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【必見】IRを読み解く投資戦略 #9:増益予想は本物か?サイゼリヤのケースで解説

投資で成功するために


「IR情報」について少しお話します。IR情報とは、企業が投資家向けに開示する情報のことで、有価証券報告書や決算説明資料などが含まれます。

私の長年の経験から言うと、株式投資で成功するには、このIR情報を読み解くことが一番の近道だと考えています。投資にあたって重要なポイントは「ほぼ」記載されているからです。

ただ、専門的で難しく量も多いので、「まず知っておくべきこと」だけをわかりやすくまとめました。投資初心者の方から専門家まで十分お使いいただける内容です。

このコンテンツは、「増益予想」の銘柄をざっくり投資候補として、ポイントを押さえた上で、その中から興味を持てる銘柄を見つけることが目的です。銘柄推奨ではありません。

ぜひ最後までお読みください。記事の主旨は以下のリンクから、記事の内容は下の目次からご確認下さい。



おさえておくべき3つのこと


株価は「利益(EPS)×市場評価(PER)」で決まります。株価が上がるということは、利益が上がるか、市場評価が上がるか、その両方かです。

株価を予測するには株価そのものでなく、この「利益」と「市場評価」の要素を検証することが投資成功のカギとなります。

このコンテンツでは、まず、投資候補となり得る「増益予想の銘柄」について、企業の全体像を「まず知っておくべきこと」として簡潔にまとめています。これにより、①利益の背景を理解しやすくなります。

次に、企業が発表している増益予想について、例年の予想水準や達成度の傾向を分析し、②利益予想の信ぴょう性を評価します。これにより、予想がどれだけ現実的かを判断できます。

最後に、①利益の背景と②予想の信ぴょう性を踏まえて、③市場評価(PER)の傾向を読み取ります。これにより、株価のメドをイメージしやすくなります。

この3つのことをおさえた上で、その銘柄に「ピン」ときたら投資候補としてストックしておき、株価のメドからタイミングを計って投資を検討する投資戦略です。

これらはすべてIR情報から検証できます。このコンテンツでは、多くの銘柄について、これを分かりやすく解説していきます。


サイゼリヤ(7581) 2023.8期


今回は増益予想の銘柄から、サイゼリヤ(7581)のケースを見ていきます。目的は企業の全体感を把握して、利益の背景を理解することです。

単なる予想や個人的な見解ではなく、以下の情報を基にした信頼性の高い事実情報です。

・有価証券報告書: 第51期
・決算短信: 2023年8月期 決算短信 他
・決算説明資料: 決算説明資料 2023年8月期

2023.8期: 2022/9/1~2023/8/31


1. まず知っておくべきこと


基本的なデータから確認します。まずはこの程度で十分です。

東証プライム  時価総額 2396億円
売上 1832億円  当期純利益率 2.8%
自己資本比率 63.5%  配当利回り 0.7%
ROE 5.4%  PER 43.4%  PBR 2.3倍
埼玉県吉川市

2023.8期末現在、リアルタイムではありません

ここからは「まず知っておくべきこと」をまとめたものです。Q1からQ4の順番で把握すると理解しやすくなります。本文は2分程度で読めます。


Q1 どんな会社で、何がいいの? 


全国にイタリアンレストランチェーンを展開。
スクラップアンドビルド戦略を取り入れ、新店舗の開発や既存店のリニューアルを進めることで、市場の変化に柔軟に対応しています。

国内では食材の製造と店舗運営を行い、
海外では豪州での食材製造、店舗運営は現地法人が担当しています。特徴として、生産から加工、配送、販売までを一貫して行う体制が挙げられます。この垂直統合型のビジネスモデルにより、品質向上と効率化を実現し、フードロスの削減やエネルギー効率化を推進しています。


Q2 足元の状況は?


外食産業全体において、
行動制限の緩和による個人消費意欲の高まりやインバウンド需要の回復が見られる一方で、慢性的な人手不足や食材・エネルギー価格の上昇に直面しています。

この厳しい経営環境の中で、
問題解決のスピードを上げるためにスーパーバイザーを設置することで、DXの推進、フードロス削減、エネルギー効率化、プラスチック再利用など、SDGsに対応した取り組みを行っています。


Q3 業績の傾向は?


【2023.8期実績】
 売上 +27%  当期純利益 -8.9%
【2024.8期予想】
 売上 +15.1%  当期純利益 +59.1%

2023年8月期の経営成績は、
新規出店、既存店の改装、メニューの改良などの取り組みが功を奏し、売上高は前年同期比で27.0%増加しています。また、食材の調達コストの見直しやエネルギーコストの削減を図ったことも業績向上に寄与しました。

2024年8月期の業績予想は、
特にインバウンド需要の回復が見込まれます。新規出店や既存店の改装により売上の増加を図ります。さらに、コスト削減の継続的な努力も業績向上に寄与する見込みです。


Q4 今後の見通しは?


慢性的な人手不足や
食材価格、エネルギー価格の上昇といった課題を認識しています。新規出店の物件確保や既存店のリニューアルなどを重要な課題として取り組んでいます。中期経営計画では、チェーンストアとしての機能強化、店舗マネジメントレベルの向上、新商品の開発、グローバル展開の強化などを戦略として掲げています。

具体的には、既存店の設備を改善し、店舗の組織作りを強化しています。またデジタル化によって作業の省人化を進め、カミッサリー機能で店舗作業を減らしています。工場の食材ロスやエネルギーロスを削減し、小規模な投資で低コスト運営の店舗を構築しています。海外事業では、中長期的な組織構造の設計を進めています。


※利益の背景のポイント


原文の充実度によって内容やわかりやすさは変わってきますが、利益の背景のポイントをまとめると、以下のようになります。

利益の背景を読み解くと、
新規出店と既存店の改装、インバウンド需要の回復が増収要因となる一方で、食材価格やエネルギー価格の上昇などの外部要因、新規出店の物件確保や人手不足といった内部要因によって利益が変動する傾向があります。

これに対応するため、デジタル化による省人化や店舗作業の削減、食材ロスの削減などを進めています。

これを念頭に置いたうえで、増益予想の信ぴょう性と株価のメドについて検証していきます。


ここから先は有料コンテンツになります。

有料部分では、利益の背景を踏まえて業績予想の信ぴょう性市場評価の傾向を読み取り、株価のメドについて検証しています。

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2. 予想の信ぴょう性を測る


会社が発表している業績予想について、「例年の予想水準」と「過去の達成実績」の推移から、先ほどの利益の背景と合わせて傾向を読み取り、増益予想の信ぴょう性をイメージしていきます。


Q1 売上予想の信ぴょう性

予想の水準は前年実績比、期初予想に対する達成度

直近5期の売上予想は+3%から+19%の範囲で推移しており、今期予想の+15%は例年の範囲内で現実的な予想であると言えます。

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