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次のバカンスはどこ行こうか?という歌

シャンソンの店でよく歌われ、コンクールでも若手の参加者が歌うシャンソンにミシェル・サルドゥーの「青春の旅たち」というのがある。
矢田部道一さんの書かれたあの日本語歌詞は、私には少し違和感がある。
今回は、もとのフランス語詞について解説してみようと思う。

フランス人にとってのヴァカンス

フランス人は、夏に3週間から4週間の休暇を取る。彼らにとってこのヴァカンスは重大なイヴェントで、年明けからどこへ行こうかと考え始める。このシャンソンは、或るカップルの男性の方が女性に向かって、次の旅行はどうしたいかという一種の提案をするスタイルになっている。
しかも、それは、突拍子もない非現実的な提案なのだ。

Et si j'te racontais notre prochain voyage?
J'veux dire... en plein délire, en plein vagabondage.
J'ai l'air de plaisanter mais j'rigole pas du tout
Être une fois cinglés, une fois vraiment fous.
Partir, bon Dieu! Partir sans savoir où l'on va
Faire de la planche à voile au détour d'un delta
D'accord, on prend la fuite, imaginons la suite
Pour un mois pour un an, j'sais pas.

僕たちの次の旅行について君に話したいんだけど
思うに… ずいぶん妄想のようで放浪のほうで
僕はふざけているみたいだけど、まったくそうじゃない
一度クレイジーになれば、本当にクレイジーになって
お願いだから、行先を決めずに旅立とうよ
デルタ地帯をボードセイリングして
よし、どこかへ行ってしまおう、次を想像しよう
1か月か、1年かはわからない

こんなことを恋人に言われた女性はどうリアクションするのだろう?
驚いてしまうのか? 呆れてしまうのか? それとも、また妄想の悪い癖が出たとウンザリしてしまうのか?
青臭いことを言う少年のような目をした相手。青春をひきずる男って、なんて困った代物だろう。

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