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「枯れた花と出会う。」(詩)

道端で、ふらり。


枯れた花と出会う。


似ていたから。


あの日見た花を思い出す。


積み重なった思い出。


過ごした日々。


もう戻れないように。


水を抜いて、丁寧に。


それを枯らしてしまった私。


そよ風をあてて

出来たドライフラワー。


切り取った記憶ごと、

ハコに閉じ込めたら。


美しい思い出になった気がした。


道端で、ふらり。


枯れた花と出会う。


いつの日か。


ハコにしまった

ドライフラワー。


今は昔、

もうあまり思い出せない。


それでも

似ていたから。


あの日見た花を思い出す。


私は間違ったのかもしれない。


あの時、私は。


寿命まであの綺麗な花を育てることに。


嫌気が差してしまって。


自らの愚かさに気づいて。


余分な葉を

切って捨てて。


風通しのいいあの場所に

干してしまった。


それでも。


世界は終わらないから。


その花の種は消えないから。


いつか。


似通った顔をした

あの花と出会う。


後悔も、絶望も。


きっと。


思い出してしまう。


あの花は喋らない。


聞きたくない。


何を思うかなど、分からない。


それでも……


私は、振り返らずに前を歩いた。

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