また会いましょう。

231109
高校生の時、下の名前が自分と同じ友人がいた。
漢字は違うけど、読み方が一緒。
たまたま部活も一緒で、仲良くしていた。

大学生になって、彼が癌になったと聞いてお見舞いに行った。
癌と聞いてびっくりしたけど、病室で会った彼は思っていたよりは元気そうで、少し安心した。
地元を離れてしまった僕が見舞いに行ったのはその一回だけだったけど、その後、無事に退院したと連絡をもらった。
それからはたまに連絡を取り合うくらいだったけど、彼も大学生活を謳歌している様子だった。

数年後、僕の短期留学が決まり、SNSに近況報告を兼ねた投稿をした。
数日後、久しぶりに彼からメッセージが来た。
「久しぶり!俺、今イギリスにいるんだ」
彼は僕よりも前にイギリスに留学していて、すでに大学院進学も決めたらしい。
元気そうなメッセージを見て、嬉しくなった。
海外で会えたらカッコいいと思ったけど、金銭的な問題や彼の試験日程の兼ね合いで、会うことはできず、僕は帰国した。

彼はSNSを頻繁に更新する人ではなかったけど、たまに学歴や職歴がアップデートされていくのを見つけて、ニヤニヤしていた。

気づけば僕も歳をとり、いいおっさんになっていた。
彼とも最近連絡を取ってないし、いつからか、彼のSNSの更新も止まっている。
一度メッセージを送ったが、返信はないままだ。
まぁ、僕も最近更新してないし、そんなもんだろう。

高校時代の部活の先輩が出張でこちらに来ると言うので久しぶりに飲むことになった。
仕事の話、家族の話、そして部活の話。
なんだかんだ、部活は僕らの青春だった。
「そう言えば知ってるか?最近聞いたんだけど」
先輩は少し呼吸を整えて話し出した。

数ヶ月前に、彼が亡くなったらしい。
癌だったそうだ。

先輩も又聞きらしく、詳しいことは知らないそうだが、数年前から闘病中だったらしい。
家族や本当に近しい人にしか言っていなかったそうで、部活の友人や先輩後輩には言っていなかったらしい。
時系列を整理すると、僕がメッセージを送ったのは、既に厳しい時期だったのかもしれない。

あぁ、なんてあっけないのだろう。
まるで消えるように、はじめからいなかったかのように、彼はいなくなってしまった。
この感情を虚しさと呼ぶのだろうか。

「俺たちも、会える時に会っとかないとな」
先輩が静かに呟いた。
いつもなら軽く、笑いながら言える言葉が、僕に重たく沈んだ。

家に帰って、久しぶりにSNSを開いた。
プロフィール写真の彼は、大学生の頃の彼のままだ。
笑っている彼に、久しぶりにメッセージを送った。
送信済み。

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