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人生100年時代を”ハッピーに生きる”。「幸福学の基礎知識」

人生の幸福は、経済性だけでは語れない。
 人生100年時代にむけて、農業は幸福なセカンドライフをつくるのに有効な手立てであることをお伝えしてきました。しかし一方で、新しく農業を始めた多くの方が最初の数年で農業を断念してしまう事実があります。セカンドライフを幸福なものにするには、数字にできない主観的&精神的なことが大切で、売上高や営業利益、成長率といった既存の経営指標だけで測れるものではありません。経済的な指標だけでは、「何のために農業に就いたのか?」「もっと儲かる仕事の方がよかったのでは?」といった迷いが生じてしまいやすいもの。そこで、『セカンドライフ・アグリ』を成功に導くための指標(ものさし)が必要なのではと考えました。

セカンドライフを自己管理するために。「幸福学」のアプローチ
 セカンドライフ・アグリの成功に重要な精神的な豊かさを考える上で、「幸福学」に注目しました。幸福学は、20世紀後半からと歴史は浅いけれど、経済のグローバル化と急激な発展の弊害から近年、世界的にも注目されている学問です。

幸福学とは
 1974年、アメリカの経済学者リチャード・イースタリンによって、経済的な豊かさを表すGDPの上昇が心の豊かさを表す幸福感に必ずしも結びつかないとする「幸福のパラドックス」が示され、衝撃を与えました。
 その後、日本を含め経済発展を遂げた先進国では、そのパラドックスが実感され始め、経済学、心理学、社会学などで幸福度研究が発展しました。それまで人々は「経済的に豊かになれば、幸せになれる」と信じてきましたが、実は、そうではありませんでした。人々の幸福に寄与する要因を明らかにして、「どうすれば人は幸せになれるのか」そのメカニズムを研究して、様々な分野に活かそうというのが『幸福学』です。

幸福学の基礎1

「幸福のパラドックス」という現象は、なぜ起こるのでしょうか。
 経済的な豊かさを表すGDPの上昇が、心の豊かさを表す幸福感に必ずしも結びつかないことを説明する有力な仮説に、次のようなものがあります。

【相対所得仮説】
 これまでの研究から、人々の幸福感は絶対的な所得よりも、むしろ他人と比較した相対的な所得によるところが大きいと指摘されています。つまり、「自分の所得が倍になっても、周りの人も同様に増加していれば、幸福度は上昇しない」とする説です。

【順応仮説】
 人間は他の動物と同様、環境の変化にすぐに慣れる。つまり、「所得が増えて生活水準が上がると、いったんは幸福度が上がるものの、すぐにその状況に慣れてしまって元の幸福度に戻る」という説です。

【幸福の所得限界説】
 行動経済学者ダニエル・カーネマン博士は、「感情的幸福」(現在の感情から幸福度を測る指標)は所得に比例しながら増していくものの、年収が7万5,000ドルを超えると頭打ちになるということを研究から導き出しました。

【プロスペクト理論】
 さらに、カーネマン博士は、人間は「利得」よりも「損失」に敏感に反応する傾向があり、損失拡大による苦痛は利得増加による快楽よりも大きいことを明らかにしました。そして、利得も損失もその絶対値が小さいほうが「変化に対する敏感さ」が高まる。つまり、人間は「ほんの少し損をすることに、非常に苦痛を感じる」という説です。

 以上のことからも、幸福とは精神状態や心理的な影響を大きく受けるものであり、経済的な豊かさだけを見ていても、人々の幸福感を把握することはできないことが分かります。ましてや、人生100年時代のセカンドライフにおいて、経済的な豊かさに注目するだけでは幸福になれないことは明らかです。特に、収益性の低い農業は、その価値をうまく評価し自己確認することが必要と考えます。

幸福度で、セカンドライフを考えよう。
 『セカンドライフ・アグリ』を成功させるために、大切な”精神的な豊かさ”を評価し、達成感・充実感・成長感の後押しをする方法について、次回以降考えていきたいと思います。

以上、Vo.6-1『人生100年時代をハッピーに生きる「幸福学の基礎知識」』
*次回は、『ライフステージと幸福の関係』についてお伝えします。
 また、今までの記事もマガジンにて公開しています。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,

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