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そこから見えてくるのは、中国の本音だ。疑念でとどまっていれば、それでいいということなのだろう。この世界的な重大事に際しても「ごまかし」で押し通そうというのだ。なんとも恐ろしい国である。そして世界はいま、この恐ろしい国といかに向き合うべきかという問題に直面している。

「消された論文」とは、広東省広州市にある華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(Botao Xiao、シャオ・ボタオ)教授ら生物学に通じる研究者が執筆したもの
2020年06月12日
私が言及している月刊誌は日本人のみならず世界中の人たちが必読である。
何しろ本稿の様な本物の記事が満載されているにもかかわらず、たったの950円なのだから。
以下は、ウィルス発生源 傍証によって中国は追い詰められつつある、と題して月刊誌WiLL今月号に掲載されている、時任兼作氏の論文からである。
この論文は日本のメディア、特にテレビ放送局が全く報道機関の体を成していない事と、彼らが完全に中国の影響下=支配下にあることを明瞭に示している。
見出し以外の文中強調は私。
トランプ政権が進める「武漢ウイルス研究所」の調査。
再評価された「消されたコロナ論文」を全文掲載!
2つの傍証 
新型コロナウイルスの「発生源」をめぐっての米中対立はいまだ解消されていない。
それどころかヒートアップしている。 
トランプ米大統領は4月15日、新型コロナウイルスの「発生源」が中国湖北省武漢市にある「中国科学院・武漢ウイルス研究所」であったとして同研究所について調査していることを明らかにした。 
中国の「生物兵器説」こそ否定したものの、安全管理上の不備からウイルスが流出したとみているとの見方を示したのである。
同月30日には、その証拠を「見た」と断言した。 
一方、中国は明確に否定。
同月16日、中国外務省の趙立堅報道官はこう述べて反論した。 
「世界保健機関(WHO)の事務局長も、ウイルスが研究所でつくられたことを示す証拠はないと繰り返し発表していることを、念のため申し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出したという説は科学的根拠に乏しいと考えている」          
双方の主張は真っ向からぶつかり合っているわけだが、実は証拠を「見た」というトランプ大統領は、その詳細について「話すことはできない」と言うばかりだ。
にもかかわらず、これほど強気であるのはなぜなのか。
米中の事情に通じる外事関係者は、こう語る。 
「それなりの証拠があるのは事実のようだ。第1には、米国務省の調査結果。2018年に実は外交官の肩書を持ったCIAの科学専門官が『武漢ウイルス研究所』を何度も視察し、その管理体制の問題点等について警告する外交公電を送っていた。次が中国政府によって消されたとされる論文。同研究所について記したものだ。消されてしばらくしたのち、執筆者自身が撤回したとのメールを米紙ウォールーストリート・ジヤーナルに送ったとされるが、これも中国政府の意図が働いたうえでのこととみられている」 
米国務省の調査結果については、米紙ワシントン・ポストが外交公電をもとに報じている。
それによると「武漢ウイルス研究所」に派遣された科学専門の外交官が、研究所の安全性に問題があるという警告を2度送っており、その中には、研究所の所員らが安全性を危惧していることなどが記されていたという。
消された論文 
「消された論文」とは、広東省広州市にある華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(Botao Xiao、シャオ・ボタオ)教授ら生物学に通じる研究者が執筆したもので、2月6日に研究者向けサイト「ReseachGate」に投稿された。
だが、この論文はその後、ほどなくして削除され、肖教授らも消息を絶ってしまった。 
外事関係者は、これについて過日、こう語っていた。「論文には、遺伝子レベルで新しいウイルスが開発されていたことを示唆する記述などがあった。中国政府にとっては、とうてい看過できないものだ。場合によっては、国民の暴動などにつながりかねないし、国際的な非難も相当なものになるとみたからだ。論文の削除には中国政府がかかわっている可能性がある。肖教授らも、身柄を拘束されたとみられている」 
中国政府は論文を抹消するばかりか、研究者らの囗をも封じたとみられると分析したわけだが、先の証言と合わせると、必要に応じては偽りのコメントまで出させるほどの強硬策に出ている可能性がある。 
米国はこうした状況を踏まえ、論文を再評価したとされる。
それほどまでして中国政府が隠滅しようとするならば、というわけである。
かくして論文は、いまふたたび注目されつつある。 
そこで今回、「消された論文」である「The possible origins of 2019-nCoVcoronavirus」(新型コロナウイルスの考えうる発生源)の日本語訳全文を掲載しておく(読みやすいよう一部に改行を加え、図表や参考文献を示す番号は省略している。括弧内の表記傍線・太字、小見出しは編集部)。

新型コロナウイルスの考えうる発生源
「海鮮市場発生説」への疑念 
新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。
2020年2月6日までに564人の死者を含め、28,060人が感染したことが検査で確認されている。 
今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来のZC45型コロナウイルスと一致したという。研究では、病原体はどこから来たのか、そして、それがどのようにしてヒトに伝染したのかを究明することが重要視された。 
(世界的な医学誌)『ランセット』の記事では、武漢の41人の人々が重症急性呼吸器症候群に罹っており、このうち27人が華南海鮮市場を訪れていたと報じられている。 
伝染病発生後に市場で採集された585のサンプルのうち、33から新型コロナウイルスが検出され、伝染病の発生源ではないかとみられた市場は、伝染病が流行している間、発生源隔離の規則に従って閉鎖された。 
ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900km以上離れている。 
(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息しているものだ。 
だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢の住宅密集地区にある。
コウモリが市場まで飛んでくる可能性も非常に低い。
自治体の報告と31人の住民および28人の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、市場で取引されてもいなかったという。 
コロナウイルスの遺伝子が自然に組み換えられたか、あるいは中間で介在した宿主があった可能性があるが、確たることはこれまでほとんど報告されていない。

海鮮市場近くでコウモリの研究 
ほかに考えられる感染経路はあるのだろうか。
私たちは海鮮市場の周辺をスクリーニングした結果、コウモリコロナウイルスの研究を行っている二つの研究所を特定した。
市場から280メートル以内に、武漢疾病管理予防センター(WHCDC)があった。
WHCDCは研究の目的で所内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの一つは病原体の収集と識別に特化したものであった。 
ある研究では、湖北省で中型コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、またほかの450匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。
収集の専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。 
さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが、2017年と2019年に全国的な新聞やウェブサイトなどで報じられている。 
そのなかでこの専門家は、かつてコウモリに襲われ、コウモリの血が皮膚についたと述べていた。
感染の危険性が著しく高いことを知っていた専門家は、自ら14日間の隔離措置を取った。
コウモリの尿を被った別の事故の際にも同じように隔離措置を講じたという。
ダニが寄生しているコウモリの捕獲で脅威にさらされたことがかつてあった、とも述べていた。 
(こうして)捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよびRNAの抽出とジーゲンジンク(塩基配列の解明)のために採取されたという。
組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供給源だった。
これらは、海鮮市場からわずか280mほどのところに存在したのである。 
またWHCDCは、今回の伝染病流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン病院に隣接してもいた。
確かなことは今後の研究を待つ必要があるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染したとしてもおかしくない。

SARS研究者の声 
もうひとつの研究所は、海鮮市場から約12km離れたところにある中国科学院・武漢ウイルス研究所だ。 
この研究所は、中国のキクガシラコウモリが2002年から2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。 
SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウイルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒ卜に伝染する可能性について報告している。 
憶測ではあるが、はっきりと言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から漏れたかもしれないということだ。 
要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたのである。
武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコロナウイルスの発生源でもあったのだ。 
バイオハザード(生物災害)の危険性の高い研究所においては、安全レベルを強化する必要があるだろう。
これらの研究所を市内中心部やそのほかの住宅密集地域から遠く離れた場所に移転するような規制が必要ではなかろうか。

疑念でとどめたい中国 
トランプ大統領の「証拠発言」の翌日である5月1日、「武漢ウイルス研究所」の石正麗主任研究員が研究にかかわる秘密文書を携えて、在仏米国大使館に亡命を申請したとの情報が流れた。
だが、翌2日には、石研究員自身が友人に連絡を入れ、亡命を否定したという。 
前出の外事関係者が語る。 
「論文の撤回について執筆者が米紙宛てに入れたメールを想起させるような事案だ。同じように研究員も中国の強い影響下にあるのではないかとみられる」 
中国の情報工作を疑っているわけである。 
ポンペオ米国務長官は同月3日、トランプ大統領と同様に「数々の証拠がある」と発言したうえで、「武漢ウイルス研究所」に対する国際的な調査チームを入れようとしたものの、中国に拒否されたことも明らかにした。 
さらに5月11日、米紙ニューヨーク・タイムズが新型コロナウイルスのワクチンに関する情報を中国のハッカ―やスパイが狙っているとして、FBIなどが警報を発する方針だと報じた。
警報の文書には、「(中国が)データを不正な手段で入手しようとしている」と記されていたというが、中国はこの件についてもすぐに否定した。 
どこまでもぶつかり合う両国だが「武漢ウイルス研究所」への疑念は米外交官による調査や中国人教授らによる論文、さらには中国政府白身の対応によって高まる一方だ。こうした「傍証」によって中国は追い詰められつつある。 
しかし、疑念を解消するために不可欠な第三者による調査・検証に応じる気配はない。
反論こそすれ、それ以上踏み込もうとはしない。 
そこから見えてくるのは、中国の本音だ。
疑念でとどまっていれば、それでいいということなのだろう。
この世界的な重大事に際しても「ごまかし」で押し通そうというのだ。
なんとも恐ろしい国である。 
そして世界はいま、この恐ろしい国といかに向き合うべきかという問題に直面している。

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