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こうすれば越えられる、就農ハードル!クリア④「生販一貫」

生産だけでなく、消費者への直接販売も考えよう。  
 セカンドライフ・アグリでは、生産だけでなく、ぜひ販売についても創造的な挑戦を試みてはどうかと思います。これまでの農業の一般的な流通経路では、農家は農協任せや卸売市場頼みになりがちで、消費者の顔が見えにくいという問題がありました。それでは、美味しい食の提供者としての実感や歓びを十分に得ることができません。また、農家には価格決定権がなく、多くの中間業者が介するため、品質とコストと納期(QCD)を管理しても十分な収益が得られずに労働意欲が湧かないという問題も起こっています。
 これらの問題を解決するひとつのトライが、消費者への「直接販売」です。農家が直売所やネット通販を通じて消費者に直接販売することで、価格決定権とともに“農業経営の実感と歓び”を手に入れることができるのです。

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生産物を高く、消費者には安く売れて、利益が大きくなる直接販売。
 農協や卸売市場を通した従来の経路と直接販売とで、どれくらい販売価格や農業従事者の収益に差がでるのかを比較したのが下記です。

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 従来の流通経路で消費者への販売価格156円のキャベツが、直売だと120円に。流通経費が合計88円かかっていたのが18円に。農業従事者の収益は、実に29円(価格比18.5%)から64円(価格比53.3%)にアップします。また、従来では、多くの中間業者が介在して時間がかかるため、鮮度が落ちる場合がありましたが、直売所では消費者から「鮮度が高く、美味しいものを安く買える」と好評を得ています。流通経路をシンプルにすると、消費者と農業従事者の双方にメリット、つまりwin-winの関係が生まれるのです。

農家が直接販売できるチャンスが、広がっています!
①農協による直販支援

 農協の中にも、人口減少・少子高齢化、耕作放棄地の増加等をにらんで自己改革に取り組む組合が出てきました。その例として、あるJA(JA兵庫南)の活動を見てみましょう。事業圏内に8か所の直売所を設け、中でも“にじいろファーミン”という直売所は、産直レストランや野菜レシピの料理教室などを備えた農業振興の総合施設となっています。

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 この直売所に出荷するには、JA兵庫南の組合員か、SHOP運営協議会員に登録すればよく、新規就農者にも栽培講習等の指導をするなど、広く門戸を開いています。商品は、野菜だけでなく、米パン、ジャム、ケーキなど農産物の加工品でもよく、出荷量も価格も自己責任で自由に設定できます。売れ残りは、出荷者が引き取る責任がありますが、価格の13%をJA兵庫南に納めればいいという分かりやすいシステムです。
 出荷者からは、「栽培時にも、いくらで売れるかワクワクする。いいものを作る張り合いになる」という声も聞かれ、非常に好評とのことです。

②スーパーによる直売コーナーの開設 
 全国レベルでの大量仕入・大量販売を強みとしてきたスーパーですが、地元の農産者のために直売コーナーを設けて“地産地消”を支援する動きが出てきました。日本最大の流通企業であるイオングループの例を見てみましょう。
 全国に多店舗展開するスーパーは画一的な店内イメージですが、直売コーナーについては、意外にも各店毎に多種多様です。農家に出荷量も価格設定も任されていることや、販売価格の10%を店舗側に納めるシステムは共通ですが、直売コーナーの場所やレイアウトは店ごとに違っています。そして、直売コーナーの売上高には店ごとに、かなり差があるとのことです。

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 一方、直売コーナーに出品している農家の方にお聞きしたのですが、出荷量も価格設定も任される自由度があるのはうれしいのですが、それとは裏腹に問題点もあるそうです。農家同士は互いにその日の出品量は分からないため棚に並ぶ農産物の量の変動が大きいことや、旬の時期には農家の生産する品目が重なって過剰な値下げ合戦が起こったりすること。また、参入する農家が増えて、品質の悪い作物を出品する農家がいると直売コーナー全体のイメージが低下するといった問題も起こるそうです。農家が直接販売へのモラルを共有する必要があるのかもしれません。

③ネット通販の伸び
 ネット通販は、農家と消費者が直接つながり、農産物を販売できる新しいメディアです。ここ10年、ネット通販市場の伸びは著しく、経済産業省によると2018年には17兆9,845億円となり、全物販に占めるEC化率は6.22%になりました。

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 ネット通販は一見、現物を直接見ないで購入することや配送コストがかかることなどから、農産物の販売、特に野菜には不向きではないかと思われがちですが、ここ数年、ネット通販の利用が大きく伸びています。個人での出店が簡単な『楽天モール』や、配送コストの安い『メルカリ』、農産物の専門サイトの『食べチョク』や『ポケットマルシェ』など、直接販売に使いやすいネット・サービスも盛んになり、ふるさと納税の経験からも生鮮食料をネットで取り寄せることに対する消費者の心理的障壁もかなり下がったと言える状況です。
 さらに2020年からのコロナ禍の影響で、外食産業への納入量が減って困っている農家と安全安心な農産物を家に届けて欲しいという消費者の想いをつなぐ形で、『食べチョク』など農産物専門サイトの利用が急伸しています。

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農家も、消費者とつながる時代へ。
 また、『自称世界一小さい専業農家』として脱サラ就農による家族経営を自分スタイルで貫き成功させている”風来”西田栄喜さんは、SNSの活用と自社販売サイトの運営を推進しています。SNSの活用で農家の志や活動内容が消費者に伝えることができ、自社販売サイトを運営することで消費者の声や反応がビビッドに伝わる。いわば心の通う関係づくりができることを一番のメリットに挙げています。
 セカンドライフ・アグリでの就農を目指す方には、今後、ネット通販の活用に大きなチャンスがあると期待しています。

以上、Vo.5-4『こうすれば越えられる、就農ハードル!④「生販一貫」』
*次回は、⑤「創意工夫」をお伝えします。
 また、今までの記事もマガジンにて公開しています。
#セカンドライフ , #農業 , #人生100年時代 , #幸福 ,

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