見出し画像

非核三原則は「非核三偽善」、専守防衛は「専守呆然」…まさにこの三つは偽善と思考停止を強要する

以下は発売中の月刊誌Hanadaの書評欄からである。
『腹黒い世界の常識』島田洋一 著
評者 堤堯
プーチンのウクライナ侵攻から三日後、安倍晋三は安倍派の集まりで「日本も核共有(核シェアリング)の議論をすべきだ」とぶち上げた。 
対して岸田首相は「わが国には非核三原則もある。自分の内閣では核保有の議論は一切やらない」とニべもなく安倍の提案を封印した。 
まさに「作らず・持たず・持ち込ませず」に「考えない・議論もしない」を加えた「非核五原則」(中川昭一の造語)の実践だ。
そんな岸田について、著者は以下の批判を書き連ねる。
要約して引く。 
岸田は事あるごとに被爆地・広島選出を強調し、「だから核廃絶を訴える」という。首相の仕事は、あたかも広島の副市長よろしく市長らの二番煎じを演じることではなく、日本国の抑止力を高めることにある。 
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が反発を強め、不測の事態も懸念されるなか、岸田は国連で核廃絶を訴える演説をした。
演説に新味はなく、岸田以外に首脳クラスの出席はなかった。
台湾有事となれば沖縄南部諸島は戦域となり、嘉手納、横須賀基地も攻撃対象となる。
ペロシ議長を運ぶ米軍用機に中国機が攻撃を仕掛ける可能性もあった。
そんな時に官邸を離れ、現実性ゼロの「核廃絶」パフォーマンスに走った岸田に自衛隊の最高指揮官たる自覚はあるのか。 
岸田はグテーレス国連事務総長との会談で、1000万ドルを拠出して「ユース非核リーダー基金」を立ち上げる意向を伝えた。
世界の若手左翼活動家の”軍資金”になるだけだ。 
さらに岸田は核廃絶の気運を高めるため、「国際賢人会議」を立ち上げ、広島で開催すると発表した。
これまた税金の無駄遣いに終わるだけ。
かつてロシアや中国の御用学者を加えた広島「賢人会議」は、堂々巡りの議論が続く国連の軍縮会議の矮小版に終わった。 
「核共有の議論をせよ」は安倍の遺言となったが、仮に日米間で「核共有」ができたとしても、岸田のような人物が首相でいる限り、核抑止力の強化は望めない。
それどころか逆に低下する。
なぜなら、米国大統領が発射の決断をしても、岸田が決断できないと敵が思えば、抑止力はゼロになる……。 
プーチンのウクライナ侵攻はNPT(核拡散防止条約)体制に改めて深刻な疑義をもたらした。
国連安保理の常任理事国が核の恫喝を振りかぎして臆面もなく隣国に侵攻した。
疑義が生じて当然だ。
安倍の「核共有を議論せよ」もこの疑義に触発されている。 
かつて自民党はNPT体制への加盟を6年間も批准しなかった。
むしろ「独自の核を持つべきだ」とする議論が強かった。
ところが、いつしか非核三原則、専守防衛、集団的自衛権の否定の三つが”国是”とされ、これに違背する主張は政治生命の終わりとなりかねない。 
日本ほど国防に縛りをかける国はない。
この三つはその最たるものだ。
著者は自身のブログに非核三原則を「非核三偽善」、専守防衛を「専守呆然」と記す。
まさにこの三つは偽善と思考停止を強要する。
著者は第二章で、日本固有の核武装は可能で、報じられていないがアメリカもそれを歓迎していると論じる。
この件、紙幅が尽きて引けないが、とりわけ面白く、小欄は2読3読した。 
実に中身の濃い説得力に富む警世の書だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?