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『ツクヨミ秘された神』

前回『神話と日本人の心』を読んで、神話に強い興味を持ちました。

今回は神話の中でも謎に満ちた神様、ツクヨミに関する本を読んでみました。

『ツクヨミ秘された神』は、神道・陰陽道に造詣の深い戸矢学先生の著書です。

学生の時に荻原規子さん著の『空色勾玉』を愛読していたため、月読命様めっちゃ好きでした。

そして、私の綺麗なお兄さん好きは、多分ここから始まっています。

ところがです。

ツクヨミは天武天皇が作った神であると、この本では主張されています。

天武天皇は、天智天皇が謎の死を遂げた直後、挙兵し壬申の乱をおこし天武天皇として即位します。

武力でもって、その地位を得たわけですから、その即位には正当性が担保されなければなりませんでした。

そこで行ったのが古事記編纂です。

古事記は、国内に向けたプロパガンダのようなもの。

天武天皇がいかに天の命を受けて即位したのかを広く知らしめる意味があったのです。

そこで日の神である天照大御神に対する月の神を作ったというのです。

すまわち、天武天皇=ツクヨミです。

現人神の源流でもあります。

さらに、天武天皇は陰陽寮を創設しました。

陰陽師を登用した最初の人物でもあったわけです。

陰陽道は、月を読む技術でもあるそうですから、まさに月読。



そうか、私の綺麗なお兄さん像であった月読命様は、めっちゃ強い天武天皇だったのか…。

天武天皇がどういう相貌をしていたのかは存じ上げませんが、天武天皇の行ってきたことなんかを考えてみたら、ごりごりのおっさんのイメージになります。


ごりごりのおっさんであっても、美丈夫であっても天武天皇の功績は現在に至るまで続くものもあり、やはり立派なものであると思います。



ところで、天武天皇は前の天皇である天智天皇の行ってきたことをがらっと変えました。

古事記編纂や日本書紀編をしたことも、天智天皇の功績をなかったことにする思惑もあったかもしれません。

そうなると天武天皇の次に即位する桓武天皇は天智天皇の系列の天皇です。

桓武天皇といえば、平安京に遷都したことで有名な天皇です。

さらに天武天皇に対して、深い恨みを持っていました。

天武天皇の功績をできるだけ削除しました。

削れるところを削った結果、ツクヨミは秘された神として現在に至っているというのです。



受験で日本史Bがあったので、このあたりは結構勉強してきましたが、視点が変わることで天武天皇の人物像までも明らかになるようで、楽しかったです。

天智天皇の謎の死もかなり興味深いです。

行方不明になって、沓だけが落ちている。

病死か毒殺かそれすら明らかになっていません。

なにこのミステリー。

1冊ごとにいろいろ興味が出てきて、限度がありません。


『ツクヨミ秘された神』では、天武天皇以外にも三種の神器についても詳しく書かれています。

三種の神器の勾玉は、ツクヨミの依り代であり、月を表しているということも超納得することろです。

三日月かな?とは思っていたので、答え合わせで合ってた!みたいな心境になりました。


三種の神器が、ときの天皇に祟りをなしていたというのも驚きです。



神様について詳しく知ろうと思ってたのに、天武天皇について詳しくなりました。

やっぱ世襲制とか、血族とかでつなげていくのは難しいのかな?


最後に少し疑問に思ったことは、ツクヨミ=天武天皇だったから記述が消されたとすると、他にも名前だけ出て何をしたのか書かれていない神様についてです。

他の名前だけの神様についても天武天皇にゆかりのあるような神様だったのであれば、確かに筋は通るかもしれないけど、それにしては多すぎるような気もするし、謎が深まりました。


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