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HJ文庫レビュー 『勇者殺しの花嫁 Ⅰ ー血溜まりの英雄ー』

はじめに、並びにご挨拶

 皆さんこんにちは。或いは初めまして。今回HJ文庫のレビュアープログラムに参加する事になりました。細川 カヲルと申します。初めてのことだらけの不束者ですが、どうぞよろしくお願いします。

 とまぁ挨拶はこのぐらいにして本題に入りましょう。早速届いた第1弾。こちらの情報不足で届くとしてももう少し後、てかそもそも当選すらいてないのでは? と疑心暗鬼気味だったもので年内に告知メールが来た時には大層驚きました。何はともあれ発売日前の本が手元にあろというまたとない経験。その貴重さも含め、じっくり堪能させて頂きました。それにきちんと返礼するのが定め。というわけでレビュー1発目に参りましょう。今月の新刊『勇者殺しの花嫁』のレビューです。

証拠写真です。マジなのですよ。

あらすじ

 人類よりも強く、それでいて敵対していた魔族。それらを束ねる魔王が勇者の手によって殺された。しかし事はそれで終わりとはならないのが世の常。勇者は神託により異端と判断された。どんな令嬢を差し向けて国側につかせようとしてもどの計画も頓挫。そんな訳で"神々の花嫁シスター"もとい異端審問官のアリシアにお鉢が回ってきた。

 例外中の例外としか言いようがない任務。表舞台では教会の権力者が暗殺される最中、曖昧な情報源を頼りに彼女は勇者に接触する。しかし、とある事実が彼女を待ち構える。暗殺のターゲットであり男とされていた勇者エルシオンは女の子だったのだ。

レビュータイム

その① ダークというよりややビター?

 それでは本格的にレビューを行って参りましょう。とはいってもレビュー自体ちゃんとやったことが無いのでいつもよりも気を引き締めていきます。

 まずは物語のジャンルについて少々。頂いた本の帯、あらすじが書いてあるところの真下辺りには「本格バトルも満載のダークファンタジー!」という宣伝文句が掲載されている。華やかなイラストが背景となっている中、ここだけ飾り気が無かったので一瞬でもかなり目を惹いた。そういうこともあってか、読んでいるときにはこの言葉が頭の隅に残り続けていた。

 実際に読んでみてその書き方に間違いないことは確認済みだ。そもそも物語を売り込むプロが見当違いの宣伝をしないだろうと言われると何とも言えないが。だが、私はこの作品はダークであると共にビターという文言も似合うのではないかと感じたのだ。

 例えば序盤でいうなればこの作品における"神々"の定義や、人物紹介における勇者の説明に「冒険者」ではなく「傭兵」という単語を使用しているところ。他にも挙げるとキリがない。全体を俯瞰すると歴史の授業で過去の国の後ろめたい行為について学んでいるときと似たような感情を抱いてしまう。特に後者においては意外な言い回しだなと思いつつ敢えて王道で明るいものよりも後ろ暗さを感じさせる「傭兵」を使用しているのかなという考えが浮かんだ。

 足元の影の取り分け暗い所、食べ物ならば焦げた所を1つの味として楽しむ。だからこそビターが似合うのではないかと感じた。

その② 物理で殴るとスカッとする?

 言いたいことは分かった。でもそれってただ単に胸糞悪い話じゃないの? もしそれだけだったらここまではっきりとこんなことは書きません。楽しめる苦味に調整されているからこそこの部分を押し出しているのです。続いてはその方向から見ていきましょう・

 戦闘シーンに関してはさっき引用したキャッチコピーでも触れられている。では具体的にはどういった戦闘が主立っているのだろうか? 一口に戦闘といっても格闘技やら異能バトル、果ては頭脳戦が当てはまる事も大いにあり得る。と回りくどくなってしまったが本作では剣と魔法がメインのファンタジー式の戦闘が繰り広げられている。

 ここで注目するのがどちらに比重が置かれているかだ。魔術の存在は様々な場面で使用されているが、こと戦闘においては肉弾戦に重きが置かれている。本作の主人公であるアリシアは様々な魔術の使い手(申し訳ありません。もっと色んな分類があるのですが、便宜上一纏めにしています)なのだがいざ戦闘になると自身の体を強化したり常に持っている経典を物理的に武器にしたりとかなりアグレッシブだ。

 こうした直接的な戦闘が目立つからこそ、暗い世界観でもどことなく爽快感を味わえるのではないのだろうか。ほら、破壊セラピーの理論で。

その③ ただの1人称視点、だけじゃない

 レビューということで文章の表現技法関係の話も少ししておこう。本作はアリシア視点の1人称視点なのだが、あまり普通の表現方法とは言い難いのだ。理由は台詞の改行の有無にある。文章作法として台詞を入れるときは改行することがセオリーだが、たまに文章の直後に鍵括弧は挿入される時もある。これが1人称のモノローグといい具合に噛み合うことによってより深く感情移入することができる。

 それに加え、アリシアの世界に対するスタンスも重要となってくる。上司の無茶ぶり等々には反発心を持つし時たま言動に出ている。そういうこともあるから、読んでいて息が詰まらなかったのだろうか。

さいごに

 ダークという名に偽りなし。だけどもただ胸糞が悪いわけではなくスッキリするポイントが設置されているから"楽しめる"暗さに調整されている。この丁度良い加減がこの本の魅力かもしれない。どうやら続刊も決定しているようなので、この世界観が今後どのように広がっていくのか興味が湧いた。

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