で辞めよう、それまでの1年間、これをがんばろう」というループでやってきて、自分の足元しか見ていなかった。それが、「これからはああいうこともこういうこともできる」と先々のことも考えるように、私の顔をあげさせてくれた言葉です。

―――それで、自分のことを考える時間を意識してとりましたか?
そうですね。自分自身のことを立ち止まって考えることがそれまで本当になかったので、改めて自分を考える時間をとるようになりました。休日は、自分一人の時間に使っています。誰かに自分の話を聞いてもらったり、自分が読みたい本を読んだり、自分の行きたいところに行ってみるなどを意識してやるようになりました。

「自分であることを諦めない」ための応援をする

今後について

―――今後についてはどう考えていますか?
自分自身が自分であるために仕事をしたいと思っても、何か諦めなければならない事情を抱える女性は多いと思うんです。実際にそういう人たちを見てきました。今後、自分が一番役に立てるのは、自分が見てきたことを他の人にシェアしていくことだと思ったら、もう少しいろいろなことを知らなければならないと思って、いろいろ勉強しています。

―――40代から50代にかけていろいろ資格をとっていますね。
30代のとき先輩の勧めでとったキャリアコンサルタントの延長で、キャリコン国家資格と2級技能士を40代でとりました。50代でとった他の資格(介護離職防止ナビゲーター等)も今後を考えてのものです。でも、資格をとったり勉強したりすることでやった気になってしまうのが私のよくない部分で、行動に移さないとだめと指摘されたんです。会社が副業禁止だからとか、次にしようかなどと見送っていると結局何も始まらないと思うので、そのうち副業の規定を自分で作ればいいやと思って、仕事やボランティアの機会があったら実際やってみようと思っています。
先々は、「やりたいのに何らかの理由でやれない」という立場の人に、「自分であることを諦めないための応援をする」というのを、本業にしてやっていきたいと思っています。それも、自分で考える時間ができたから、降ってわいてきたんです。私はこれがやりたいんだと40代で気づいていたら、もっとスピーディーにエネルギッシュにできたかもしれないけれど、逆に40代では気づけなかったし、遅ればせながらも今でいいかなと思います。

おのずと道は開ける。流れが変わった時が自分の気持ちを変えるチャンス

女性たちへのメッセージ

―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
おのずと道は開ける。今、何かを諦めなければならない環境にあったとしても、どこかでまた流れが変わる。変わったときが自分の気持ちも変えるチャンスだと思って、流れを見ていればいいと思います。流れに乗って、流れに沈まずに、いい潮目がきたら自分で選択をして、いい潮目に乗っていくことが大事。諦めたくないものは諦めないこと。

―――陽風さんは、諦めたものはあるのですか?
自分は欲張りなので、何かを諦めたり、いったん置くということをせずに、どれもこれも持ったまま走りたい、という感じで来たのだと思います。誰にでもお勧めするものではないですが。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか? 
今まで、今後やりたいことをこんなに明確に誰かに表明したことはなかったので、いろいろとしっかり聞いてもらえて、自分の中でもいろいろなことがつながってクリアになりました。

(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーズコメント

「子育てが終わったあとにはどんな風景が?」と問われて、はっと、自分も考えていなかったことに気づいたというお話から、それまで本当に一生懸命日々を過ごしてこられたんだろうなと思いました。お話のしかたも明るくて自然体な感じ。「自分であること」を諦めないために寄り添ってくれる、こんな上司がいたら、後に続く人もきっと心強いと思います。

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