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就農には、見えないハードルがある。     6「地域格差」

地域によって大きく異なる農業の収益性。
 農業の経営は、その地域環境の影響を大きく受けます。生産品目、気候風土、土地環境、伝統文化、交通事情、商圏人口など、生産だけでなく出荷から販売まで地域によって異なり、その特性を上手く活かす必要があります。そうでなければ、新しく農業を始めたり、農業経営をうまく軌道に乗せたりすることができないでしょう。地域格差を俯瞰するため、農業生産者の1ヘクタール当りの収益性と所得を、都道府県別に分類したのが下の図です。

地域格差1

都道府県による収益性の違いを、見てみましょう
 都道府県という大まかな比較ですが、1軒当たりの農家の所得(1経営体当たりの所得指数)と面積当たりの収益性(1ヘクタール当たりの所得指数)によって、4つの群に分類してその違いを見てみましょう。
 4つの群とは、「面積当りの収益性も、農家の所得も高い」A群、「面積当りの収益性は低いが、耕作面積が大きいため所得が高い」B群、「面積当りの収益性は高いが、耕作面積が小さく所得は低い」C群、「面積当りの収益性も、経営規模も小さい」D群の4つです。

地域格差2

 上の<A群>の都道府県では、面積当たりの収益性と農家の所得がともに全国平均を上回っています。土地に適した”売れる作物”が効率的に生産でき、耕作面積の大きな農家が多い地域と言えます。農業をする上で、立地環境や生産品目で有利な状況にあります。

地域格差3

 <B群>は、面積当たりの収益性は低いけれど、農家の所得が平均を上回る地域です。耕作面積が大きく大規模な農業を行う地域で、小規模で集約的農業が一般的な日本では、北海道しか存在しません。北海道は、耕地面積が全国平均の10倍以上のために、アメリカやオーストラリアのような大規模で粗放的な農業のほうが効率的なのでしょう。逆に、このような農業を目指そうにも、北海道以外では難しいのが現状です。

地域格差4

 <C群>は、面積当たりの収益性は高いけれど、農家の所得が平均を下回る地域です。都市部周辺で耕地面積が小さいか、都市圏に遠く輸送・販売コストがかかるケースが多く、農業だけで生計をたてるにはやや難しい地域と言えます。兼業で別の収入源があるケースが多く、専業農家が少ない地域でもあります。

地域格差5

 <D群>は、面積当たりの収益性も、農家の所得も低い地域です。収益性が低い”米”の生産比率が高かったり、経営規模も小さく山間部のために生産性が悪いケースが多くみられます。新しく農業を始めて高い収益を得るには、かなりハードルが高い地域と言えるでしょう。

「郷に入れば、郷に従え」とは言いますが・・。
 これまで生産だけを考えた農業では、「昔からこの作物を作ってきた」といった”習わし”に疑問なく従ったり、「この地域では、あまり儲からなくても仕方がない」といった”諦め”に近い感覚で地域性をとらえたりする部分がありました。それでは、個人がその地域や日本の農業全体が衰退している状況にあらがうことができません。

地域格差6

地域格差7

地域格差8

収益を高めるには、地域の特性を踏まえた工夫&トライを。
 地域との関連性が大きな農業に、個人が参入して成功するには、地域ごとに異なる経営環境を十分に理解して臨む必要があります。
 例えば、面積当りの収益性を高めるには、他の地域に模倣されにくい高付加価値の作物を栽培し、販売においても地域と連携してブランド化することなどが考えられます。また、1経営体当りの所得を高めるには「産直売場」による地産地消の推進やネット販売等の販路開拓によって、流通コストを下げる工夫が必要です。こういった”ブランド化””や”流通コスト”の低減は、生産だけを考えた農業では対応できません。
 50歳代のサラリーマンが就農する『セカンドライフ・アグリ』では、会社員時代に培われた経験・知見や経営意欲を活かして、地域格差のハードルを越えるための様々なトライが期待されていると考えています。

以上、Vo.3-6『就農には見えないハードルがある。6「地域格差」』
*次回は、ハードル7「経営規模」をお伝えします。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,


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