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そのテスト、満点は100点ですか?

「テスト、100点だったよ!」と子どもに言われたら、「わぁ、頑張ったね!」「良かったね!」と返すのがお決まりになっているが、これ、よく考えてみると、確認していないのに満点が100点だという前提で話している。「20点しか取れなかった(´・ω・`)」と言われた時、よく聞いてみると、満点は22点であと一歩のところで満点だったということがあった。もし満点が200点のテストで100点だったなら、50%の得点だということだ。だから、テストは点数だけでは正確な結果がわからない。

でも、ほとんどの人は、テストは満点が100点であるという前提で考えていることが多くないか? なぜ、100点がこんなに「当たり前」になってしまったのだろう?

ネットで検索してみると、採点しやすい、%換算しやすい、計算しやすい、わかりやすい…など、採点側の都合なのではと思うことがたくさん出てきた。たしかに採点は大変な作業だ。計算ミスは許されない。でも、今の時代、パソコンを使えばより簡単にできるはずだ。では、どうして?

答えは世田谷区長の保坂展人さんのブログにもあった。

評価方法が、加点法ではなく、減点法だからというのである。

前々々回のオリンピックのことが書いてあるのでついでに言うと、スポーツの世界でも、例えばフィギュアスケートのような芸術競技の採点は以前は減点方式だった。満点が6.0。無名の選手だと頑張っても4点台。優勝候補が6.0とれるかとれないか、有望選手が5点台で争っていた。素人には採点基準が全然わからない世界。それが、ある時加点方式に変わった。このジャンプができたら何点、完成度が高ければさらに何点…というように。そのおかげか、4回転ジャンプが1回でも飛べればすごかった時代から、何種類もの4回転ジャンプを5回も飛ぶ選手が複数出るという時代にあっという間になった。上限を決めないことで、各選手が強みを生かして能力を伸ばせるシステムになったのだ。(細かいことを言えば問題点はあるのだが)

学校でも、体育では限界を決めず能力を発揮することができる。例えば、走ること。どんなに速く走ってもちゃんと記録してもらえるし、ほめられる。でも、勉強の面はどうだろう? 習っていない漢字を書いたら叱られる、習っていないやりかたで算数の問題を解くとバツにされる、などということを時々聞く。各学年で想定された能力以上は伸ばせないようになっていないか? もちろん、基礎は大事で、基礎をおろそかにして先に進んでしまうと、行き詰まった時に基礎まで戻るという遠回りをすることになる心配があるのはわからなくもない。ただ、本人にとってその遠回りが悪いことなのかどうかは一概に言えない。

こんな記事もある。「日本人の弱点が際立つ『100点満点のテスト』という大問題」。「減点方式」が自己肯定感が低い要因の1つではないかというもの。

自己肯定感はさておき、減点方式のテストと加点方式のテストでは対策の仕方(勉強の仕方)が違ってくる。減点方式では、苦手なところをどれだけ得点できるかという対策をする。加点方式では、得意なところをどれだけブラッシュアップできるかという対策をすることで、点数を伸ばすことができるのだ。

減点方式のテストの配点はたぶんこうだ。100点満点のテストだと、もし設問がちょうど50問あったら、1問あたり2点の配点とする。もし、49問しかなかったら? その中で難しそうな設問の配点を高くするだろう。51問あったら? どれか1問削る? それとも、どれか2問だけ1点の配点とするか? いや、ちょっと待って。受験する側からすると、配点1点の問題と配点2点の問題の差は2倍だ。難易度は本当はもっと細かく違うはず。これでは、正確に理解度が測れるテストは作れない。

テスト問題は、試験範囲の内容がどれだけ理解できているのかが正しく測れる内容にしてほしい。だから、配点は難易度に応じて設定してほしい。100点満点でなくていい。予想以上の素晴らしい答えが出たら加点できるように。頑張って解答したけれど一部が間違っていた場合にその割合に応じて部分点がもらえるように。そして、最低どのくらい得点できたらいいのかという目安を受験前に示してほしい。学校では、平均点だけが示され、そのテストが簡単だったか難しかったかを判断するのが普通になっているが、この平均点というのも曲者だ。得点が正規分布するという前提だと機能するのだが、必ずしも正規分布にはならないのだ。テスト作成者も、想定得点と大幅に違った場合はテストの作成方法あるいは授業の仕方を見直し改善するのに使ってほしい。

最近の民間の英語試験は、合否だけでなく、前回と比較できるスコアや国際標準規格CEFRに対応した目安を示してくれるようになっている。例えば、英検は英検CSEスコアと英検バンドというものがあり、不合格でもあとどのくらいで合格に届くのか、合格であっても次の受験級に挑戦できるかどうかの目安が数値でわかるようになっている。外国語の能力はそれこそ減点方式では測れず、ここまでできれば十分だというものでもない。他の教科についても、国際的な流れに従って、加点方式に変えていく必要があるのではないか。

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