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いつの間にかここにいる


ここ1ヶ月ほどで
自分の存在価値を
揺るがされてしまうような出来事を経験した

今後の人生を共に歩もうとしている
彼の家族のひとりに

あたしの背中にいるもの 
あたしから感じるものが
良くないと噂を立てられ
あたしは彼の家族から嫌煙されている

という事実が明るみになったのだ

これまで何度か
彼の家族とは会う機会があったのだが
ご両親からは
嫌がられている印象は無かったものの
彼の兄嫁だけはあたしを徹底的に無視し
新参者のあたしはどう接したらいいかわからず
下手にかしこまったり
存在を消そうとしたりして
彼の実家に行くときには
どこか疎外感を感じていた

家族の不幸で一族が集まる機会に参加した際に
義兄の嫁のあたしへの態度は
その他の家族にも伝染し 
その雰囲気が耐えられず
彼はとうとう
家族の間に流れているあたしの噂を
こっそりと話してきたのだった

別に
別に彼があたしのことをそんなふうに思わなくて
あたしの存在を必要としてくれているのであれば
別居している家族があたしを好いていなくても
別にあたしはいいやと思う

それでも
あたしってそんなにダメな人なのかと
ことあるごとに考えてしまう
仕事でミスしたから? 
疲れてソファでグータラするから?
あたしが田舎出身だから? 
芸術や文芸に傾倒しているから?
ひねくれ者だから?

ああそうか、あたしはダメなのか。

そうやってこの春は
ひたすらに自分の殻を分厚くして
誰かと騒ぎ散らしたり
深く寝入ったり
頑なに仕事に打ち込んだりして
自分の心の安寧を取り戻すのに忙しかった


もう半袖でもいいかなと窓を開けて
はげしさとあたたかさの塩梅を
雲と相談しているお日さまが
額の汗をおしえてくれて
もうこんなところにいるのかと
あたしはやっと
ベランダに立っていることにおどろかされる

そうやって生きてきたのだから。

思い通りになったりならなかったり
それに気づくのはいつも後になってからで
こうなりたいとか 
大学に行きたいとか 
ここに住みたいとか
いざ行動しようと思って
したわけではなくて
具体的にちゃんとした
計画的な準備やらなんやらが
あるわけではなくて
いつの間にやら動いていたというか 
走り出していたというか
そういう思いとか心が躍る何かに動かされて
気づいたらここにいた。

ちゃんと座って 
持っているペンが
ノートに記したあたしの思いは
あたしの生きてきたその間に
蓄積されたタユタイで
いつの間にかここにいるあたしは
そんなたくさんの心のタユタイを
抱えながら文字を探し
言葉の後ろに文字が記されていることに
やっと気づく。

記された言葉や言葉にならないものだけが
あたしの指に触れたあたしの真実なのだろうか。

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