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「なき痕。」(詩)

目立つ傷は心の中。


何度泣いても枯れない涙が。


僕を僕だと証明してくれている。


霧の先は雨で。


心を覆う。


だんだんと笑えなくなってくる。


劣等と劣情。


足りないものばかりだ。


思考回路すら回らない。


曇り空は、些細な時間の経過で晴れるけど。


笑顔は辺りに転がっているけど。


僕が過去に目を背けるのは、きっと。


もうこれ以上、

傷つきたくないからなんだろう。


後には引けないからだろう。


光茫が道を照らした時、

あの物語は幕を閉じた。


枯れていく花が悲しい。


過去なき痕に。


更地になった傷に光が差し込んでいる。


この最低で、

きっと最高だった思い出に。


この最高で、

最低になってしまうかもしれない未来までも。


僕のなき痕に

死屍累々。


残機が転がり落ちている。


何度も拭って、泣いて

溢れて拭って。


きっと、抗う為に。


何度苦しんでも立ち上がって。


そして、

いずれ現実で夢を見る為に。


幸福を謳歌するために。


普段は誰も気付かない。


心の傷だけは、他人に譲れない。


例え、無力でも。


無駄だと笑われても。


降る雨の泣き痕を晴らして。


遥か遠くで、

さざめく未来を渇望する。


きっと、そんな未来の為ならば……


過去の亡き痕を覗く。


奪われて、失っていった自分を。


幸福を。


勇気を。


取り戻す為に。


僕は何度でも、生まれ変われる。

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