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HJ文庫レビュー 『ダンジョン配信者を救って大バズリした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった1』

はじめに

 皆さんこんにちは。今月も元気に読書してますか? とはいってもまだ今月序盤か。それでも個人的には2から3月に向けて体調が崩れやすくなるので皆さんもご自愛ください。

 さて、それでは本題に入りましょうか。今回は『ダンジョン配信者を救って大バズリした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった』のレビューを行っていきたいと思います。前置きと話の内容が急すぎないかって? こ、これには訳があるのです。ダンジョンものも配信者ものも普段全くと言っていいほど触れないジャンルでどう切り出せばいいのか分からなかったのです。どっちも最近ラノベでよく聞くテーマのはずなのに……。何ならどちらも恋愛もの以上に疎遠だったりする……。そこに加えて陰陽師が転生したってどういうこと? そんな右も左も分からない暗闇からのスタートですがご容赦くださいませ。

 一応先に結末を言ってしまうと、滅茶苦茶面白かったです。

いつもの証拠写真。

あらすじ

 最期の気力を振り絞って転生の術を成功させた平安時代の陰陽師がいた。彼は転生先の現代において上野うえのソラという名で高校生活を送りながら周辺に存在するダンジョンで配信を行っていた。どうしてそんなことをしているかって? それは廃れてしまった陰陽師の名をもう1度知らしめることと、モテることだ!

 しかし現在では存在しないものとされる陰陽道は見向きもされず配信を見てくれる人はほぼゼロ。インチキ扱いは日常茶飯事。

 そんなある日、ソラは人気ダンジョン配信者を助けたことがきっかけに世間から注目されることとなったのだった。

レビュータイム

レビュー① この陰陽師、只者じゃない

 ソラは陰陽師、その術は本場の平安時代に身に着けたもの。しかもめっちゃ強いというおまけつき。しかしながらあまりにも強すぎるせいかインチキだと思われてしまうのがまた面白い。一応この世界にも魔法は存在するのですが陰陽術とは原理が全く違うものだそうです。

 しかも陰陽師なのは戦闘スタイルだけに留まりません。占いを行うこともあります。それだけではなく、前世が本当に平安人ということもあり、思考や常識が平安時代寄りになっているのです。本作の舞台が限りなく現代に近しいローファンタジーチックということもあって、さながら逆異世界転生のよう。別世界には行っていないはずなのに。

 それだけではなくソラの性格が当時の陰陽師がどのような役割だったのかを踏まえたものになっていたりと物語全体を通して本当に陰陽師だったんだなと説得力が増しています。

レビュー② 好きだから支えたい

 インターネットにはトラブルがつきものです。それは動画配信だって例外じゃない。ですがソラの配信はいつでもほっこりしていています。アットホームでほのぼのしているからどこか日常コメディのような雰囲気で楽しむことができます。

 その秘密の鍵となるのはやはりソラ本人の人柄の良さでしょうか? 素朴ながらも愛嬌がある彼を周りが支えている構図がハッキリと確認できます。例えば、ソラの配信を裏方として支えてくれる同級生がいるのですが、その子の動機もソラの動画が面白いからなのです。

 更に、彼は本編中でも雑談やコミュニケーションが苦手だということを自覚しています。ですが注目されてからはなってからは王道の配信とは違い予想もつかない行動で視聴者を驚かせていきます。そこでの視聴者の反応がコメントに現れ、突っ込みとして機能していきます。

 こういうこともあってなのか、皆で1つの動画を作っているという感触がより強固なものになっているのかもしれません。

レビュー③ 影の功労者はネット民かもしれない

 さっきのレビュー内容と少々被る事をご了承ください。個人的にこの本で注目していきたいのは名も無き人々が紡ぐ配信コメントと掲示板のスレッドパートです。どちらも1つ1つは短くてサクッと読めるのですが中々に侮れません。

 コメントにおける役割はツッコミだけではありません。リアクションによりこの世界での常識の一端を窺うことができたり。ソラが詳しくないことを捕捉してくれたりもします。ですがやはりリアクション関係になると読者も驚くことの方が多いので、いつの間にか私達も動画の視聴者になってるかのような錯覚を受けます。

 掲示板パートも数ページに渡るものが数回と思った以上にページが割かれています。しかも現実のフォーマットに似せてあるという特別仕様。クールタイムでもありながらいざという時はエンジンを暖めてくれるかけがえのないコーナーです。特に最後の掲示板パートでは私のテンションもかなり高くなってました。

さいごに

 常識違いのド天然系陰陽師による配信は常に何が起きるか分からないのでいつもハラハラと笑いが止まりませんでした。今なら配信者が好きな方の気持ちが分かる気がします正直1巻だけでは足りない……もう少し眺めてたいです。初見のとっかかりが掴めず手探り感覚だったのとは裏腹にページを捲る手が止まりませんでした。



 あと最後にこれだけは言わせて。散々笑わせておいて最後の最後でウルっと来させるのは……反則でしょ。

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