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【必見】IRを読み解く意外な投資戦略 #8:増益予想は本物か?良品計画のケースで解説

投資で成功するために


「IR情報」について少しお話します。IR情報とは、企業が投資家向けに開示する情報のことで、有価証券報告書や決算説明資料などが含まれます。

私の長年の経験から言うと、株式投資で成功するには、このIR情報を読み解くことが一番の近道だと考えています。投資にあたって重要なポイントは「ほぼ」記載されているからです。

ただ、専門的で難しく量も多いので、「まず知っておくべきこと」だけをわかりやすくまとめました。投資初心者の方から専門家まで十分お使いいただける内容です。

このコンテンツは、「増益予想」の銘柄をざっくり投資候補として、ポイントを押さえた上で、その中から興味を持てる銘柄を見つけることが目的です。銘柄推奨ではありません。

ぜひ最後までお読みください。記事の主旨は以下のリンクから、記事の内容は下の目次からご確認下さい。



おさえておくべき3つのこと


株価は「利益(EPS)×市場評価(PER)」で決まります。株価が上がるということは、利益が上がるか、市場評価が上がるか、その両方かです。

株価を予測するには株価そのものでなく、この「利益」と「市場評価」の要素を検証することが投資成功のカギとなります。

このコンテンツでは、まず、投資候補となり得る「増益予想の銘柄」について、企業の全体像を「まず知っておくべきこと」として簡潔にまとめています。これにより、①利益の背景を理解しやすくなります。

次に、企業が発表している増益予想について、例年の予想水準や達成度の傾向を分析し、②利益予想の信ぴょう性を評価します。これにより、予想がどれだけ現実的かを判断できます。

最後に、①利益の背景と②予想の信ぴょう性を踏まえて、③市場評価(PER)の傾向を読み取ります。これにより、株価のメドをイメージしやすくなります。

この3つのことをおさえた上で、その銘柄に「ピン」ときたら投資候補としてストックしておき、株価のメドからタイミングを計って投資を検討する投資戦略です。

これらはすべてIR情報から検証できます。このコンテンツでは、多くの銘柄について、これを分かりやすく解説していきます。


良品計画(7453) 2023.8期


今回は増益予想の銘柄から、良品計画(7453)のケースを見ていきます。目的は企業の全体感を把握して、利益の背景を理解することです。

単なる予想や個人的な見解ではなく、以下の情報を基にした信頼性の高い事実情報です。

有価証券報告書: 第45期
決算短信: 2023年8月期 決算短信 他
決算説明資料: 2023年8月期 決算説明会

2023.8期:2022/9/1~2023/8/31


1. まず知っておくべきこと


基本的なデータから確認します。まずはこの程度で十分です。

東証プライム  時価総額 5276億円
売上 5814億円  当期純利益率 3.8%
自己資本比率 58.1%  配当利回り 3.4%
ROE 8.7%  PER 22.5%  PBR 1.9倍
東京都豊島区

2023.8期末現在のもので、リアルタイムではありません

ここからは「まず知っておくべきこと」をまとめたものです。Q1からQ4の順番で把握すると理解しやすくなります。本文は2分程度で読めます。


Q1 どんな会社で、何がいいの? 


旧西友ストアーから
プライベートブランド「無印良品」が分離独立。「無印良品」と「MUJI」の企画開発、調達、流通加工、小売を主要な業務としています。国内外に直営店を持ち、飲食販売やキャンプ場運営、住宅販売なども行っています。売上比率は国内事業が59%、東アジア事業が30%を占めます。

特徴や強みは、
品質の高い製品をリーズナブルな価格で提供することにあります。さらに、環境に配慮した製品作りを推進しており、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」を基本としています。


Q2 足元の状況は?


世界的な資源価格の高騰や
金融引き締めの影響、円安の進行や原材料価格、エネルギーコストの上昇により、消費者の節約志向が強まっています。

この環境下で
ブランドを確立するため、環境負荷の低減を目指して、再生可能エネルギーの導入や、脱プラスチック包装の推進、リサイクル活動などを行っています。


Q3 業績の傾向は?


【2023.8期実績】
売上 +17.2%  当期純利益 -10.2%
【2024.8期予想】
売上 +10.1%  当期純利益 +49.6%

※前年実績比

2023年度の経営成績は、
国内外での店舗拡大や組織強化が寄与しています。利益率は円安と原材料高に伴う仕入れコストの上昇により前年度より減少したものの、配送効率の改善などもあり、増益は確保しています。年度後半にかけて収益性は回復基調にあります。

2024年度の予想では、
国内外での新規出店効果や既存店舗の売上拡大を見込んでいます。また商品力の強化や新しい事業展開により収益性が改善し、過去最高益の更新を見込んでいます。国内外での出店を軸に、営業総利益率を高めていく計画です。


Q4 今後の見通しは?


2030年ビジョンとして
「ESG経営のトップランナー」を目指し資源循環型・自然共生型社会の実現などに取り組んでいます。温室効果ガス排出量を50%削減、店舗や物流拠点での再生可能エネルギー導入率を100%にすること、脱プラスチックの推進、リサイクルを前提とした製品設計を100%にすることなどの目標を設定しています。

中期経営計画の進捗としては、
売上7,000億円の計画に対し6,400億円の見通しとなっています。また、営業利益は750億円の計画に対し、480億円の見通しです。売上不足に伴う営業総利益額の減少が利益にマイナス影響を与えています。課題は、国内および中国大陸の売上拡大にあります。今後の戦略としては、国内外での店舗展開を加速させ、商品力の強化や新しい事業の展開を推進していくことが重要です。


※利益の背景のポイント


原文の充実度によって内容やわかりやすさは変わってきますが、利益の背景のポイントをまとめると、以下のようになります。

原材料価格の高騰などによるコスト上昇が課題ですが、配送効率の改善などにより回復基調にあり、商品力の強化や新しい事業展開で収益性の改善も期待されます。

売上不足に伴う営業総利益額の減少が課題ですが、新規出店の効果で売上の拡大も見込んでおり、国内だけでなく中国でも店舗展開を加速させる計画です。

これを念頭に置いたうえで、増益予想の信ぴょう性と株価のメドについて検証していきます。


ここから先は有料コンテンツになります。

有料部分では、利益の背景を踏まえて業績予想の信ぴょう性市場評価の傾向を読み取り、株価のメドについて検証しています。

1記事200円でお試しいただけます。月額590円の低コストで読み放題のメンバーシップもご提供しています。月3記事以上読むならメンバーシップがお得です。

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2. 予想の信ぴょう性を測る


会社が発表している業績予想について、「例年の予想水準」と「過去の達成実績」の推移から、先ほどの利益の背景と合わせて傾向を読み取り、増益予想の信ぴょう性をイメージしていきます。


Q1 売上予想の信ぴょう性

予想の水準は前年実績比、期初予想に対する達成度

直近5期の売上予想は幅が大きいですが、コロナ禍の2021年度の極端な数値(+172%)を除くと、+6%から+18%と概ね10%強の範囲です。今期(2024年度)の+10%の予想は、例年並みの無理のない水準と考えられます。

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