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[詩]「梔子」

旅の開幕


白い花が揺れて


白色の箱が走る


降り立った先


街を歩けば

見えてくる


紅の門を潜ると


景色が移り変わる


未知への緊張は

解かれていく


穏やかな晴れ模様


苦難も


地獄も


乗り越えたなら

そこは天国


たとえば


それが思い違いでも


空蝉のように

果てたなら


白い花が咲く


初々しく

白桃が香る


春が来る


眼前を過ぎる

街路樹のように


口々に

花はぼやく


口々に

花は叫ぶ


大層普遍的な思想ですが


大層ご立派な理想ですが


そんなの知らない


私は私で


そう思えたなら


梔子の花が咲く


旅の閉幕


もう一度


白色の箱が鳴って


降り立った先で


薄暗い雨の

香りがしたから


ここいらで

もうさよならだ


今日が終わっていく


喜びを運んでいく


思い出だけを

抱きしめて


控えめに

手を振って


それ以降は

振り返らないで


歩く私に

咲いた梔子


目に焼き付いた

旅の記憶で


世界の景色が


どこか変わっていくのを

感じていた

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