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モモを読む。

こんな風の強い日に
海に行きたいなんて
こころに合わせると大変です。

行きたいって思ったら行かないとね。

トレーナーとジーパン履いて
青いストールを首に巻き付けて
ふらっと電車に乗った。
連休の最終日。

電車はそこそこ空いていて

子供を連れたベビーカーの
夫婦が無口に携帯をいじってる。

その向かいに座るマスクのお姉さんも
携帯見ながら笑ってる。

次の駅乗り込むおじさんも
携帯を指でいじりながら
私の前に立つ。

今日は携帯の人がやけに目に付く。
という私も
ポチポチしながら揺れに合わせてる。


窓の外の景色を
見ようとすると、
「ガリガリくんソーダ味」の
広告がちょうど目線の前にあって
邪魔になっちゃったりして。

いつもの
朝の出勤ラッシュを思い出してしまう。


今日は海が見たいのです。


たどり着いた駅は
ひとがたくさんで
前に来た閑散としている
町のような感じが無かった。

駅を間違えたかな。

私の小旅行はいつも
行き当たりばったりで
2回目に行こうとすると
ちゃんとたどり着けないことがある。


気が向いたときに
気が向いた分だけ歩く。

途中で大きなおにぎりを買って
大きなサッカー場の
人気のない屋根のついたベンチに座り
もぐもぐと食べ始めた。
梅と、ごぼうのおにぎり。

日焼けした
少年たちが
これまた携帯見ながら
とおりすぎていく。


こんなに風が強いから
海岸の砂浜は荒れて
海についたときには口のなかがざらっとした。

ごうごう言う
波音を聞いていたら

すぐに帰りたくなってしまった。


帰ってコーヒーをゆっくり入れ
ギーを足して
久しぶりにモモを読む。

今日の旅に持って行ったけれど
帰りの電車ではうとうと眠くなって
隣のひとに肩をつけてしまったから。


私は掃除夫ベッポさんが好きで
つい、なんども読んでしまう。


「よごれた道路をまえに、
きれいになった道路をうしろにして、
こうしてすすんでいるあいだに、
とても意味ぶかい考えが心にうかんでくることがよくありました。
でもそれは、
思いかえせばほのかによみがえってくるなにかのかおりとか、
夢で見た色とかのように、人に説明することのできない、ことばで表現することのできない考えでした。」

ミヒャエル・エンデ作・大島かおり訳 岩波少年文庫


とっても長い道路をうけもつときの、
いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん

つぎの一歩のことだけ、
つぎのひと呼吸のことだけ
つぎのひと掃きのことだけを考える

そうするとたのしくなってくる。


ベッポは無口でほかの人からは、
少しおかしいひとだと思われているけれど
モモはベッポの言ったことばは、
ぜんぶこころに大事にしまっている。
私もモモと同じで
ベッポの言ったことばを
大事にときどき思い出す。


明日からの一週間も
ここにある自分の感情を
味わいながら
怒ったり笑ったりして
過ごそうと思う。


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