こうすれば越えられる、就農ハードル!クリア③「経営視点」
生産から経営へ。視点を広げよう。
これまで農家は、いかに米や野菜の安定した品質と収量を上げるかといった“生産者”としての色合いが強かったと言えます。それに対して『セカンドライフ・アグリ』では、今までの人生経験・知見を活かして、“経営者”としてのビジョンをもって農業に取り組むべきだと考えています。
農業は、多くを伝統と慣習、経験と勘に従って来ましたが、セカンドライフ・アグリでは、自分らしい経営理念を持ち、自分らしい新しいやり方にトライする、つまり“自己実現”を目指すのです。
【経営視点での主な取り組み:3つのステップ】
①経営理念やビジョンを明らかにして、持続性のある価値基準を持つ。
②経営の安定と栽培の歓びを両立させるための経営戦略をたてる。
③無理のない事業計画・収益計画をたてて、持続的成長のPDCAを回す。
①経営理念・経営ビジョンを、明らかにしよう。
『セカンドライフ・アグリ』において、経営理念やビジョンを持つことは、最も重要なポイントの一つです。セカンドライフという長い期間、天候や相場の影響の大きい農業をやっていく中で、目的やモチベーションが揺らぎそうになるでしょう。収益や経営拡大が目的化したりすると、農業の本質的な価値やセカンドライフの充実という目的が見失われかねません。私は、下記のように経営理念を設定しました。この理念は、80歳になろうと、90歳になろうと、大切にしていこうと考えています。
②経営戦略:例えば「品目のマルチ化」を考えてみる。
日本の農業経営の約5割は、水田作の単一経営ですが、面積当たりの土地生産性が低く、所得を確保するにはかなりの規模が必要です。北海道以外では規模の拡大は難しく、野菜などの畑作を組み合わせるなど、セカンドライフ・アグリにおいても複合経営への取組が重要となります。
品目をマルチ化することは、収益性を安定させるだけでなく、様々な品目作りに挑戦するという楽しさがあります。「食べたいものを作ること」と「儲かる作物を作ること」を両立させることを目指すのがいいと思います。
収益性は、品目によって大きな差があります。単位面積当たりの所得が高い品目は“ししとう”や“なす”ですが、それを栽培すればよいかというと、一概にそうとは言えません。面積当たりの労働時間、つまり手間のかかり方も大きく違うからです。
“収益性が高くても手間がかかる品目”を多く栽培すると、家族の労働では賄いきれなくなるリスクがあります。品目の選び方を間違えると、セカンドライフを充実させるどころか、過重労働に苦しみかねません。
また、品目によって作付けと収穫の時期が異なります。上手く品目を組み合わせれば、畑を遊ばせることなく活用できるということです。そのための指標として、栽培期間によって4つの群に分類しました。
●【A-1群:春まき夏どり】 【A-2群:春まき秋どり】
●【B-1群:秋まき冬どり】 【B-2群:秋まき夏どり】
さらに、この分類に従って面積当りの所得と時給に関して品目を分類したのが、下の2つのグラフです。
このように作業時期ごとに分類することで、品目の組み合わせによる年間の収益と労働負荷の関係が見える化できます。これらの図表をもとに、セカンドライフを豊かにできる収益と適正な作業量、および栽培の楽しさと食べる歓びのバランスを考えた作付けの品目と年間スケジュール、すなわち“栽培計画”を立ててはどうでしょうか。
③栽培計画:品目も収益も、無理せずにゆっくりと増やそう。
実際に栽培計画を立てる時、もうひとつ考慮しておかなければいけない要素があります。それは、”連作障害”です。連作障害とは、同じ土地で同じ作物を繰り返し作り続けることで起きる生育不良のことで、土壌の養分バランスが崩れたり特定の病害虫が定着したりして起きます。連作障害には、発生しやすい野菜と発生しにくい野菜があり、連作障害を避けるためには品目ごとに栽培間隔をあけるべき期間「輪作年限」が整理されています。
栽培計画は、単年の栽培品目だけではなく、“複数年を見越して”立てていく必要があります。(例えば、ナスを栽培した場所は6~7年間はナス科の栽培を避ける。期間の長さに、ちょっと驚きますよね。)そのためには、年度の収益性と労働負荷のバランスおよび作りやすさと美味しさの彩に加え、耕作面積をいくつかに分けて輪作年限を考慮した栽培品目のローテーションを計画することが必要なのです。
以上のように、「品目のマルチ化」を図りながら栽培計画を立てる際は、複数年にわたる視野と複数の視点が必要です。セカンドライフ・アグリでの栽培計画のケアポイントを次のように整理しました。複数年で無理せず、楽しみながら品目を増やしていく計画性が、見えない就農ハードルを越えていくのに有効ではないかと考えています。
以上、Vo.5-3『こうすれば越えられる、就農ハードル!③「経営視点」』
*次回は、④「生販一貫」をお伝えします。
また、今までの記事もマガジンにて公開しています。
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