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読書レポ|福祉の思想 第2回

1968年出版の本だが、2024年に読んでもまったく色あせない普遍的な考えをたくさん知ることができた。

社会福祉というのは、社会の福祉の単なる総量をいうのではなくて、そのなかでの個人の福祉が保証される姿を指すのである」

『福祉の思想」糸賀一雄

どれだけ経済が発展して、科学が進歩しても、一定の割合でかならず障害児は誕生する。つまり障害児が存在があってはじめて「わたしたちの世界」であり「わたしたちの社会」のすべてなのである。
社会が豊かであるということは、その社会を構成するすべての人に福祉(しあわせ)がいきわたる状態であると、今から50年以上前に著者は述べている。

現代でいえば、高齢者や認知症のある人もそこに含まれる。
彼らが資本主義社会において生産活動に役立つ人か、という視点でみれば、大多数はそうではないかもしれない。
要介護状態も軽度であれば”自立支援”といって、社会参加を積極的に促すこともできる。しかし、ほぼ寝たきりに近い状態の人にとって”自立支援”や"リハビリ”に何の意味があるのだろう。彼らに自立支援を強いることは、「自立できない人、機能回復が見込めない人は、この社会では意味がない」というメッセージにもなりかねない。

この社会を資本主義社会と協議に捉えるとき、生産活動に参加する「意味のある人」と生産活動に参加できない「意味のない人」という分類がおきる。
しかし、前述したように資本主義社会にける「意味のない人」が必ず存在するのが”人間社会”である。
福祉が目指すのは豊かな人間社会である。

私たちは重度障がいのある人や超高齢期の人や、その人を支える親たちを知ることで、個性ある「この人」の生きる姿の中に共感や共鳴を感じ、そこから人間としての豊かな感情や命の尊さを学ばせてもらっている

「介護ビジネス」という言葉が一般的になり、経済の中で介護が語られるようになったいま、この本は社会福祉に関わる私たちに、踏み外してはならない道に光を照らしてくれるだろう。

めでたしめでたし

立崎直樹

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