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人生100年時代へ。農業のポテンシャル④「ふれあい」

日本は、幸福な国ではないのでしょうか?
 毎年、国連より世界幸福度ランキングが発表されます。令和元年(2019年)のランキングで、日本は58位とかなり低い順位にランキングされています。この世界幸福度指標は、下記のような6つの指標を得点化しています。
その「幸福度の算定に使う6項目」は ①一人当たりのGDP ②平均健康寿命③社会的支援 ④人生選択の自由度⑤寛容度 ⑥社会の腐敗度 です。

幸福度ランキング

 この6つの項目の内容と日本の順位について考察したいと思います。「①一人当たりのGDP」と「②平均健康寿命」は、数値に基づく客観的な評価であり、日本は①一人当たりのGDPについては世界24位、②平均健康寿命については世界2位と上位にランクされています。しかしながら、③から⑥の項目は、国民の主観的な満足度評価に基づいており、日本は④人生選択の自由について世界64位、⑤寛容さについてはなんと92位となっていて、①②の項目に比べて非常に低い評価となっています。この結果から、「日本人は客観的に豊かで長生きだが、国民は主観的にあまり幸福に暮らしていると感じていない」と言えます。

幸福度の先進国は、自然豊かな農業国!(という傾向がある。)
 それに対し、上位にランキングされたのはフィンランドをはじめとした北欧諸国やニュージーランドなどオセアニア、カナダといった自然豊かな農業国です。一方、日本は急激に高齢化が進んでいて、幸福度ランキングの順位がほぼ下落の一途をたどっていることに注意が必要です。高齢化と農業人口の減少が進む日本は、「日本人は長生きで経済的には豊かだが、過剰な都市化が進み幸福にはなっていない」のです。現状において日本人は、ついつい経済的な成長に目を奪われがちですが、幸福度の成長にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。

幸福度推移

人生100年時代に目指すべきは、「幸福度先進国ニッポン」
 「人生100年時代」は、個人の生き方や働き方について、人生選択の自由をはじめとする質的な成長と、寛容さをもって支援できる社会の成熟が求められる時代です。現在“働き方改革”が叫ばれていますが、高齢化先進国の筆頭である日本はその本質にある“幸福な生き方”を目指し、日本を幸福度においても先進国へ押し上げていくことがこれからの大切な課題です。

 では、求められる”幸せな生き方”とはどんなものなのでしょうか?
2014年に、内閣府が全国20歳以上3,000人に対して”農山漁村に対する意識調査”を行いました。その中で「農山漁村地域に定住する願望あり」と回答した人に、移住先でのより具体的な希望を質問した結果が下のグラフです。

定住して求めるもの

コミュニケーションの合理化やデジタル化とは、うらはらに・・・。
 自然観察や観光地めぐりなどの個人的な趣味にまつわる回答や、「のんびりしたい」といったストレスからの解放についての回答を抑えて、「地域の人たちとの交流やふれあい」を希望する回答がトップになっていることに注目です。その背景として、都市部では地域とのつながりや住民同士の交流が失われつつあり、サラリーマンが拠り所にしている会社においても、年功序列の廃止や成果主義導入によるヒューマン・リレーションの合理化、飲みニケーションの減少など、“人との交流・ふれあい”が希薄になっていることが起因していることは想像に難くありません。
 平成生まれの若い世代では、SNS等を通じたデジタルな交流が当たり前になりつつありますが、昭和を過ごした世代には、face to faceで言葉を交わし、同じ空気を吸って時間を過ごす温かい関係が恋しいのではないでしょうか。(コロナ禍の下では致し方ありませんが。)さらに、思わぬ発言や行動で炎上するので、常に空気を読むことが求められる”不寛容な社会”になりつつあり、寛容さにおいて92位といった息苦しい国になっている反動が、”農村での地域の人たちとのふれあい”を求めることに顕著に現われているのでしょう。

農業に、”ふれあい”を作りを求めて。
 一方、農村部では、土地や地域と切っても切れない関係にある農業を通じて、人と人の交流が育まれてきたという歴史があります。農作業で顔を合わすたび”あいさつ”を交わし、農繁期には”手助け”し合ったり、収穫したものを”おすそ分け”したりする牧歌的な風情が今も残っています。自然を相手に「今年の天候じゃあ、しょうがないね」的な苦労が分かりあえる関係が、寛容な風土を育むのでしょう。そういった牧歌的な風景や文化の中で、セカンドライフを心豊かに暮らしたいという気持ちは、日本の幸福度ランキングとは裏腹に、多くの日本人により強くなっているのではないでしょうか。

 また、農業がつくる、セカンドライフならではの”ふれあい”も考えられます。私が「ふるさとに帰って、農業を継ぐ」と言うたび、会社の同僚や友人たちはこぞって「できたら、お米や野菜を食べさせてください」と言ってくれます。「よし、おいしい作物をつくるぞ!」という意欲もわきますし、社交辞令に終わらせないで「旨いですね!」と食べてもらえたら、これ以上の心の通う便りはないとワクワクします。さらに「まだ見ぬ孫に、体にいい新鮮な野菜を送ってやろう」とか「夏休みには、孫に農作業体験をさせてやろう」とか妄想がふくらんで止まりません。
 農村でも「人付き合いがなくなってきた」とか「過疎になって昔馴染みの人が少なくなった」という声もあります。しかし、人生100年時代にむけて「農業および農村地域は、”地域や人とのふれあい”といった人間らしい生活を失わないために大いに期待されている」と言って間違いないでしょう。

以上、Vo.1-4『農業のポテンシャル④:ふれあい』

*次回は、「農業のポテンシャル⑤:悠々自適」についてお伝えします。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,#ふれあい

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