【Reskilling → Lifelong Development】(人間を理解する)

リスキルニングという言葉が日々話題になっています。変化の速い経済環境にあって長く働き続けるためにスキル(技能)をもういちど磨きなおす、新しいスキル(技能)を身につける。リスキルニングは「学び直し」という意味合いで使われていると理解しています。

この話題について小さな一つの事例として私の経験をお話します。

私が会計の勉強を始めたのは48歳のときでした。もろもろあって銀行員としてのキャリアに限界を感じ、まさしく第二の人生(銀行業界では転出とか言います)に備えて経理のスキルを身につけておこうと考えたからです。

まず簿記2級の試験を受けました。いちおうの準備をしていた積りでしたが、あっさりと不合格でした。もういいトシで相応のプライドもあったので、かなり凹みました。

それまでは完成された財務諸表を膨大に読み込み分析してきましたが、財務諸表がどう作成されてきたのか全くわかっていなかった。そこには中世イタリア以来の「簿記」という技術がある。その原理は単純なようで実は奥深い。正直なところ「商業高校の生徒が学習するレベル」だと舐めていた自分がいた訳ですが、これに気づいたとき何かに目覚めました。

そこから簿記2級のリベンジ、米国公認会計士試験、簿記1級と、数年をかけて学習を進めていきました。

その過程でもう一つのことに気づきました。会計の原則、基準が大きく変わっていたことでした(いわゆる会計ビッグバンのあと)。経済環境の大きな変わり目にありながら、それに鈍感なままに金融商売をしていた訳です。これも目からウロコが落ちるような経験でした。面白く感じました。

常識と信じていたことは実はドンドンと変わっていく。自分ひとりが変わらないでいられる訳がない。いや変化していくことは楽しく面白い!

そこからまた数年をかけて日本の公認会計士試験(3回目の受験で合格)、そして修了考査を経て資格登録したのが58歳。まあつまり10年をかけてたどり着いた訳です。

そして結論です。リスキリングとは「学び直し」に留まらない。それではツマラナイかと。一生続けて自分を変化させていくこと=Lifelong Developmentと理解した方が良いのではないか。その方がオモシロイのではと思います。Lifelong Developmentという思考は、「自分は常に未完成だ」という謙虚さを前提とします。さらに「完成された人間など一人もいない」という気づきは、周囲への理解と寛容のみなもとでもあると考えています。

私が中年以降に、いささかながらも人間理解を深めることができたのは幸せなことだったと思います(それまでが傲慢すぎたということでしょう)。これからも謙虚に学びを続けていきたいと思います(いまはクラウド会計ソフトを実戦中です)。

以上は自慢ではありません。人生に「行き詰まり」を感じている仲間たちに小さな一つの事例となれば嬉しいです。


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