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インフラ資金がないからAIIBが必要だというのが中国の論法です。でも、アジア開発銀行が最も大きくお金を貸しているのは対中国。おかしいでしょう。

「バスに乗り遅れるな」という日経や朝日の論調に対し、「習近平党総書記が運転する共産党のバスに乗るのか」「泥舟に乗るのか」と反論し続け
2022年02月15日
以下は、2018年12月19日に出版された下記の本からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。

序章 日経新聞を読むとバカになる
「バスに乗り遅れるな」の無知
田村 
2018年8月21日付の日経新聞には〈中国・マレーンア 貿易重視 首脳会談、関係修復を演出 「一帯一路」でも協力〉という見出しが躍っていましたね。
マレーシアのマハティール首相があたかも中国にすり寄っているかのような印象操作をする。
私の日経在籍時代でも編集幹部は親中路線でしたが、そこまでひどくはなかったように思う。
高橋 
ほんのちょっとの話を針小棒大に書くから、日経は読まない方がいいよ(笑)。
田村 
そういうと話が終わってしまう(笑)。
例えば、同じ8月21日付の産経の見出しは、訪中の〈マレーシア首相 中国を牽制、友好は強調〉〈「新植民地主義 望まぬ」〉です。
産経はマハティール首相は中国で言うべきことをきちんと言ったと書いているわけですが、日経は先の記事で次のように書いています。
〈中国の習近平(シー・ジンピン)国家王席と李克強(リー・クォーチャン)首相は20日、北京を訪れたマレーシアのマハティール首相と個別に会談し、農産品の輸入増など貿易拡大で合意した。中国企業が絡むインフラ事業の見直しをマ(ティール氏が打ち出したことで隙間風が吹いた両国関係の修復を演出した。米中貿易戦争をにらみ周辺国との摩擦を避けた形だ〉つまり、マハティール首相が頭を下げたというような話になっているわけです。
中国が進める一帯一路(現代版シルクロード経済圏構想)やAIIB(アジアインフラ投資銀行)については「バスに乗り遅れるな」というのが日経や朝日の論調ですからね。
高橋 
17年だったと思うけれども、テレビ朝日系列の番組に出演したとき、一帯一路についてがテーマでゲストは4人。
1対3のような状態でしたね。私以外の3人が「バスに乗り遅れるな」と言っていた。
私はAIIBについて金利が高いし、高利貸し状態になると指摘したんですが、予測は当たっていますね(笑)。
この程度の話もわからない人が「バスに乗り遅れるな」というわけ。
安倍晋三総理にもこう進言したことがありますよ。
「絶対に日米のほうが中国より国際金融のベース金利が安くなるから参加しないほうがいいですよ。AIIB自体は日本とアメリカが参加しなければ調達コストが高くなります。だから”日本の信用”を得たい中国の方からいずれ頼んできますよ」
こう予測したんだけど、総理もその通りだったと。
「バスに乗り遅れるな」と言っていた人たちは、ベース金利も知らない人が多いと思いますよ。
基本的なことを知らないで、分析できません。
田村 
読者のために説明しておくと、ベース金利とは次のようなこと。
国際金融機関はお金を貸し出すとき、どこからか調達してきてお金を貸し出します。
その調達してくるときのレートをべース金利と言います。べース金利には、国際機関の後ろ盾になっている国が重要になりますね。
その国際機関がもしうまくいかなくなったとき、誰が後ろ盾になるかで金利が決まってきますから。
AIIBの場合、後ろ盾は中国。ベース金利は中国の国際金融における調達コストとほぼ一緒になります。

日経新聞は親中路線
高橋 
アジア開発銀行(ADB)は日本とアメリカ、実質、日本が後ろ盾になっています。
すると日本の調達コストみたいなものでベース金利は決まるわけです。
後ろ盾になっているところを見ながら金融は決まります。
AIIBは日本やアメリカに参加してもらえなかったから、中国が後ろ盾だということがすぐわかる。
中国の国際市場における調達コストは日本の調達コストよりかなり高い。
中国はあまり信用されていないからです。
結果的には、AIIBの調達コストは中国を上回れないから、日本の方がベース金利は低くなるというカラクリです。
田村 
それは明らかですね。
高橋 
そうすると割高の調達コストでAIIBは貸し出さざるを得なくなる。
もちろん中国が補助金を突っ込んで金利を低くすることは可能ですが、そんなことは長くは続けられません。
だから高利貸しになるという予測になる。
田村 
私も2014年から、AIIBはインチキだとずっと書いてきたのです。
「バスに乗り遅れるな」という日経や朝日の論調に対し、「習近平党総書記が運転する共産党のバスに乗るのか」「泥舟に乗るのか」と反論し続けてきました。
日米が後ろ盾のアジア開発銀行がすでにあるにもかかわらず、中国はAIIBをつくる。
インフラ資金がないからAIIBが必要だというのが中国の論法です。
でも、アジア開発銀行が最も大きくお金を貸しているのは対中国。おかしいでしょう。
アジア開発銀行について黒田東彦氏(現日本銀行総裁)の後任の中尾武彦ADB総裁と激論したことがありますよ。
中尾さんと全国紙やNHKの論説委員陣の会合で、「中国はAIIBを自らの主導で設立して足りないインフラ資金を融資するという。あなた。アジア開発銀行の総裁なんだから、それなら中国は、アジア開発銀行から借りたカネをまず返すのが筋だと言うべきでしょう」と。
中国の外貨事情についても中尾総裁に言いましたね。
「中国は外貨準備が多く見えるけど、実態はそうじゃない。中国主導で国際金融が大いにやれる、低金利で貸せるなんて真っ赤なウソです。なのに中尾さん、あなたはアジア開発銀行が、それに大いに協力するとおっしゃるのか」と激しくかみついた。
たしか14年6月のことです。以来、私は、中尾さんとメディアの意見交換会にはお呼びがかからない(苦笑)。
ADBはマニラ市の中の別天地のような地区にあり、日本の財務省からきた中尾さんら幹部の方々は中国代表と仲良くすることを何よりも心がける。
中尾さんに限らず、日本の財務官僚は中国にとって金づるというわけか、北京に行けば大歓待を受ける。
事なかれ主義に陥るわけですね。
財務官僚は中国側とうまくやることは考えても、あえて対立するような真似はしないでしょうね。

中尾さんの前任の黒田東彦氏もADB総裁時代は、日本のカネを使ったメコン川流域の開発を主導しましたが、そこに進出するのはもっぱら中国企業。
乱開発で環境破壊のやり放題でした。が、黒田さんは開発されるからよいという対中融和路線だったのです。
日経はとにかく親中路線。
日経だけでなく朝日もそうですが、中国と仲良くすべきだという「イデオロギー」が基本にある。

さらに日経は、経団連(日本経済団体連合会)と一緒になって盛んに、「バスに乗り遅れると日本はビジネスチャンスを逃してしまう」と言うわけです。
AIIBは中国共産党主導の銀行ですよ。中国共産党のトップ、習近平国家主席が運転するバスに乗るとは、どういうことなのかという問題意識がまるでない。
プロジェクトを受注できる、市場シェアを獲得できるという利益動機だけで考える。
中国の一帯一路やシルクロード経済圏とは中華帝国の再建を目指しているみたいなものだということがなぜわからないのか。
AIIBはそれを進めるための金庫になるわけです。
そういうものに日本が協力するという、政治的意味合いをなぜ考えないのか、不思議で仕方なかったですね。
この稿続く。


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