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「re·overdose.」(詩)

幻覚の中、私は動けない。


遠くを見つめるごとに視界が霞む。


思考が奪われ、

体に空気が滲んでいく。


とおくで。


アイスみたいな香りがした。

冷たくてあまい

そんなかんじ。


焼き菓子みたいな香りがした。

あたたかくてふわふわ

そんなかんじ。


掻き鳴らす自分。


理想の中の自分は

綺麗で。


腕になんか傷はない。


心になんか傷はない。


絆創膏になんか頼らなくても。


包帯なんかに頼らなくても。


今、

こんなに息をするのが辛いことなんてない。


素敵に微笑んでるはずで。


(今の私は偽物だ。

……認めてくれる人なんて、いないんだ。)


また、この世に別れを告げようとする。


私は事実に気付くことはない。


「君は誰かに必要とされている。」


そんな言葉は妄言で。


気だるげに頬杖、

息をついた。


「生きて。」


ごはんも喉を通らないのに?


死ぬための薬なら喉を通る。


けれど死ねない。


病院と家をいったりきたり。


また、いみわかんないのに叱られている。


私の幻想なんかまやかしだ。


「他人と関わっても、傷は消えない。」


誰かが囁いた。


「逃げるべきだ。」


誰かが囁いた。


「きっと誰にも、
傷つけられないところまで………」


うるさい……うるさい!


「……私に、構わないで!」


不意に口から出た声。


振り払った後に気付く。


……ああ。

また失ってしまう。


また、薬に逃げてしまう。


嫌なのに。


苦しくて苦しくて仕方ないのに。


この人は多分、

助けてくれようとしてくれているのに。


視界がぼやけて思考もめちゃくちゃ。


(……もう、私は耐えられないや。)


遠くなる声が、
しきりに私を呼んでいた気がした。


……そんな、気がした。

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