見えないものを想像してみる〜溶けたアイスを再凍結したら?
冷凍庫の氷が溶けた
37度。天気予報にこんな数字が当たり前みたいに続いた2024年の夏。麦茶に氷を入れてギンギンにして飲もうと冷凍庫を覗いた。瞬間、氷が溶け始めているのが見えた。ムム?まさか冷凍庫の故障?
慌てて食材の入ったところも確認。やはり冷えていない。嫌な予感が的中していた。
冷凍庫に入っている食材をすべて取り出し、内部を徹底的に点検した。奥の方に大きく平べったい氷の塊が張り付いるのが見えた。手のひらぐらいの大きさの氷だ。慎重に剥がした。
冷凍庫の扉を閉めて待つこと5分。冷気が復活した。あぁ良かった。取り出した食材を冷凍庫の中に戻した。
再凍結させたクーリッシュの味
その夜、アイスを食べたくなった。お目当ては今朝の冷凍庫事件で溶けかけたクーリッシュ。今は再び凍り、すっかり元に戻っている(ように見えた)。
ところがいざ食べようとした瞬間、異変に気付いた。「なんか変」だった。いくら容器を押しても硬くて中身が出てこないのだ。
ならば、少し待ってみよう。待つこと10分。強めの力でパウチ容器を押し、アイスの出口をしっかり咥えて大きく吸った。ぬるくて白くて甘いミルクの液体がじわりと口の中に流れてきた。
甘くも冷たくもない。クーリッシュらしさが少しも残っていなかった。美味しさが消えていた。
溶けたクーリッシュは元には戻れない
クーリッシュは不思議な食べ物だ。口で咥えて一気に飲んでしまうので、どんな色かたちをしているのか分からない。中味がどんな様子なのか分からぬまま食べる食べ物はなかなか珍しいと思う。
それに、カップ入りアイスや棒アイスなら少し溶けても再冷凍すればおよそ6〜7割は復活する(と思っている。個人的感想)。しかしクーリッシュは1割も戻らなかった。この違いは何だろう?
近くにいた娘がボソッと「クーリッシュって夏と冬では氷のサイズを変えているんだってね」と言った。氷?
確かに、クーリッシュを食べると口の中にジャリッという触感を感じる。あれは小さい氷だったのか。
一度溶けたクーリッシュが元に戻れないのはきっとこういうことか?
クーリッシュの中には氷のパーツとミルクのパーツがあり、それぞれ混ざり合わずに存在している。しかし温度が上がると氷部分が溶けて水となる。水がミルクアイスと混ざり合う。水で薄められたミルクを再凍結させると、全く別物になってしまう。
クーリッシュをクーリッシュたらしめるもの
何やら特別な技術が裏に潜んでいそう。調べてみると、やはり氷が肝だと分かった。
ロッテ社では、クーリッシュに使う氷を微細氷と呼んでいる。微細氷の製造方法について、同社は20年以上前に特許を取得していた。氷のサイズが細かく規定されていた。そして独自製法で作られた微細氷を使い、以下の工程でクーリッシュは作られている。
https://www.lotte.co.jp/entertainment/shallwelotte/product/sozai/bisaigori/
口の中で微細氷が溶けるタイミングと、ミルクアイスの溶けるタイミングにギャップがあることを利用して、「美味しい」「どんどん食べたい」と思わせるテクニックも使っているようだった。
技術力の高さと開発者の情熱がこの商品をロングセラーたらしめているのだと思った。
すっかりファンになり、今日もまたスーパーで買ってきた。初めて裏の表示を見た。
「これはアイスなので、一度溶けたものを再び凍らせると品質が変わります」
「アイスなので」は、「微細氷とアイスミルクが混じり合わずに存在しているアイスなので」と読み替えればいいのだな。
微細氷が小さくなった冬の濃いめバージョンが今から楽しみだ。それまで時々冷凍庫の内側を覗いて、氷の塊が作られていないかチェックしよう。