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HJ文庫レビュー 『無防備かわいいパジャマ姿の美少女と部屋で二人きり 1』

はじめに

 しばらくぶりですね。早いうちに書き上げられて少しほっとしております。ただでさえリアルが忙しすぎるものなので……。こうしたときに読む日常メインのゆったりしたお話は清涼剤になるな~と思った今日この頃。なんだ今更気づいたのかよ遅えよと思われた方もいらっしゃるでしょうが如何せん自分の思うままに本を購入しているせいで恋愛要素があるお話でもゴリゴリにバトルやつばっかりになってしまいがちで。

 いや多人数で誰とくっつくか⁈ ではなくて1対1のやり取りを積み上げていくタイプのラブコメの存在と、その数が多いことも知ってました。でもこのタイプの作品は大体アニメで見ることの方が圧倒的に多いのです。マジの純粋なラブコメラノベってあまり読んだ記憶がないんですよね、不思議。

 そんな中で読んだ『無防備かわいいパジャマ姿の美少女と部屋で二人きり』。めっっっちゃ楽しませていただきました。という訳でここからはラブコメラノベ初心者のレビュータイムとなります。

念の為の証拠写真です。

あらすじ

 特にこれといった目標が無いまま勉強だけに力を入れてきた高校生根来学道ねごろまなみち。彼はとあるミスを質に教師からある命を下される。即ち、"単位救済のための補修をサボる女子生徒の家に課題プリントを渡しに行き、解かせた状態で教師の下に提出すること"だった。

 一方件の生徒、真倉まくらこいろは夏休みを毎日パジャマでダラダラ過ごすことを決心していた。学道はそんな彼女の部屋と決意を知ってしまうどころか目標も無いまま勉強を続けてきたことを見抜かれた彼女に堕落へ誘われるのだった……。

レビュータイム

その① 部屋の中だからより濃密に

 まず読んでいて思ったのはラブコメの密度が濃いということでしょうか? 本筋のコメディも勿論たっぷりあるのですが、出会う前段階や導入もみっちり用意されていますし。どうしてこんなに濃いのでしょうと考えた時にふと気が付きました。2人が一緒に学校で過ごす時間がほとんどないことに。

 アニメで見る類似ジャンルだと最初は学校での話がメインでキャラの部屋でワチャワチャする回って相当先なような気がするのです。今回私の中の常識が無意識の内に崩されていたのです。

 言われてみればこの手の話に複数人出てくる同級生キャラも全然いなかったなと。愉快な周辺人物がいるのもまた一興ですが、この作品のように敢えて学校の様子を主軸に置かずに舞台を部屋に絞ることによって2人のやり取りをこれでもかという程に絞るのもまた興味深い手法だなと感じました。

 あとホームコメディに近い体裁でしか味わえないあれこれも沢山ありました! 特にこいろちゃんのパジャマが毎回変わるのが滅茶苦茶好きです。

その② 何気ない日常。なのに初々しい

 はてさてこうして始まった2人の濃密な堕落ライフ。これがまた愛らしいのです。剣も魔法もその他諸々のフィクション要素一切なし、現実と大差ない空間での日常もの、やっていることはゲームをしたり漫画を読んだりと読者も必ずするであろうものばかり。なのに、滅茶苦茶、面白い。

 しかしながらこれらは今まで勉強一筋で他の何にも目を向けてこなかった学道君にとっては新しい世界以外の何物でもないのです。そんな彼の初々しい様子を捉えた地の文が何とも愛らしい。

 これ書いててふと気が付いてしまったんですけどこれってもしや押し作品に新しく飛び込んでド嵌りした人の悲鳴聞いてニヤニヤしちゃうあの現象に近いのでは? 流石に違うか。

 また、ただだらけているだけではなく、今までの生活に根を詰め過ぎたというバックボーンもあってダラダラ過ごすことが良い息抜きになっていたり、適度な範囲で抑えられていたり、時には青春(?)したりちょっとしたメリハリがあるからより楽しめるのかと。

その③ 思わず確認したくなる伏線達

 さっきも最後に少し書いたようにただずっとダラダラしているだけではないのがこの作品の凄い所。日常パートにサラリと伏線が紛れ込まれているのです。とは言っても分かりやすい匂わせとかでは全然なく間違い探しの最後の1つを見つけ出すかのような、そんな感じの物が。

 ですので本編を読み進めるときは気にしすぎなくていいし、実際に回収された時はそのシーンで軽く答え合わせがなされているので該当箇所に戻って「本当にあった!」といった風に楽しめることができます。なんて伏線好きに優しいラノベなんだ! つながった時はテンション上がりました。

さいごに

 もし、この物語を最後まで読み終わったならば、もう一度タイトルを思い出してみてください。本当の意味が理解できたような気がして何かがこみあげてきます(※あくまで個人の感想です)。

 楽しいのは勿論、構造としてもよく作り込まれているように感じました。ラブコメというのはここまで奥が深かったのですね。人気のジャンルなのがよく分かったような気がしました。

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