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20 技能実習生と特定技能ビザ(在留資格)

外国人が日本人と異なるのは、日本で学校へ行くなり就職するなりしたいのなら、在留資格(ビザ)が必要であることです。

在留資格の技能実習ビザと、在留資格の特定技能ビザとは、どちらも日本で就職するための在留資格であり、似ています。
どちらも「技能」が付いていて紛らわしい。

A   外国人技能実習生
技能実習ビザにより日本在留することになるのは、外国人技能実習生の方たちです。令和3年末時点で、276,123人おられます。

この人数は、
令和3年10月末時点の外国人労働者1,727,221人に対して16%の割合、

更に、令和3年6月末時点の日本在留外国人総数2,823,565人に対して9.8% の割合になります。

技能実習ビザは、技能実習1号(1年)と技能実習2号(2年)に分かれていて、最長3年の技能実習後に母国に帰国して、日本で修得した技能を活かすことになります。

言い換えると、日本にいたくても3年で母国に帰国が必要になります。

但し、技能実習3号が新設され、2号終了後1か月の母国への帰国ののち、更に2年間技能実習が続けられることに直近で制度改正されています。

約30年前(1993年)に創設された外国人技能実習制度の第1の目的は

「国際貢献」、つまり日本が生み出した技術や知識などのノウハウを開発途上国に移し伝えることに意義がある、

とされてきました。経済発展のための「人づくり」への協力のために作られたという背景があります(JOB SERACH JAPAN 「外国人採用を検討する企業様へ」のコラムより)。

厚生労働省のホームページでも、 外国人技能実習制度は、

我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を

図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国への移転を図り、

開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としている。

となっています。

外国人技能実習生の令和2年度の産業分野別の分布は、

建設                         22.5%
食品製造                  19%
機械・金属              14.2%
農業関連                    9.1%
繊維・衣服                 5.9%
漁業                            0.9%
その他                        25.8%

その他には、家具製造、印刷・製本、プラスチック成形、強化プラスチック成形、塗装・溶接、工業包装、紙器・段ボール製造、陶磁器工業製品製造、自動車整備、ビルクリーニング、介護、リネンサプライ、コンクリート製品製造、宿泊、RPF製造、鉄道施設保守整備、ゴム製品製造  が含まれる。

令和3年末の国籍別では、


ベトナム                    58.1%
中国                            13.6%
インドネシア                9.1%
フィリピン                    8.4%
その他                          10.8%

であり、ベトナムが他を圧倒しています。
その他の中では、タイ、カンボジア、ミャンマーが多くなっています。


B   特定技能ビザ
これは、介護、飲食料品製造業、建設、宿泊業、外食業、産業機械製造、

農業、漁業、ビルクリーニング、素形材産業、電子・電機情報関連産業、

造船・舶用工業、自動車整備、航空    

の14の特定産業分野ごとに実施される試験に合格したのち、

就職活動を行った後、会社等に内定をもらって就職したら、最長5年間日本

でその仕事で働けるというビザです (特定技能1号)。

また、現在、建設及び造船・舶用工業の2分野についてのみ、

熟達した技能を有する者に最長期間の定めのない無期限のビザが認められる

特定技能2号もあります。

この2019年から始まった特定技能という在留資格は、

A で申し上げた
「開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としている。」外国人技能実習生用の技能実習ビザとは、

制度目的が異なります

JITCO(公益財団法人国際人材協力機構)のホームページによりますと、

在留資格特定技能は、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れていく制度である。

となっています。

簡単に言えば、在留資格技能実習とは異なり、

日本の人手不足解消を正面からとらえている在留資格と言えそうです。

令和4年2月末の特定技能ビザで在留する外国人は、57,762人となっています。

認められている14産業分野のうちで外国人が多い順に、

飲食料品製造業          20,896人
農業                                7,223人
介護                               5,971人
建設                               5,639人
産業機械製造                 5,400人
素形材産業                     3,482人

となっています。


C
在留資格の技能実習ビザと、在留資格の特定技能ビザ  の違い

技能実習ビザの場合は、働いている会社を変更できないことになっています。

これに対して、

特定技能試験の合格後、企業等に就職したら取得できる特定技能ビザでは、

在留資格の変更手続きをすれば、働いている会社を変えられることになります。

この点、かつて、存在したのかもしれない外国人技能実習生のおかれた脆弱な立場について、

ベトナム人技能実習生の実態 奴隷労働 

という書物で、著者の巣内尚子氏は

制度上の制約ゆえに、技能実習生は帰国を前提にしてしか日本で働けない。

同時に、仕事を変える自由を奪われ、交渉力の弱い労働者となる。

と指摘しておられます。


留学生には、現時点では、特定技能ビザは人気がありません。

理由は、

a 最長5年というしばりがある

b 家族を母国から呼び寄せることができない(家族滞在ビザが出ない)

c 日本に在留10年したのなら資格が得られる永住ビザの在留年数に、

特定技能ビザ1号による5年間の在留期間は含められない。

という扱いがある(行政書士フロンティア総合国際法務事務所ホームページ)。

ということのようです。


日本に長くいたいと思ってくれるのはありがたいのですが -----

5年も日本にいられたら、ある程度はお金を貯められるし、いいのではないかとも思うのですが ----- 








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