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あかんたれにいちゃん2

前回は衝撃的な始まり驚かせてしまったようですいません。
今回はこの物語に登場するメインキャストをご紹介する。

あかんたれにいちゃんは、私より2歳年上。子どもの頃からちょっと変わっていると思っていた。「まわりの空気が読めない」「お金の管理ができない」
「先を見通すことができない」「人の気持を慮ることができない」など。
一方、「発想力に長けている」「すぐ行動する」などの長所と言われる点も
あった。数年前にわかったが、発達障害の典型的パターンである。それがわかるまでは、兄の考えや言動・行動に対して理解に苦しむ場面が多かった。

父は、電気メーカーの技術屋。父(祖父)が戦死したため、母(祖母)と
弟2人の父親代わりとしてアルバイトで家族を支えていた。そのため、我々にとって何かと厳しい父親であったが、12年前に心不全による脳梗塞で、左半身付随と
言語障害になった。昔の厳しい父親の面影は全く見られなくなり、穏やかなおじいさんになった。会話は理解しているようだが、どこまで深く理解しているのかはわからない状態である。

母は、父(祖父)が大手製薬メーカーの役員であったため、大学生の時にはお嬢様だったようだ。幼少期は貧乏で苦労したようだが、社会に出ることもなく父とお見合い結婚をして、専業主婦として我々を育ててくれた。サザエさんのような人だが、その楽観的な性格と世間知らずがこれから起こる問題の要因にもなったと私は思っている。

弟は私の2つ下。兄弟では一番優秀だった。幼い頃は私のプロレスの相手をやらされていつも泣いていたが、今じゃ大手通信会社の管理職である。気が優しくて自慢の弟であるが、父が倒れる前までは正月ぐらいしか会うことがなく、会話をすることも少なかった。

ごく平凡な家族であったが、子供達3人を大学まで通わせてくれて、家まで建てた父には感謝しかない。今、自分が父親になってその大変さがよくわかる。
裕福とまではいかないが、父と母のおかげで幸せな学生生活を送ることができたことありがたく思っている。

さて、問題の兄の話に戻ろう。なにかを初めてはすぐやめるタイプで、中学の時に入部した野球部は一週間で退部した。にもかかわらず、結婚式で中学時代は野球部だったという経歴を紹介しており家族一同顔を見合わせて苦笑いした。

大学を卒業し、大手POSシステム会社に入社し数年勤務していたが退職。
その後、転職を繰り返していた。いつも人間関係がうまくいかず、なにかあると
我慢することなくすぐに辞めていた。その頃、兄と話すことはほとんどなく
どんな友人がいるのか、どんな生活をしているのかも知らなかった。

私が就職して3年経過した頃、あきれる事件が起こった。
私に届いたクレジットカードの明細に、記憶にない履歴があった。
居酒屋で数万円を使った履歴。数万円キャッシングした履歴。
盗難されたのだと思った。

すぐにクレジットカード会社に連絡すると、キャッシングは暗証番号が
わからないと引き出せないため、犯人は身近な人物であることが多いとの
ことだった。警察に連絡すれば監視カメラの映像を確認することもできるとのことだったので依頼するつもりだったが、数日待ってもらうことにした。
「身内???。そんなこととあるかなぁ・・・。ま、まさか・・・」

私は、兄に電話をした。「まさか、俺のクレジットカードを使ってないよな?」
兄は悪びれた様子もなく「ごめん、ごめん。使ったよ。連絡しようと思っていたんだけど・・・」と答えた。
「えっ?私宛の信書を勝手に開けたってこと?それで、勝手に使ってたってこと?」
「ごめん、ごめん」
「キャッシングはどうしたんだよ?」
「誕生日が暗証番号だと思って入力したら正解だったから・・・」
「お前、それ犯罪だぞ!!警察に連絡するところだったんだぞ。」
「ごめん、すぐ返すつもりだったんだよ」
「・・・・・・・・・」私は絶句した。ありえないと思った。

翌日、クレジットカード会社に電話をして事情を説明してお詫びした。
クレジットカード会社の方は、時々ある話だと言って笑っていたのが救いだった。その時、悪びれた様子がない兄は何かがおかしいと気づいたが、まさか家族を巻き込む大問題を起こすということまではその当時は想像することができなかった。

つづく


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