大怠け者の子孫(続編:黒猫)※デモ

 夏の東京某所、一人の男が木陰のベンチに仰向けで寝そべっている。彼の額からは汗が出てる。頭をベンチの手摺りに持たせている。手はポケットに突っ込んでいる。両目は長い前髪に隠れていて、一見寝てるかどうかは判然としやしない。通りゆく人は、そんな彼を横目に通り過ぎていく。
 「バタン!」、ペットボトルがベンチから転げ落ちた。黒猫が彼の横を通り過ぎる。彼はすぐにコカコーラを拾う。起きていたのだ。人慣れをした猫だ。そして、彼の方を物言いたげに見つめている。「どうしたの?!」.....「餌持ってないよ」......「ミャー.....」、、取り敢えず手を差し伸べた。彼の手に黒猫は背中を擦り付ける。かわいい.........彼の心境は踊り上がってる。しかし、表情からは読み取れない。

 彼は読んでいた文庫本をジーンズの後ろポケットに収め、ベンチから立ち上がった。ベンチの下では黒猫が丸まっている。猫に手を振りベンチを後にする。
 「俺は自分に期待してない、だからバカにだってなれる」これは彼が何処かで吐いた言葉だ。「(ねこしゃんかわいかったにゃー)」彼のこころの声が漏れてきそうだが、相変わらずのセミに打ち消される。夕暮れの街に彼の背中は消えていった。

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