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憲法を学ぶ

 先日憲法学者の木村草太さん(東京都立大学教授)のセミナーを拝聴しました。
 主なテーマは現在の課題を受けて、侵略戦争に関する条文(主に9条)と同性婚や共同親権に関する条文(24条)についてで、能登地震復興に関して生存権の条文(25条)についても言及がありました。
 まずは前段の説明として憲法というのは「張り紙」のようなもので、私たちは〇〇を失敗しやすい。なので🟢🟢という「張り紙」を貼ろう。というのが基本イメージで、私たちの自立と責任を前提に人権及び幸福の最大化のため、前近代国家から近代国家へ移行(近代化)させて、権力の一極集中化を図る際に、これまでの国家権力の三大失敗①戦争②人権侵害③独裁を排除するために①軍隊と戦争をコントロールする。②人権を保障する。③権力は分立して、独裁は許さない。という内容を明記して「張り紙」を貼ろう。として作られたもので、日本国憲法もその歴史的背景と趣旨に則って制定されているとのことです。
 戦争・武力行使については前提として国際法が存在し、19世紀は戦争自体が合法であった(戦争のルール化は推進)が、20世紀前半には不戦条約の試みがありながら二度の世界大戦が勃発して甚大な被害があった後、20世紀後半に国連憲章によって戦争の違法化(侵略、武力行使の全面禁止)が定義され、それを補完(例外事項)するために国連軍の設置、自衛権及び集団安全保障が国連の承認の下認められているという流れになっているとのことですが、安全保障理事会の常任理事5ヶ国には拒否権があるため、5大国は例外扱いになっています。
 9条についてはこの国際法の解釈と連動(一致)しており、侵略や武力行使は禁止されていますが、13条において国民の生命、自由、幸福追求の最大尊重が保障されているため、自衛のための軍隊保持は合憲というのが現在の政府見解ということになっています。
 ここで重要なのは条文通り解釈することではなく、歴史的背景や将来に向けて現実的、ポジティブに解釈するということで、日本には侵略の前科があり、現在はまだ執行猶予中で再犯の恐れがあるから厳しめでいいと捉えるか。もう更生しているから解除すべきか。という議論ではなく、現憲法を国際社会の平和に向けた普遍原理の先取りと捉えて、武力防衛に備えるのではなく、世界平和という国際公共価値を実現させるツールとして捉える議論が大事であるということです。
 また現憲法はそれまでの憲法と比べて女性の権利が大幅に拡大されており、その背景にはベアテ・シロタさんという当時20代の若い女性通訳(日本で育ったユダヤ系ウクライナ人、お父さんが有名ピアニスト)でGHQの要請で草案作成に携わった方の進歩的なアドバイスがあったことや同性婚はほぼ司法的には合憲となっているが、婚姻の法的な位置付けが定まっていないこと。共同親権は実施済みの国で裁判所が強制することで問題が発生していることや、現在の単独親権をベースにした制度の方が実質的に当事者には使い勝手がいいことなどご教授いただきました。
 いずれにしても憲法というものは「どういう社会が皆んなにとって一番幸福か。」ということが一番重要なので、条文云々ではなく歴史の流れの中で考えていくべきだし、今ある憲法が成立するに至った先人の努力。未来に向けて今努力している人たちのことを良く考えて理解していかなければならないと思いました。

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