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退職者ゼロを目指すと組織は停滞する

マネジャーにとって社員の退職はとてもつらい出来ごとです。

社員から「ちょっと時間いいですか?」と声をかけられると、いつもビクッとします。とはいえ、退職以外の話の方が圧倒的に多いのですが。


退職の連鎖

僕が老人ホームの管理者になって2年目のころ、退職のピークが来ました。退職理由はそれぞれだったのですが、ひとことで言うと僕のマネジメント力の未熟さが原因だったと思います。そのあたりのことは、また別の記事で書こうと思います。

とにかく、いちばんひどい時で、退職率は年間15%に達してしまいました。

退職の連鎖は、マネジャーとしての能力のなさを突き付けられているようで、とても苦しい経験でした。

その後、心理学とマネジメントを必死に学び、実践することで何とか退職の洪水を止めることができました。(そのときからの学びを共有するのがこのnoteなので、よろしければフォローお願いします!)


当たり前のことを当たり前にやる

一度、退職の洪水を経験すると”退職恐怖症”になります。退職を決断する前に、思い悩んでいそうなスタッフに声をかけたり、退職を考えているスタッフを必死に説得したり。

楽しくやりがいがあり、働きやすい職場を作るのはマネジャーの役割です。ありきたりですが、常日頃からスタッフの様子を気にかけて、コミュニケーションとることを疎かにしないようにしています。


退職ゼロを目標にしない

働きやすくて、続けたくなる職場を作ることを心掛ける一方、退職者ゼロを目標にはしていません。

退職者ゼロは理想かも知れませんが、中長期的に考えれば達成確率0%です。どれだけいい職場を作っても、家族の事情で引っ越したり、病気によって退職せざるを得なくなったりすることは止められません。したがって目標達成は不可能です。

しかし、退職者ゼロを目標にしない理由は達成可能性がないからだけではありません。

働きやすく、スタッフが自己成長を感じながら、しっかり成果を出すことが組織の大目標です。退職者を少なく抑えることは、大目標の達成のための必要条件ですが、十分条件ではありません。あくまで目的は組織としての成果を出すことであり、退職者を出さないこではないのです。

退職者を出さないために、組織の目標をあきらめるのは本末転倒です。目標と目的が入れ替わってしまっています。

退職させないことを中心にすると、顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)のバランスが崩れる場合があります。マネジャーは両者のバランスを考えながら、チームをマネジメントしていきます。


成長促進型マネジメントと仲良しグループ型マネジメント

何かというと「辞める」と口にするスタッフにばかり手をかけて、黙々と努力しているスタッフには目をかけないマネジャーがたくさんいます。もちろん「辞める」というスタッフに辞めてほしくないので仕方ない側面もあります。しかし、人は心理的に自分が目をかけたスタッフを高く評価し、黙々と頑張っているスタッフには並みの評価を与えがちです。

成長する組織と停滞する組織では、両者のバランスに差があります。

成長する組織は仕事で貢献しているスタッフに厚遇し、停滞する組織では「辞めたい」というスタッフを厚遇します。前者を成長促進型マネジメントとするなら、後者は仲良しグループ型マネジメントと僕は読んでいます。


マネジャーはバランス感覚を磨け

マネジャーの役割は簡単ではありません。CSとESさらにはスタッフ間の見えないバランスを常に調整しながら、どこに力点を置くのか判断していきます。時には退職者が出ても、チームの成長のためには止むなしと判断して進む決断をします。

全員の同意を得られないこともあるし、批判されることもあるでしょう。それでも決断するのがのマネジャーの役割です。

バランス感覚を養うためには、スタッフの様子をよく見てコミュニケーションをとる、さらに仕事の成果を客観的に評価することを、日常的にやり続けることが大切です。簡単な裏技などなく、地味だけど当たり前のことを当たり前にやり続けることが、マネジャーとしての成長になります。


立崎直樹



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