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就農には、見えないハードルがある。     2「所得格差」

「農業は儲からない」という言葉に、ショックを受けて。
  40数年前のことになりますが小学生の頃、私は農業を営む父から農作業を手伝いながら、「農業はたいへんな割に、儲からないなぁ」とつぶやく声を何度も聞きました。さらに、なんと小学校の社会の教科書にも「農業は低所得が問題となって跡継ぎが不足しています」との記載があり、子供心にショックを受けて「できれば家業の農業を継ぎたくない」と固く誓ったことを昨日のように覚えています。そんな想い出やイメージは、今も正しいのでしょうか?
 国税庁の業種別平均給与の調査によると、全体平均432万円に比べて、農林水産業は326万円と大きく下回っており、業種の中でも最下位から2番目と低いのが現状です。

所得格差1

農業収入だけでは、やっていけないという事実。
 また、農水省の統計から1農業経営体当り(農業を営む1世帯)の平均収入を見てみましょう。全国での平均的なモデルでは、総所得は年間約526万円です。ところが、これは農業外の収入約140万円と年金等の収入約190万を合わせての額であり、農業からの収入は約190万円にとどまっています。つまり、農業の収入だけでは、他の業種に比べて非常に低い所得レベルになってしまうのが現状なのです。

所得格差2

農業とサラリーマンを、収入で比べてみると・・。
 参考までにサラリーマンの年齢別平均給与を見てみましょう。20歳代の前半で、早くも農業から得られる平均所得を超え、男性の場合は50歳代前半まで給与は上昇し続けます。終身雇用制度を考慮すると、非常に安心感をもって人生設計が描けるのではないでしょうか。

所得格差3

 農業に就いた場合、年齢には関係なくサラリーマンに見合う所得の上昇を得るには、限られた面積を耕作しているだけでは不可能です。耕作面積を3倍以上に拡大していくか、他の仕事と兼業するしかないでしょう。その他の仕事と兼業する場合も、30代以降には農業の収入以上の稼ぎが必要となります。それでは、もはや農業はメインの職業ではなく、副収入源と言った方が適当でなのです。

農業だけで、若い世代の家計は成り立つのでしょうか?

 さらに、総務省による年齢別の平均消費支出の調査を見てみましょう。下記のグラフから分かるように、30歳以上の全ての年代で平均的な農業の所得だけでは家計支出を賄えないのです。20歳代から50歳代前半まで上昇を続ける消費支出のシルエットは、サラリーマンの年齢別平均給与の上のグラフと非常によく似ていて、家計収支のバランスが取りやすいことが分かります。若い層にとって、これから家族をつくって家計を支えていこうと考えた時、所得格差を考えると農家よりもサラリーマンの方がいいと思っても仕方ないでしょう。

所得格差4

 では、ある程度の蓄えができ、子育てを卒業した”50代サラリーマン””ならどうでしょう。家計を支えることから、幸せなセカンドライフをつくることへ、農業の価値観を変えられる世代にこそ、大きな就農チャンスがあると私は考えています。

見えないハードルを恐れるよりも、見える化して越え方を考えましょう。
 前回から農業に就く難しさを「就農の見えないハードル」と名付け、数字的根拠を交えてお伝えしています。ややネガティブに映ると思いますが、具体的な解決策や改善につながる方策を探る一助になればと願っています。
 「見えないハードル」をお伝えした後には、50代の元サラリーマンなら、そのハードルをどのように越えられるのか? 『セカンドライフ・アグリ』ならではのメリットをお伝えしていく予定です。

 以上、Vo.3-2『就農には見えないハードルがある。2「所得格差」』
*次回は、ハードル3「価格変動」をお伝えします。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,

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