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就農には、見えないハードルがある。   1「初期投資」

なぜ若手は、農業に就かなくなったのでしょうか? 
 以前お伝えしたように、農業従事者は「ここ30年で半減」というように大きく減少しています。特に、国および農水省が40歳代以下の若手の新規就農を支援しても、残念ながら目標に遠くおよばない状況です。40代以下の若い層の新規就農者は60歳以上の半分にも満たないのは、いったいなぜなのでしょうか。

年齢別の新規就農者


 若い層から見た、他の職業選択との格差、経営の難しさ、さらには商慣習など、問題点を“就農の見えないハードル”として具体化、整理していきたいと思います。

農業を始めるには、驚くほどの投資が必要。
 新しく農業を始めるためには、農地や農業機械のための”初期投資”が必要です。平均的なケースでどれだけの投資額が必要になるのでしょうか?
 全国新規就農相談センターの調査データによると、平均的な経営面積は118.8a(アール)であり、この数字をもとに試算してみました。 農業を始める際、農地を購入した場合は初期投資額が大きくなる上、土地は減価償却できないので農地を購入した場合の多くは経営が成り立ちません。そのため今回は、借地として計算(正しくは運転資金に仕分ける)しましたが、平均的な規模で新規就農するためには、通常約588万円もの初期投資が必要になります。
 実際に、北海道を除く都府県の新規就農者の94.7%は、借地によって農地を確保しています。

初期投資1

 上記の平均的な就農者の”初期費用588万円”という試算は、農業機械や倉庫なども中古品やレンタルによってまかなった場合であり、新品を購入した場合はさらに初期投資は膨らむことになります。身一つで雇用してもらえるサラリーマンとくらべで、大きな投資リスクを抱える職業選択と言わざるを得ません。

多くの人が、「借金」からのスタートに。
 では、新規就農した方々は、どの程度の自己資金を持って臨んだのでしょうか?
 同調査データによると、新規就農者の自己資金の平均値は232万円です。必要な初期投資額と新規参入時の自己資金との関係をみると、50歳代以外、ほとんどの年代で200万円~300万円の資金が不足。その就農時の資金不足に対して42.6%の方が資金の借り入れを行っているとのこと。つまり、多くの人が「借金してのスタート」となっているのです。
 一方、50歳代の自己資金額が、初期費用額を超えていることに注目してください。私が、『セカンドライフ・アグリ』を提唱する理由のひとつです。

初期投資2

借金を抱えると、「借金を返すことが目的化」しやすいことに注意!
 資金の調達先つまり”借金する相手”は、両親や親類であるケースが多いのですが、金融機関ほど取り立てが厳しくなくても、一番の問題は「借金」が精神的なプレッシャーとして就農者にのしかかりやすいことです。借金をすると、「返済できなかったらどうしよう」といったマイナス思考や「返済が遅れたら相手に申し訳ない」といった罪悪感が生まれます。特に、まじめな性格だったり気配りに長けた人ほど、その想いは強くなることでしょう。
 自然を相手にする”悠々自適で健康的な職業”として農業を選んだはずが、「早く借金を返したい」という想いがプレッシャーのせいで、自然を楽しむどころか”お天道様次第で収益が不安な職業”になりかねません。新規就農しても「思ったほど儲からない」ことを理由に数年で辞めてしまう人が、少なからずいることに注意する必要があります。

収入が得られるまでの期間が、非常に長いこともハードルに。
 さらに一般的に農業は、種を蒔いてから収穫、そして販売して現金収入が得られるまでの期間が、非常に長くかかります。資金繰りに有利な”日銭商売”とは逆に、いわゆる”資本回転率”が低い、つまり「投資やかけた経費が収益として回収できるのがとても遅い」のです。そのため、経営が軌道に乗るまでの生活費(運転資金)も用意しておく必要があります。「儲からなくても、取れた米や野菜を食べればいい」と楽観的に考えても、その米や野菜が収穫できるまでの期間がとても長いのです。蓄えの少ない若手にとって、新規就農は資金面でとてもハードルが高いと言わざるをえません。

見えないハードルを恐れるよりも、見える化して越え方を考えましょう。
 
今回から8回にわたって新しく農業に就く難しさを「就農の見えないハードル」と名付け、数字的根拠などを交えて”見える化”しようと思います。そして、具体的な解決策や改善につながる方策を探る一助になればと願っています。
 様々な見えない就農ハードルに対して、50代の元サラリーマンなら、そのハードルをどのように越えられるのか? すなわち『セカンドライフ・アグリ』ならではのメリットをお伝えしていく予定です。幸せなセカンドライフを農業で創っていきたいとお考えの方、ご一緒にハードルを楽しく越える術を考えていきましょう!

以上、Vo.3-1『就農には見えないハードルがある。1「初期投資」』
*次回は、ハードル2「所得格差」をお伝えします。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,

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