「宛先のない手紙。」(詩)
嘘を吐いた。
少しだけ、嘘を吐いた。
それは貴方にではなくて。
それは自分に対してであった。
横顔が綺麗で鮮やかな貴方のこと。
誰よりも笑顔が素敵な貴方のこと。
忘れたくて、忘れる訳じゃない。
貴方だって人間だ。
今が間違っていることくらい分かってる。
正直でないことくらい分かっている。
気がついた時には、僕はいつも遅かった。
貴方と一緒にいたかった。
僕は誰も探していない。
……ただ、鮮やかな未来の景色を探していた。
夢を叶えて、心から喜ぶ自分を現実に。
敢えて、誰かを探したのなら。
自分を愛してくれる人を探しただろう。
臆病で弱い自分の事。
抱き締めてくれるような暖かさを。
嫌われてしまっただろう。
臆病な僕は、貴方を避けた。
貴方が他人になった気がした。
貴方を失っても、生きていける。
夢があるから。
それを諦めたまま、死にたくないから。
強がれば生きていける。
弱くても、それでも死にたくない。
幸せになりたくて逃げた先は奈落で。
落ちていく、間違いに気づいてく。
傷だらけの身体を引き摺って生きる。
痛みを前に、それでも進む。
貴方には触れられない。
触れるだけの勇気がずっと。
僕にはなかった。
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