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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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#ライト文芸

いらっしゃいませ、殺し屋の街に ~木崎 ちあき『博多豚骨ラーメンズ』を読んで~

 本を読む人ならばライトノベルに限らず人より、他の作品よりも思い入れが強いシリーズの1つや2つある事だろう。『博多豚骨ラーメンズ』は私にとってその分類に入る。まだライトノベルとライト文芸の違いも分かっていなかった頃、ライトノベルを読んでみたいと思って面白そうな作品を調べて回っていた時期があった。その時期にこの作品が丁度アニメ化でプッシュされていた。それがきっかけで最初に読み始めたシリーズの1つとなった。  ゆっくりと時間を掛けて既刊を揃え、いつしか最新刊を待つようになり、そ

本を作ってみようin江戸時代 ~ゆうき りん『大江戸恋情本繁昌記』を読んで~

 いつもの事なんだけど、やっぱり本屋さんは謎の魔力持ってると思うんだ。棚をじっくり見ていくと気になる本がいくつもいくつも出てくるし、レジに行く頃にはほぼ必ずと言っていいほど予定に無い本を数冊持ってる。最近は個人の事情もあってかなりセーブされているがそれでもやってしまうのが世の常。  最近読んだ『大江戸恋情本繁昌記』もその1冊だった。奇抜にして収まりが良いカラーリングの表紙に目を吸われるし、現代人の編集者が江戸時代で本を作るってのも面白そうだと思いまして、つい。作家がメインの

だから私はあなたの傍に ~顎木 あくみ『わたしの幸せな結婚』を読んで~

 2024年3月上旬現在シリーズ最新刊である『わたしの幸せな結婚』7巻、そこの帯には「ついに結婚!」と大々的に書かれていた。1巻から読み始め、アニメを経て追いついた身からすると、日常にもありふれているかもしれないさりげない文言のはずなのだろうが、とてつもない高揚感があった。  近いうちに続刊が出るらしいのだが、個人的には7巻で大きな区切りがついたと思ってるので、あえてこのタイミングで紹介していこうと思う。 あらすじ この国では古くから異形に対抗できる異能者が帝に重宝されて

儚くも残酷な玩具遊び ~fudaraku『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』を読んで~

 今年もこの季節がやってきました! そう、電撃大賞受賞作品のお披露目です! まだそんなにラノベ漁りをしていなかった時期から電撃大賞の受賞作品はそれなりにチェックしてたのでかなり思い入れがあったりしてます。同じ年でも方向性の違う作品が飛び交うことも多く、ラインナップを見てるだけでワクワクします。気になった作品をピックアップして購入するのも慣れたものです。本棚整理したら数年前の受賞作品(初版)がそれなりに出てきそう……。  そんな中私が今年度1発目の受賞作として手に取ったのは『

今だから描ける未来社会 ~Mika Pikazo/ARCH原作・吉上 亮/三雲 岳斗著『RE:BEL ROBOTICA』を読んで~

 創作において未来世界をそれたらしめるのは、現在の最先端技術のさらに上を行く何かが、社会全体に享受されていることではなかろうかと考えている。古びた表現かもしれないが、空飛ぶ車や家族同然のロボットなんかはその最たる例だろう。  今回取り上げる『RE:BEL ROBOTICA 』もまた近い未来を舞台としている。例に漏れず、私達からするとオーパーツのように感じる技術が一般化されている。だが、その世界に潜り込んでいると、どこか今っぽさを感じて仕方がない。 あらすじ 2050年、AR

闇鍋本格ミステリの"ミステリ"が凄い 〜青崎 有吾『アンデットガール・マーダーファルス』を読んで〜

 近年ライト文芸ではミステリ作品の刊行が目立っている。その中で活躍する探偵達はミクロな分野の知識のみを用いて活躍する。探偵像は私達が幼い頃にイメージしたものから少し遠ざかり、現実に近い世界観で物語が展開されている。『アンデットガール・マーダーファルス』もまたライト文芸レーベルから刊行されているミステリシリーズだ。しかしながら、いくつかの王道要素を踏まえながらも他作品では味わえないような独自の雰囲気を持っている。その異質さを一言で言い表すならば、3巻目の帯にて称された「闇鍋本格