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コロナ禍に関する防疫問題で、相手国に言いがかりのような反発をした例は、世界中をみても先進国にも途上国にもなかった。

コロナ禍に関する防疫問題で、相手国に言いがかりのような反発をした例は、世界中をみても先進国にも途上国にもなかった。
2020年04月09日
以下は月刊誌正論に、コロナ禍にあっても反日に徹する文政権、と題して掲載された、久保田るり子の論文からである。
彼女も現役最高の記者の一人である。
見出し以外の文中強調と*~*は私。
4月15日、韓国では総選挙が実施される予定だ。
韓国の内閣責任制は一院制で国会の解散はなく、国会議員は定数300人、選挙は4年に1度である。
大統領制なので与党が敗北しても文在寅政権は2022年まで続くが、与党が負ければ次期政権誕生プロセスに大きな影響が及ぶことになる。
コロナ禍で一部に投票日延期論が出ているが、いずれにしても争点は文大統領のリーダーシップの是非だ。
コロナ有事で露呈した文政権の反日執着と親中偏向を検証してみる。
「日本は非科学的、非合理的」 
新型コロナウイルス禍はいま各国リーダーの力量を試している。 
「私は戦時下の大統領」と官言したのはトランプ米大統領、
「我々は戦争状態にある」と国民に呼びかけたのはマクロン仏大統領、
「第二次大戦以来の試練」と歴史観で語ったのはメルケル独首相だ。
ところがこの非常時に、「親中反日」という政局を持ち込んだのが韓国の文在寅大統領だった。 
3月初旬、安倍晋三政権は、目本の爆発感染を防ぐため中韓両国に入国制限をかけた。
韓国政府は激しく反発して感情を露わにした。
丁世均首相や康京和外相は日本の措置を「不当で遺憾だ」「即刻、撤回を求める」と述べ、日本の防疫体制を「不透明で消極的。憂慮を持って見守っている」などと批判し、入国制限をかける日本は「非友好的なだけでなく非合理的で非科学的」などと不躾な非難を繰り返したのだ。 
このとき各国は防疫措置を次々に強化していた。
欧米はすでに特定国からの入国禁止や国境の封鎖を始めていた。
日本政府の中韓両国への入国制限は、むしろ遅すぎた措置だったといえた。
日本の決定は世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス拡散を「パンデミック」(世界流行)に指定する6日前だった。 
そもそも防疫とは、国の専権事項である。
国益の最優先課題であり手遅れになれば全国民の生命にかかわってくる。
外交とは別物で「協議の対象」という範疇ではない。
実際に韓国を入国禁止とした各国は、協議ではなく通告を行っただけである。 
しかし、韓国政府はそうは考えなかった。
「事前通告がなかった」「協議をしなかった」「背景に何かある」と主張して非難を強めた。
コロナ禍に関する防疫問題で、相手国に言いがかりのような反発をした例は、世界中をみても先進国にも途上国にもなかった。 
日本政府は3月5日、首相官邸で開催した国家安全保障会議(NSC)の緊急閣僚会議でこの措置を決定した。
中国・韓国に発給済の査証(ビザ)の効力停止、韓国・香港・マカオへのビザ免除措置の停止、中韓からの入国者全員の14日間隔離要請といった内容だ。
会議開催前に、日本外務省は中韓両国の在京大使館のカウンターパートに、日本の両国に対する水際対策が決定することや、その内容の概要も伝えている。
そして決定後に正式な通告を行った。
これを受けた中国政府は、「日本の入国制限を理解する」として、全く問題視していない。 
この件で韓国政府は、当日に反発しただけでは収まらず、大統領府(青瓦台)と外務省が、事後にそれぞれ公式文書を出してまで日本に噛みついた。
最初は青瓦台が、ホームページ上に異例の「書面ブリーフィング」という言い訳がましい文書を掲載した(3月8日付)
文書は、政府が日本に猛反発したことについて、韓国国内で「日本にだけ防疫で強硬姿勢をみせるのはおかしい」との批判が出たことへの反論だった。
①日本はコロナ検査件数が少なく、感染状況が不透明で死亡率が高い(だから、韓国に強く出るのはおかしい)
②日本の措置は過剰な措置。そのうえただの一言も事前の打ち合わせがなかった(事実が異なる。日本は事前説明を行っていた)
③我が国は日本にも中国にも同じ措置を取っている、日本にだけ強硬なわけではない(これは韓国への特別入国手続きを指す)-などだった。 
「反日的対応」をメディアから批判された韓国政府は青瓦台の文書だけでは収まらなかった。
10日後の3月15日、今度は韓国外務省が「立場文」と称する、当日のいきさつを記した文書を韓国メディアに配布した。
内容は、「我が国は何度も事前通告を求めたのに、日本外務省は説明せず、仁義にもとる」といったもので、韓国政府は日本外務省に午前に何回、午後に何回、何時何分に連絡した、などと時系列で「日本は事前通告をしなかった」と主張し、政府の抗議の正当性を訴えた。
一国の政府対応としては際立って神経質で、しかも執拗な自己弁明だった。 
入国制限が「非常に不適切でその背景に疑問を持たないわけにはいかない」とは一体、何のことを言っているのか。
疑問というのは、どうやら、「安倍政権加人気取りのために韓国に強硬に出たのではないか」という推測のようだった。
だが、これは邪推というべきだろう。*彼らの論説が朝日新聞の論説だったと言われても誰も怪訝には思わないだろう*
康京和外相が発言したころの韓国の感染者数は、6000人を超えていた。
韓国は世界102国・地域から入国制限をかけられており「コリア・フォビア(恐怖症)」と呼ばれていた。
韓国国内では経済も急速に委縮し、政府に対して「なぜ、韓国だけがこんなみじめな思いをさせられるのか」との風当たりが強まっていた。 
「コリア・フォビア」を韓国国会で追及された康外相は、「入国制限をかけているのは防疫体制の整っていない途上国が多い」と弁明したが、日本の措置が出る直前、オーストラリアからの入国制限措置も受けていた。
もう、言い訳は通用せず、政府はむき出しの反日で世論の矛先をかわそうとした。
実は、日本の事前通知の前に、韓国政府は日本の水際対策の素案ペーパーを入手していた。
しかし、素案はあくまでも素案だった。
閣僚会議では内容が修正され、より強い対策を打つことになった。
韓国にとって想定外の措置が含まれていたようだ。 
日本がこの時期に水際対策を強化するにあたって、より意識されていたのは中国だった。
コロナ禍の震源地、中国への入国規制は懸案であった。
2月末、中国の外交政策のトップ、楊潔旒・共産党政治局員が来日し、習近平国家主席の国賓来日問題に関する調整が行われた。
この時点で国賓来日の延期が決まった。
これを受けて日本は中国への入国規制問題が取りやすくなっていたからだ。
この稿続く。
「中国は運命共同体」 
トランプ大統領のリーダーシップの決断は最も早く、わかりやすかった。
中国人の入国禁止(2月2日)、航空路線のほぼ全便の運休(同)、欧州26か国からの渡航停止(3月11日)、国家非常事態宣言(3月14日)、米国人への海外渡航中止勧告(3月19日)などだ。
「国民を伝染病から守る」ことは戦争同様の有事である、との考え方は欧米では当たり前だ。 
しかし、韓国政府はそうは考えない。
文大統領のリーダーシップは「防疫より中国」なのだ。
2019年12月24日、中国・北京で行われた中韓首脳会談で、文大統領は「韓中は悠久の交流の歴史を持つ運命共同体だ」と述べていた。
コロナ禍で韓国は「14日以内の湖北省訪問者に限った入国禁止措置」を取ったが、文氏は青瓦台の幹部会議で、「中国の困難はすなわち、我々の困難だ。隣国としてできる支援や協力を惜しんではならない」と習近平国家主席に語り掛けるようなメッセージを送っている。 
韓国で初めて感染者がみつかったのは1月19日、疾病管理本部が空港で第1号の中国人感染者を発見、隔離したところから始まった。
中韓を結ぶ空路は40路線以上で毎日2万人以上が中国から韓国に入国している。
中国が武漢を遮断(1月23日)したあと、韓国もチャーター機で武漢滞在の韓国人を帰国させた。
だが文政権の親中ぶりは初期から迷走し、中国への過度な配慮から右往左往の連続だった。
韓国国民は早期から中国人の全面入国禁止を求めていた。
1月23日、青瓦台(大統領府)ホームページの「国民請願掲示板」に、一般市民から「中国人の全面的な入国禁止」を求める請願が出され、3日目に20万人、これまでに約78万人の賛同が集まった。
請願者の一人は「新型肺炎事態における文大統領の対処をみればみるほど、大韓民国の大統領ではない中国の大統領を見るようだ」と書き込んだ。
メディアも「民心離反を呼ぶ韓国政府の新型肺炎対応自滅策」(中央日報コラム)など、連日にわたって強烈に批判した。 
韓国は「湖北省からの入国禁止」措置と同時に、国民の中国全土への旅行禁止を意味する旅行警報を「自制」から「撤収」に引き上げた。ところが約4時間後に「撤収」を「検討」に突然、格下げしたのだ。この撤回は、中国から抗議圧力があったとみられている。
最初の「撤収」発表で、韓国旅行業界では中国行きの多数のキャンセルを出していた。
それがわずか数時間で変更され、旅行業界は大混乱に陥った。駐韓中国大使は、文政権の湖北省からの入国禁止措置に「あまり評価しない。(制限は不要という)世界保健機関の根拠に従えばいいのではないか」と憮然とした態度をみせていた。
そもそも習近平体制は、文政権の誕生以降に常に高圧的な対応をとってきた。
2017年には、賍韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に原則的に応じたことで中国に展開していた韓国ロッテを撤収に追い込むまでの営業妨害で報復措置を取り、その後はTHAAD問題も含む「3つのノー」を韓国政府に飲ませた。
3つとは、①THAAD追加配備は行わない②米国のミサイル防衛に参加しない③日米韓協力を軍事同盟にしないーという米韓同盟をないがしろにする約束である(2017年10月、中韓外相会談)
文在寅政権はこれを了承、在韓米軍のTHAADは搬入されているものの、反対派の座り込みで機材搬入が完了せず運用できていない。習近平国家主席は、今年前半に訪韓が予定されていた。
日程は早ければ3月、4月とされたが、コロナ禍の発生で二月初句には暫定延期が決まった。しかし、文政権は「訪韓自体がこれで白紙になってしまうのではないか」と恐れていたようだ。
この稿続く。

 

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