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#7 波瀾万丈…西日本緊急周遊記

#6 のつづき

ご無沙汰しております。

最近バタバタしており、更新が止まってしまっていました。
あの突然始まった貧乏一人旅からもうすぐで3カ月経とうとしていて記憶があやふやになってしまったかもと心配しましたが、よほど刺激的だったからか意外と覚えていました。

今回から大阪編が始まります。よろしくお願いいたします。


\\筆者プロフィール//
男子大学生。映像制作やドキュメンタリー取材を行っている。2022年の春休み、取材をするはずが、いろいろあって1週間ほどの「西日本無計画貧乏一人旅」をすることになった。

\\前回までのあらすじ//
2月21日:ドキュメンタリー映画の取材のため、一人、東京から取材対象者(知人)の住む愛知県に向かう。取材対象者の自宅に宿泊。
2月22日夜:とあることから取材対象者とトラブルになり、滞在先の彼の自宅を追い出される。終電もなく近くにネットカフェなどもなかったので、深夜のコインランドリーで一泊する。(一人旅の始まり)
2月23日:朝、利用客から「不審人物がいる」と警察に通報が入り、警察官2名に起こされる。コインランドリーを後にし、春日井に向かう。春日井の図書館で時間をつぶし、夜はネットカフェで一泊。
2月24日:取材中止のショックで多少病んでおり、東京に帰るのも嫌だったので愛知県内を観光する。「何にもない街 名古屋」で唯一の名物である味噌カツを食べる。ノリで大阪へ向かうも思ったより遠すぎて夜になってしまう。(今ここ)


突然声をかけてきた西成の兄ちゃん(Day2 夜)

夜19時、大阪・天王寺。
私は充電が1%しかないスマホでGoogleマップを開き、安宿が多いと聞く西成への方角を調べた。

「あべのハルカスがこっちだから、西成はこっちか?」
迷いながらも30分ほど歩くと、人通りも少なくなり、「スーパー玉出」の光るネオンが目の前に現れた。あたりの建物がボロくて薄暗いので余計に目立つ。

「そういえば夕飯まだだったなあ…お腹空いたなあ」
そんなことを思いながらGoogleマップを見ていたら、ついに充電が切れて画面が真っ暗になってしまった。

夜の西成の街に現れた「スーパー玉出」
まるでパチンコ屋のようだった

大通りから一歩入ると、銭湯や激安のホテルが乱立していた。一泊1000円台は当たり前で、2000円と書いてあると高く感じてしまう。ネットに最安値は1泊300円とか500円とか書いてあったが、その宿は見つけることができなかった。ある一軒のホテルの前で料金表を眺めていたら
「お兄さん、泊まるとこ探してるんすか?俺、良いとこ知ってますよ」
と声をかけられた。振り返ると無精ひげを生やした20代後半くらいの兄ちゃんがニコニコこっちを見ていた。当然のようにマスクはしていなかった。

西成は「日本一のスラム街」と呼ばれるドヤ街で日雇い労働者が多く暮らしている一方、家出人や訳ありな人の逃げ場にもなっている。物価が安い分、治安も悪い。おそらく、今から思えば関西弁ではなかったこの兄ちゃんもどこかから来た日雇い労働者なのだろう。
私は幼い頃、「知らない人について行ってはいけません」と教わったことを思い出した。しかし、同時にスマホの充電がないことも思い出した。誘拐されて臓器売買とかされる可能性だって捨てきれないな…。いやあ、でも行く当てもないし…。私は迷った末にこの兄ちゃんに賭けてみることにした。

「え、いいんですか?いくらくらいですか?」
「大体1500円とかそれくらいで、俺1カ月泊ってたんすけど、めっちゃ良いっすよ」
「へえ~、1カ月も!」
「お兄さんは遊びに来た感じすか?」
「いや、遊びってわけもないんですけど、あ、別に家出とかでもないですよ!」
「あー、まあまあ全然良いんすけど」
無精ひげの兄ちゃんは、仮に私が家出人でもさほど気にしない様子だった。

数分歩くと、兄ちゃんは「ホテル東洋」という建物の前で止まった。
「なんか、今日泊まるところ探してるみたいで、さっき声かけて連れてきました~」
兄ちゃんが建物の前でタバコを吸っていた従業員の兄ちゃん(のちにわかったことだが、今日は非番だった)に私のことを紹介してくれた。私は兄ちゃんに礼を言うと、建物に入った(ただの親切な兄ちゃんだった)。なんかのサイトで予約すると割引になると言うので、私はフロントに頼み込んでロビーでスマホを充電させてもらい、割引を済ませると、チェックインをした。

1泊1530円、部屋は狭くエアコンはないが、布団は清潔でテレビもあり、共用だが部屋の外にはトイレもシャワー室もコインランドリーもウォーターサーバーも電子レンジもある。なんて素敵なホテルなんだろう!と思って、自分の感覚が早くも麻痺してしまったことに気づいた。

ホテル東洋の外観
1泊1530円の部屋。クーラーが付くともう少し高くなる。

私は、食事を摂るついでに、夜の西成の街に繰り出した。

「日本最後の遊郭」飛田新地(Day2 夜)

読者の皆様は西成にある「飛田新地」をご存知だろうか?「日本最後の遊郭」と呼ばれる風俗店街である。各店舗は一応料亭扱いで「客が仲居のおばさんの仲介で従業員の女性と恋に落ち、自由恋愛に基づいて性行為を行って、すぐにその関係は解消される」という建前になっているが、現実はそうではないことは警察や役所だって知っている。摘発されていつ消えてもおかしくない、昔ながらの遊郭なのである。

私は金がないので遊郭で遊ぼうとは微塵も考えていなかったが、せっかくなので冷やかし程度に店の前を散歩してみることにした。ソープランド等の東京にある一般の風俗店と異なるのは、店内の照明で照らされた女性が通りから見えるように座っていて、その横でおばさんがしつこく客引きの誘い文句を謡っているところだ。そんなお店がこの飛田新地には150店舗ほど存在する。

「あとちょっとで閉まったんで、ほらそこのお兄さん、そんなとこで迷ってたってしゃあないんやから、ほら、ラストチャンスやで」
そんな誘い文句に釣られて、私の目の前で男性が店の奥へと消えていった。旅行記なので、女性の外見を品定めするなどの品のないことは避けるが、中心部には美形の女性が多く、外側には外国系や高齢の女性が多い、そんな配置になっている印象だった。

そんな遊郭もコロナの影響で20時にはきっぱり閉店し(守らないと摘発されるからだろう)、あたりは真っ暗になった。飛田新地は女性のプライバシーを保護するため、街全体で撮影禁止となっているが、全ての店でシャッターが閉まったので、街の外観だけ撮影し、飛田新地を後にした。

「日本最後の遊郭」飛田新地の閉店後の様子

西成の店は意外にも、20時閉店の要請に従順で、商店街の店はどこもやっていなかった。唯一空いていた通り沿いの中華料理屋「雲隆」で台湾ラーメンセット(734円)を食べると、ホテルに帰り、シャワーも浴びずに布団に入った。

台湾ラーメン(辛口)セットには炒飯もついてきた

一昨昨日は取材対象者の家で寝袋、一昨日はコインランドリーで寝袋、昨日はネットカフェだったので、4日ぶりの布団である。私はすぐに深い眠りに落ちた。

#8 につづく

【2月24日 木曜日】
・行程:快活クラブ春日井インター店- JR春日井駅-(取材対象者の両親に挨拶、県内観光、詳細は中略)-JR春日井駅-(JR中央本線)-JR・地下鉄鶴舞駅-(地下鉄鶴舞線、桜通線、名城線)-地下鉄栄駅-(徒歩)-近鉄名古屋駅-(近鉄線)-近鉄・JR鶴橋駅-(JR大阪環状線)-JR天王寺駅-(徒歩)-ホテル東洋


・出費:昼食味噌カツ(1600円)、夕食町中華(734円)=食費計2334円
ネットカフェ代(2288円)、土産代(1000円)、交通費総額(4340円)、宿泊費2泊分(3060円)+食費=合計10688円

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