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HJ文庫レビュー 『バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略』

はじめに

 お待たせいたしました。今月のレビューPart2となります。今回レビューする作品は『バグスキル【開錠アンロック】で最強最速ダンジョン攻略』です。そういえばダンジョン攻略系もちょっと特殊なスキルがタイトルに入るほどの主題となってる作品もここ最近かなり目にします。新刊とか人気作を調べてたりする時に。でも私にとっては不思議なことに有名作品を含めて実際に読んだ作品はほとんど無いという。おかしいな、別に食わず嫌いをしているつもりはないはずなのに……。

 今回はそんな普段読まないタイプのジャンル×2という少々特殊な立場でのレビューとなります。新しい視点で書けたらいいなぁ~と思います。では行ってみましょう。


あらすじ

 かつて神が人の試練の為に創ったという5つのダンジョン───五大迷宮エレメント・ダンジョン。迷宮に挑む冒険者達はギルドを作り、仲間を集っていた。

 新たに冒険者となった少年・ロッド。彼は憧れでもある最大規模のギルドの門戸を叩くが、かつての賑わいは今や昔。前ギルドマスターの娘レイナが店仕舞をしようとしていた。

 憧れのギルドを復活させるために何とかして奔走するロッド。しかし彼は初心者、しかも使えるスキルは『1日に1度宝箱の鍵を開けることができる』という【開錠アンロック】。そう上手くいくはずもなくついには罠にかかって迷宮の最下層へ。

 そこでロッドは迷宮を作ったという神・ラヴィと出会う。彼女から知らされる迷宮と神々の真実と訪れる危機。その最後にラヴィはロッドに自らの力と望みを託した。そうして神の力と【開錠】を組み合わせた前代未聞の迷宮攻略が幕を開けるのであった。

レビュータイム

レビュー① いきなり神話が失礼します

 それではレビューの方に参りましょう。まずは大まかな世界観についてです。ファンタジーである作品、はたまたそうではない作品でその世界独自の神話が存在することはよくある事だと思われます。大体こういう世界ですよ~というのを認知させたり、中には物語の根幹としてガンガンに主人公達と絡んでくることもあります。前者か後者かは物語の進展次第で変化する場合もありますが、本作では最初から後者のスタイルを取ってます。

 最初は周辺の事情からストーリーを進め、やがてその範囲が神話にまで広がる作品はよく見ます。ですが本作ではかなり序盤から神々の壮大な過去が明かされるのです。そういった雰囲気の作品が好きな方には堪らないのではないのでしょうか。

レビュー② 神のお願いと個人的な目標の両立

 そんなこんなで序盤から神様が出てきて力を託されるロッド。そこからめちゃんこ規模の大きい戦いが……ではなくその力を使って迷宮を攻略していきます。ラヴィからのお願いの最終的な目標が迷宮の攻略なんで特に矛盾はしてないです。しかも5つの中でも最も難易度の高い迷宮、その最下層が目的地です。更にその過程で他の迷宮を攻略しなければいけないという長い道のりです。

 それならばただのダンジョン攻略系になるのですが、ロッドはそれに加えて憧れのギルド再建にも注力していきます。さっきのラヴィ関連のあれこれこそ成り行きで引き受けることになったのですがこちらは別。自分がやりたいからやっているのです。

 真反対な2つの目的、本作ではそれを両立しながらの迷宮攻略を行います。特にギルド再建に関しては、現在ギルドに唯一在籍しているレイナや、かつて賑やかだった様子も物語に深く絡んでいくのが特徴となります。

 神に託されたどちらも新米の冒険者には荷が重いようにも感じる目標ですが、それでも真っ直ぐに駆け抜けていくロッドの姿にご注目です。

レビュー③ この迷宮は理不尽ではない

 本作の迷宮及び世界観の設定はファンタジーというよりRPGと形容した方が腑に落ちるという感覚があります。本作で最重要となるスキルを条件を満たして選んでいくシステムがまさしくゲームだなぁとゲーム初心者ながら感じました。

 作中で決してゲームっぽいと触れられている訳ではありません。しかし、迷宮周りが自然発生したというのではなく、神にある目的があって意図的に創造されたものであるという設定なので個人的にそれを知って所々しっくり来たなという印象がありました。

 メタ演出ではなく意図的に設定された仕掛けの数々や迷宮内で手に入れたアイテムの活用方法。元からその意図があって設置したのか、はたまた創った側も想定外だったのか。そういう想像をしてみるのもまた1つの楽しみになるかもしれません。

さいごに

 壮大な冒険譚であり、1人の少年の成長の記録でもある。発想で切り抜けることもカッコいいアクションで動き回る事もある。もしかするとファンタジー系のゲームでの楽しみが沢山詰め込まれた1作なのではないかと感じました。

 ここではネタバレになる事を危惧して敢えて伏せている部分もございますので、更なる楽しみも待ち受けていることでしょう。

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